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氏康は奇兵を好んでいる

2021年08月18日 19:09

439 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/08/18(水) 17:13:23.35 ID:KOvlo7hq
天文二十二年九月下旬に、小田原への間諜が越後に帰り、上杉謙信に言上して曰く

「北条家の群臣には武功有る者多い中でも、松田尾張守(盛秀)は智計深遠にして、軍用の具を
常に蓄え、欠乏させる事がありません。その上常に士卒を調練し、湧進の志を励ましています。
故に北条氏康も、軍事に於いてはこの尾張守と諸事評議されているそうです。

最近も、松田は諸方の寺より撞鐘を取り寄せて、毎日これを鋳鎔して鉄砲の弾としました。
ところが、鎌倉のある小寺より鐘を取ろうとしたところ、その住僧は甚だこれを嘆き惜しみましたが
力及ばず、かの僧は別れを惜しみ、鐘を抱いて涙を流し

「私は年来、二六時中これに手を触れないという事はなかった。今から以降は再び手で触る事が
出来ない、私はこの鐘に於いては残念が盡きない!」
と言って、声を上げて泣く泣く立ち分かれました。

そして奇妙なことが有りました。この鐘が小田原に至って、これを鋳鎔しようとした所、鐘より
水煙が吹き出して炭火が皆消えたのです。それから数度にわたってこれを鋳鎔そうとしましたが、
毎回水煙を吹き出して遂に鎔かす事ができませんでした。人々は皆、これを見て、かの住僧の
怨念である、と言いました。

しかしこれについて、老鋳師が言いました
「古にもこのような例が有った。牛馬の糞を炭火の中に入れた時は止む。」

これによって牛馬の糞を入れた所、炭火は盛んに燃え、鐘はたちまち熔けました。

又、盲目で情が強く、意地を立てる異相の者がありました。氏康はこれを聞いて喜んで呼び出し、
彼を咄の者としました。ところがかの盲目の者は、話と違い和順であり、意地が強いという異体は
ありませんでした。これに氏康は

「汝が意地強く異相であると聞いて召し出したのだが、然るに今その方が人に対して和順であるのは
どうしてなのか。」

と尋ねると、盲目は答えて曰く
「君は意地強き異相を好んでいます。しかし、そこで能く和順である事は、この異相の意地にあらずや。」

氏康は甚だこれを喜んだと聞いています。」

謙信はこの一々を聞かれて曰く
「氏康は奇兵を好んでいる。私はこれを撃つに必ず正兵を以て戦わん。」と言われた。

春日山日記



440 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/08/18(水) 17:56:07.68 ID:sK+P/PXf
鐘と不思議なお話と奇兵正兵の話の繋がりが判らないのだが…
不識庵様の話術は凡人には難し過ぎる
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