水商い

2015年04月06日 18:30

647 名前:1/2[sage] 投稿日:2015/04/05(日) 23:27:43.02 ID:NFMptlLG
慶長2年(1597)12月24日、慶長の役、第一次蔚山城籠城戦において明軍の襲撃があり籠城軍はこれを撃退する。
この時、二ノ丸三ノ丸の堀下に、数しれぬほどの敵の死骸が残されているとの報告を受け、
大河内茂左衛門尉をはじめ、田中小左衛門尉、川村十助、林角右衛門尉、近藤甚右衛門尉の5人が同心して
それを見に行った。

その帰り、二ノ丸の門脇に、小さな桶に盃をとりそろえ、声高に水を売る者があった。
大河内が近づいて「いくらだ?」と問うと、その盃一杯の水を代銀15匁であるという。
大河内は同行した者達に、「この水を飲み給え」と進めるが、皆は「代銀を持っていない」と言う。
これに大河内は
「代銀は私が持っている。何れも飲み給え。」

そう言うので皆喜んで飲んだ。
「各々は先に帰られよ。私は代銀を遣わしてから行く。」

そういって一人跡に残り、自身も一杯飲むと、正しくそれは水であった。
しかし大河内『金は無い。ごまかして行ってしまおう。』そう思い、商人に向かって
「これは何ということをするのか!歴々の武士に尿を飲ませたな!沙汰の限りだ!」

そう言い捨て立ち帰ろうとすると、水商人は大河内の鎧の袖に取り憑いて
「大変大きな金額です!どうか支払って下さい!」と大いに嘆いた。
大河内は商人を説得しようと思い

「私は、今は金を持っていないが、皆々合戦で骨折りをした軍士だからこそ水を与えたのだ。
この籠城において武運が開くのを待てば、私に預け於いた金であっても米であっても、望みに任せ
いかほどにも与えるであろう。
逆にもし落城してしまえば、金銀をどれだけ持っていたとしても意味がないではないか。」
そのように様々に言い聞かせたが、商人は納得せず
「ぜひとも支払っていただきたい!」と言う。

ついに大河内も怒り、「おのれは耳の穴も開かぬうつけだ!よし、金をくれてやろう!」
そう怒鳴って鑓を取ってみせた。
これに商人は以ての外に取り騒ぎ、二ノ丸に向かって一目散に逃げていった。

648 名前:2/2[sage] 投稿日:2015/04/05(日) 23:28:32.91 ID:NFMptlLG
大河内はそうして帰ると、水を飲んだ者達は、御振る舞いかたじけないと、各々一礼を述べた。
しかし田中は、大河内がそんな金を持っていたかと不審に思い、しきりにその事を尋ねると、大河内

「愚かなことを問うものだ。この詰め籠城において、どうして金があって遣わすものか。
理を言ってやったのに聞かないから、鑓でその腹をぶち抜くぞと言ってやった所、足早に
二ノ丸に逃げ入ったよ。」

その場に居た太田一吉、浅野幸長の家臣たちはこれを聞くと、一度に手を打って大笑いし
「我々もあの水商人を見たが、代銀が無いから通り過ぎてしまっていたが、そのようにするとは
でかしたことだ!」そう大笑いした。
この大笑いの声が聞こえ、太田一吉、浅野幸長より「喧嘩をしているのか?」との使いが来たほどだった。

所がその中で、田中小左衛門尉だけは笑わずに、草摺をポンと打って
「さても無念、口惜しき水を飲んでしまったものだ。この水は、私が各々に与えるべき水だったのに、
年齢が半分にも満たない大河内に掠め取られてしまった恥ずかしさよ!」
そう言った所、その顔と言葉が面白いというので、一同またも大爆笑した。

太田、浅野、加藤清正の三大将もこれを聞き、「よくやった!あの水を売っていた奴は堀裏の用に
立つものではない。尤もなことである。」と笑った。

その後、清正、幸長は大河内の顔を見るたびに、「いかに大河内殿、この頃は水の買い取りはしていないのか?」
と聞いてきた。すると大河内は「その事ですが、水商人に出会ったら、堀裏を固く守るのは第一としても、
先に水の買い取りに取り組みたいと思っているのですが、あれから商人に会わないのですよ。」と答えた。
両大将はこれに「さても水の買い取りをさせたいものだ」と言うのが、日々の笑い事となったそうである。
(朝鮮記)



651 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/04/06(月) 08:34:13.52 ID:VHUSI5Id
15匁って今の価値で言うと1万円ぐらい?

652 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/04/06(月) 10:14:24.50 ID:NOAsiFm6
江戸時代中期ぐらいで今の17000円位の価値のようだが
恐ろしい程のぼっただな。

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士卒の身命、大将のお命

2015年04月05日 14:15

639 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/04/04(土) 19:18:27.42 ID:+uCFsa96
朝鮮の役における第一次蔚山城籠城戦のさい、明軍に囲まれた蔚山城内は食料、飲料水の補給が断たれ、
既に5日と成った。
上下、飢渇に疲れ果て、軍勢は憔悴しきっていた。

ここに不義の佞人があって、蔚山城の主将である加藤清正、浅野幸長、太田一吉の三大将に密かに申し上げたい
事があるというので、太田一吉が加藤、浅野の両将に使いを立てて会合しこれを聞いた。

彼の者ここで
「傍の人を退けていただきたい。」と申し上げる。

そこで太田一吉は、田中小左衛門尉、九津見兵蔵、大河内茂左衛門尉に向かって下がるように命じた。
田中、九津見は畏まって座を立ち役所の方へといったが、大河内は
『どうもこの者、怪しい思慮を巡らしているようにみえる」』と思い、言葉を怒らせて太田に
「このように夥しい漢人・江南人に囲まれ、たった今でも討ち死にし冥土までお供申すべきそれがしに、
一体何をお隠しなさるのですか!」
そう荒らかに申し上げると、彼の者も是非無く、そのまま三大将に向かって申し上げた

「この城内は既に米も水もなく、皆近いうちに餓死してしまうでしょう。しかしここにおられる
三大将のお命は、士卒に比すべき物ではありません。
上のお為、御身の為、すみやかに城内より脱出され、後詰の兵を催して下さい。
幸いに御馬三匹ありますればこれを召して川を渡り、向かいの地に到着するのは非常に簡単な事です!」

この言葉に三大将は目を見合わせていたが、彼らが何の返事もしない内に、大河内が怒鳴った

「それ!軍将が飢渇を軍士と共にするのは、古よりの道である。しかもこの籠城と申すは、
遠く日本の地を離れ大明の攻めを受け、命を惜しいと思し召すなどあっていいことではない!
そのような事は、日本にあってもなお恥とすべきこと。いわんや他国においては!
たとえ命が助かったとしても、何の面目があって人にまみえることが出来るだろうか。

例えば、士卒の身命に大将は変わることは出来るが、大将のお命に士卒を変えることは出来ない!
このような不義なる申状は、大将のお耳に入れるべきものではない。孺子よ推参である。立ち退け!」

そう荒々しく言い放つと。三大将は一同に「大河内の口上、至極もっともである」と同意したため、
不義の佞人は手を失い、顔を真っ赤にして退出した。

大河内はそのまま座を立つと、「馬があるからあのような佞人が出てきたのだ」と、大声で舎人を呼んで
「大将たちの御馬を引き出せ!」と命じ、腰の刀を引き抜くと一匹づつその首をはねた。

(朝鮮記)



640 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/04/04(土) 19:42:30.20 ID:YZefENOO
籠城5日で水も食料もないってスゲーな

641 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/04/05(日) 13:37:08.14 ID:O+VQJwmX
城が出来てすぐ、兵糧入れる間もなく始まったからね