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星野宗右衛門について

2022年02月08日 16:31

318 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/02/07(月) 18:24:39.04 ID:v+FyJ//b
星野宗右衛門について

http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-5590.html
栗山大膳と『旅枕』


10年以上前に出たこの逸話で栗山大膳の親友として紹介されている星野宗右衛門
黒田騒動箱崎文庫」や歌舞伎では栗山大膳側の勇士ということで大活躍をしているが、活躍の一つに
親友の有川駿河という軍学者が、倉橋重太夫の陰謀で三百両の借金をさせられ、幕府に禁じられている大船の図面を描いてしまった。
星野宗右衛門が河内屋にかけあって三百両を工面したことで、少なくとも有川は武士の対面を保つことができた。
しかし有川は図面を描き黒田家を危機に陥れたことを詫びて切腹、といった話がある。
黒田騒動箱崎文庫」では上記の逸話の通り、栗山大膳がかつて利休が所持していた「旅枕」を用いて星野宗右衛門の三百両を帳消しにした、としている。
なお「旅枕」を所有している和泉の久保惣記念美術館の旅枕に関する記事には栗山大膳についての記載はないので、この逸話の真偽は不明。
ただ、星野宗右衛門のほかの活躍を見ると、
「星野の大食鍋島家を驚かす事」では星野宗右衛門が鍋島家に舐められないように、
鍋島家が用意した鯛の浜焼きを城下の魚屋全てからかき集めた分だけ食い尽くし
七合入りの盃で酒を七杯呑み、飯を15碗食い、鍋島家の者どもは大いに驚き、忠之から拝領物を賜り、「鯛喰いの宗右衛門」というあだ名がついた
ことになっている。

319 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/02/07(月) 18:30:08.99 ID:v+FyJ//b
実はこの話、
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-13373.html
毛谷主水について


で書いたように「博多細伝実録」に出てくる、元禄の頃に鍋島家で大食を披露した星野助右衛門の話そのままである。
どうやら黒田騒動に栗山大膳側の善玉の豪傑を登場させようと思った「箱崎文庫」系統の作者が
博多細伝実録」の大食漢・星野助右衛門の話が印象的という事で時代を移して栗山大膳の同志にさせたらしい。
というわけで、
関ヶ原で西軍の物見をしてたくさんの饅頭を食べた毛屋主水武久と
元禄に鍋島家に使いに行った時に魚の焼物をたらふく食った星野助右衛門
百年ほど時代の違う二人の大食いが、間の寛永年間に
方や女に籠絡され主家を滅亡させようとした悪玉・毛谷主水
方や主家を守ろうと剣と知恵を振るう善玉・星野宗右衛門
として共演することになったという奇妙な話。

ついでに1936年に公開された映画「栗山大膳」には毛谷と星野の両方とも出てくるが、
毛谷主水の方は、城井一族の復讐を狙うお秀の方に籠絡され、栗山大膳の命を狙う一番の敵役となっている。
(紅陽法師も城井の若様として少し語られている)
星野宗右衛門の方はというと、図面を描いた有川を叱責する以外はたいして出番がない。


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栗山大膳と『旅枕』

2011年07月13日 23:07

573 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/07/12(火) 22:58:42.09 ID:wDXLDvxV
栗山大膳利章には、同じく黒田家に仕える星野宗右衛門という友がいたが、この宗右衛門、親族の借金を
肩代わりして、博多商人・河内屋に三百両の負債を抱える身となった。
大膳は、友のために借金の弁済を試みたが、誇り高い宗右衛門は、申し出を受けようとしなかった。

ある日、大膳は宗右衛門の屋敷を訪れた。客間に通された大膳は、床の間に掛けられた軸に目を止めた。
「なかなか良い物をお持ちではないか。」
「大したものではないが、御意にかなえばお持ち帰りあれ。わしが持っていても意味は無い。」
「…では、遠慮なくいただこう。」

翌日、宗右衛門のもとに大膳から絹の包みが届いた。包みの中には陶器の花入と、書状が入っていた。

“先日の掛け軸の返礼に、この花入れを進呈いたす。もしお好みに合わねば、何人なりともお譲りあれ。
お出入りの河内屋など数寄に執心との事、しかも河内屋は貴殿ご所望の色紙も持ち合せと聞き及ぶ。
色紙と花入を交換するも良し、貴殿のご随意になされたし。”

「はて、俺は色紙など欲しくは…!色紙とは借用証文の事か。掛け軸を所望したのも、わしを救わんがため、
この花入と交換するために、わざと言った事か。大膳殿、すまぬ……」

さっそく宗右衛門は、花入を持って河内屋に駆け込んだ。「この花入、質に入れれば値はいかほどだ?」
花入を鑑定した河内屋は、仰天した。
「そ、宗右衛門様、こ、この花入をいったいどこで?!」
「ある人に譲ってもらった。良い物なら、借金の足しにしたいのだが。」

「これこそ名物花入・銘『旅枕』。かの利休居士が作らせ、太閤秀吉公みずからの命名になるとか。
太閤からご当地先代・長政公に、長政公から栗山家に下賜された、門外不出の逸品と聞きますが……」
「…仔細あって譲り受けた。して、いかほどになる?」
「これなら三百両を帳消しどころか、逆に三百両お支払い致しますぞ!」
「いや、借金を帳消しにするだけで良い。このわしに、富貴に浸る資格はない。」

花入と証文を取り替えた宗右衛門は帰り道、大膳の屋敷の前まで行くと、深々と頭を下げた。


家宝を捨てて友を救い、身を捨てて主家を救った男・栗山大膳の生きた証、『旅枕』の花入は今現在、
大阪和泉の久保惣記念美術館が所蔵している。国指定重要文化財である。