830 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/30(火) 15:55:40.93 ID:PkqMihYI
或る記に、大阪冬の陣の折、丹州福知山城主・有馬玄蕃頭豊氏は江戸城修築の功を遂げて帰城し、
兵馬を整え山崎を経て摂州三田の采地(領地)に行き、そこで軍旅の設えを成して大阪へ
臨まんと欲し、先ず芥川へ至った。この時、その元老(家老)である右近という者が彼を諌めた
「ここより三田に行く路中、加茂の郷の間に小坂があります。ここは道狭く竹木が陰鬱と茂っています。
敵がこれに伏兵を設ければ、我軍がその坂下に臨んだ時、敵は急に起こり見下して鉄砲を発せられ、
我らはその的と成って悉く滅せられるでしょう。
かの死地を避け神崎に廻り、三田に赴くべきです。」
そう言ったが豊氏は承知しなかった。これに右近は怒って申し上げた
「大阪には毛利豊前守(勝永)、真田(信繁)、明石(全登)、後藤(基次)が如き場数の士があります。
彼等は必ず、この策を見逃すはずが有りません。然らば我々は徒に死ぬだけではなく、不慮の嘲りを
骸の上に残すでしょう。であれば今速やかに自害し、その汚名を免るべし!」
そういって即座に死のうとしたのを豊氏驚き、彼の諫言を容れて神崎方面へ赴いた。
案に違わず大阪方は加茂郷に伏兵を設けていた。しかし彼等は、豊氏が道を変えて吹田川を渡ったという
旨を聞いて臍を噛んだという。
(新東鑑)
有馬豊氏、老臣の諫言で死地を免れたというお話
或る記に、大阪冬の陣の折、丹州福知山城主・有馬玄蕃頭豊氏は江戸城修築の功を遂げて帰城し、
兵馬を整え山崎を経て摂州三田の采地(領地)に行き、そこで軍旅の設えを成して大阪へ
臨まんと欲し、先ず芥川へ至った。この時、その元老(家老)である右近という者が彼を諌めた
「ここより三田に行く路中、加茂の郷の間に小坂があります。ここは道狭く竹木が陰鬱と茂っています。
敵がこれに伏兵を設ければ、我軍がその坂下に臨んだ時、敵は急に起こり見下して鉄砲を発せられ、
我らはその的と成って悉く滅せられるでしょう。
かの死地を避け神崎に廻り、三田に赴くべきです。」
そう言ったが豊氏は承知しなかった。これに右近は怒って申し上げた
「大阪には毛利豊前守(勝永)、真田(信繁)、明石(全登)、後藤(基次)が如き場数の士があります。
彼等は必ず、この策を見逃すはずが有りません。然らば我々は徒に死ぬだけではなく、不慮の嘲りを
骸の上に残すでしょう。であれば今速やかに自害し、その汚名を免るべし!」
そういって即座に死のうとしたのを豊氏驚き、彼の諫言を容れて神崎方面へ赴いた。
案に違わず大阪方は加茂郷に伏兵を設けていた。しかし彼等は、豊氏が道を変えて吹田川を渡ったという
旨を聞いて臍を噛んだという。
(新東鑑)
有馬豊氏、老臣の諫言で死地を免れたというお話
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