944 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2019/05/26(日) 14:18:28.07 ID:mopXN2yD
同集(古筆集)に、足守候(足守木下家)の蔵物として、織田信長が木下藤吉郎の妻に賜う書という
ものが掲載されている
『仰せの如く、今度こちらへ初めて越し、見参に入り祝着に候。殊にみやげ色々、美しさ中々目にも余り、
筆にも尽くし難く候。祝儀ばかりに、この方よりも何やらんと思い候へば、その方より見事なるもの
持たせ候あいだ、べちにこころざし無くのまま、まずまずこの度はとどめ参らせ候。重ねて参るの時、
それに従うべし。
なかんずくそれの見目振り、かたちまで、いつぞや参らせ候折節より、十の物、廿程も見上げ候。
藤吉郎、近々不足の旨申すのよし、言語道断、曲事候が、何方を相訪ね候とも、それさまほどのは
又二たび、かのはげねずみ、相求めがたき間、これよりいかにもかみさまなりに重々しく、悋気などに
立ち入り候ては然るべからず。ただし女の役にて候あいだ、申すものの申さぬ中に、もてなし然るべし。
猶文ていにはしいり、拝見請い願うものなり。
まいらせ候かしく
月 日
藤きちろう
おんなども
のぶ(印)』
(訳)
「前から仰られていた通り、今度こちらに初めて来られ、見参されたこと、祝着です。殊に様々なみやげは、
その美しさは目にも余り筆にも尽くせないほどで、こちらとしては祝儀であるのだから、何か与えようと
思っていたのですが、そちらが大変見事なものを持って来られたため、それに釣り合うようなものを思いつかない
まま、とりあえず今回は思い止めました。次に来られた時に、この思いに従った物を下すでしょう。
それにしてもあなたの見目ぶり、姿形まで、以前に参られた頃よりも、十のものが二十に成ったかと思うほど
見違えました。藤吉郎は最近、あなたに対し不足の旨を申しているようですが、言語道断、まさしく曲事です。
今、どこを探したとしても、あなたほどの女性は二度と、あのはげねずみが求めることは出来ないでしょう。
ですので、あなたも今後はいかにも御上様らしく重々しく、悋気などを起こすべきではありません。
ただし女性の役なのですから、物事を語らない中にも、察して対応するべきでしょう。
文末に至りましたが、拝見を請い願います。かしこ。」
(甲子夜話)
有名な織田信長が高台院に宛てた書状
同集(古筆集)に、足守候(足守木下家)の蔵物として、織田信長が木下藤吉郎の妻に賜う書という
ものが掲載されている
『仰せの如く、今度こちらへ初めて越し、見参に入り祝着に候。殊にみやげ色々、美しさ中々目にも余り、
筆にも尽くし難く候。祝儀ばかりに、この方よりも何やらんと思い候へば、その方より見事なるもの
持たせ候あいだ、べちにこころざし無くのまま、まずまずこの度はとどめ参らせ候。重ねて参るの時、
それに従うべし。
なかんずくそれの見目振り、かたちまで、いつぞや参らせ候折節より、十の物、廿程も見上げ候。
藤吉郎、近々不足の旨申すのよし、言語道断、曲事候が、何方を相訪ね候とも、それさまほどのは
又二たび、かのはげねずみ、相求めがたき間、これよりいかにもかみさまなりに重々しく、悋気などに
立ち入り候ては然るべからず。ただし女の役にて候あいだ、申すものの申さぬ中に、もてなし然るべし。
猶文ていにはしいり、拝見請い願うものなり。
まいらせ候かしく
月 日
藤きちろう
おんなども
のぶ(印)』
(訳)
「前から仰られていた通り、今度こちらに初めて来られ、見参されたこと、祝着です。殊に様々なみやげは、
その美しさは目にも余り筆にも尽くせないほどで、こちらとしては祝儀であるのだから、何か与えようと
思っていたのですが、そちらが大変見事なものを持って来られたため、それに釣り合うようなものを思いつかない
まま、とりあえず今回は思い止めました。次に来られた時に、この思いに従った物を下すでしょう。
それにしてもあなたの見目ぶり、姿形まで、以前に参られた頃よりも、十のものが二十に成ったかと思うほど
見違えました。藤吉郎は最近、あなたに対し不足の旨を申しているようですが、言語道断、まさしく曲事です。
今、どこを探したとしても、あなたほどの女性は二度と、あのはげねずみが求めることは出来ないでしょう。
ですので、あなたも今後はいかにも御上様らしく重々しく、悋気などを起こすべきではありません。
ただし女性の役なのですから、物事を語らない中にも、察して対応するべきでしょう。
文末に至りましたが、拝見を請い願います。かしこ。」
(甲子夜話)
有名な織田信長が高台院に宛てた書状
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