“地ずりの晴眼”

2016年10月26日 10:11

248 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/10/26(水) 02:31:41.89 ID:kweATJqC
東国で1人の浪人が“地ずりの晴眼”という太刀を覚え、「これに勝てる者はおるまい」
と思い、伊藤一刀斎に会って、

「この地ずりの晴眼の止め様でもありましたら、御相伝くだされ」と、望んだ。一刀斎は
「なるほど、伝えよう」と請け合いながらも、それを伝えずにまた他国へ行こうとした。

浪人は心に、「一刀斎でもこの太刀を止めることができないからだ」と思って、彼の
途次に出向かい、「日頃望んだ地ずりの晴眼の止め様を御伝授されないとは、遺恨
である。只今、御相伝くだされるべし!」と、言うままに、

刀を抜いてかの地ずりの晴眼で、するすると一刀斎に仕掛けた。その時、一刀斎が
抜き打ちに切ったと見えると、かの浪人は2つになって倒れ伏した。

世間はこれを、「地ずりの晴眼の止め様を伝授したのに、そのまま息絶えてしまって
残念である。これを“真金江の土産(冥土の土産)”とでも言うべきだろう」と評し合った。

一刀斎一代の行跡には、このような事なども多かったという。

――『撃剣叢談』




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