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「笹子落草紙」から鶴見の最期

2022年11月02日 19:31

630 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/11/02(水) 18:38:08.64 ID:Hwy3qHHU
笹子落草紙」から鶴見の最期

http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-13690.html
で書かれているように武田信茂の誅殺のち、真里谷城城主・武田信隆は無実の信茂の恨みのためか死んでしまった。
また監物河内の家中の者に信茂の残念が入り込み無実を訴えたが、とりわけ下手人である後藤・鶴見への恨みを述べたため、国中の人は二人を憎んだ。
後藤は高名な弓取りであり、また上総武田家に連なる家であったため、監物とはかって三男の亀若丸を真里谷城主にしようとした。
鶴見は後藤の義弟であったが、これを聞くや後藤に「国の混乱の元であるから欲を捨てよ」と必死に説得した。
しかし後藤は「当国にて我に弓を引くものなどいようか」と嘲笑って聞こうとしなかった。
そこで鶴見は武田信秋(武田信隆の叔父)・武田義信の父子に臣従を誓ったところ、承諾の返事が届いた。
そのため鶴見は後藤方の監物の屋敷に押し寄せ、焼き払った。
これを知った後藤は上総武田の分家の小田喜朝信に対して
「鶴見は代々恩を受けていながら、天道をはばからず御当家に対して弓を引く不届きものです。急ぎお退治あるべきです」と逆さまに申し立てた。
小田喜朝信は後藤の婿であったため、頭から後藤を信用してしまい、相模の北条氏康に援軍を申し込んだ。
こうして北条九郎氏胤?一万余騎、千葉介三千余騎が笹子城に攻め込んできた。
(笹子城は武田信茂の死後は鶴見内匠が城主となっていた)

631 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/11/02(水) 18:41:28.92 ID:Hwy3qHHU
鶴見はあらかじめ予想していたため少しも騒がす、赤銅造りの太刀を佩き、城表の櫓にのぼり、敵陣に対して言うには
「さても、鶴見は小身ではあるものの、名を後世に残すうれしさよ。
北条・千葉両大将を申し受け、潔く討ち死にすること、これ以上の悦びがあろうか。
しかし不忠の者の偽りごとを信用し忠臣を討つという小田喜朝信の行く末が見られないことだけが残念である。」
それを聞いた後藤兵庫は「はやく攻め殺せ」と命じ、四方から鬨を挙げて敵が攻め込んできた。
鶴見は櫓からさっと飛び降り、三人張りの弓に矢をつがえ、表門に来る敵を次から次へと射立てた。
これを見た朝信は盾を互い違いにさせて攻めてきたが、信仲(鶴見?)が矢を放つと十八枚の重ね盾をばらばらに破り、後藤の鎧の草摺を射貫いた。
これを見た後藤はあわてて「命あっての物種だ」と逃げて行った。
しかし北条軍により土山が掘り返されてあっというまに平地となってしまった。
こうなっては鶴見も敗北を覚悟し、いったん宿に戻って長年契約していた和尚に善知識を問うと
和尚「利剣即ちこれ阿弥陀号、という言葉があります。
敵を無明と思って剣で斬りはらい続け、雑念が入る前に討ち死にするのがよいでしょう。
愚僧も一蓮托生の身ですから、すぐ参ります」
納得した鶴見はまた表に戻ろうとしたが、女房が子供を連れてきて
「敵に無残に討たれるよりは、我々を殿の手で討ってください」と言ってきた。
鶴見は情をふりきり、母に最後の挨拶をしたのち戦に戻った。
雲霞のような敵軍を、薙刀を水車のように振り回し切り伏せていったが、戦半ばで二つに折れてしまった。
鶴見は力も尽き果てたため西方に向かって念仏を唱え、腰の刀を抜いて切腹しようとした。
そこに北条氏康の身内で萩原というものが名を名乗って前に出てきたため、鶴見はからからと笑い
「西方浄土も遠くはなかろう。来迎往生は眼前である。これもなにかの縁だ。はやく首をとれ」
こうして萩原は鶴見の首を討ち落としたが、念仏の声は首が落ちた後にも響いていた。
これを見聞きしたものはみな「弓取りはかくあるべし」と言い、ほめぬものはなかった。

続き
「中尾落草紙」から、後藤一族の最期



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「笹子落草紙」から武田信茂の最期

2022年10月02日 14:17

611 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/10/01(土) 21:26:17.40 ID:3FqdchRh
「笹子落草紙」から武田信茂の最期

武田信長の嫡流である真里谷の武田氏は、武田信隆の代になると上総国中が乱れた。
ある日、堀内・国吉と申す新参の近臣たちが信隆に
「笹子城主で御一族の信茂殿が、君の伯叔である信秋・義信親子と謀って謀反を起こそうとしております」と告げた。
その讒言を信じた信隆は、信茂配下の後藤・鶴見に信茂を討つように命じた。
鶴見は城の自邸に兵を隠し置き、夜半になるのを待った。
何も知らない信茂は酒宴を催していたが、夜中に少しまどろんだところ悪夢を見た。
かっぱと起きた信茂が御台所に
「おかしな夢を見た。腰の刀が二つに折れ、白い鳩が一つがい枕の上に飛び乗って、髻の髪を抜いて西東に去っていったのだ。」
と夢の内容を言うと御台所は
「刀が二つになるのは干将・莫耶という雌雄剣もあることですし瑞相でしょう。
白い鳩は弓矢の守護神である石清水の化身で、あなた様を西や東の大将にするというこれまた瑞相でしょう。安心なされませ」と言った。
思えばこれが最後の言の葉のやりとりであった。
信茂が寝所に戻り、またまどろむと三十余の兵が鬨の声を上げて取り囲んだ。
信茂が「どうしたことだ?」というと
兵たちは「後藤・鶴見の兵でござる。謀叛のことは聞いております。介錯いたすから切腹なされよ」と口々にいった。
信茂は「前後不覚の者どもに釈明したところで無意味である」
と九尺五寸の刀をするりと抜き、腹を十文字に掻き切り、五臓をつかみ出して周囲の壁へ投げつけ
「当国の滅亡」と最後の言葉を発し、俯き伏した。
兵どもは謀反人といえど主君の一族ということでみな涙を流した。
さて「逆心なき人を害すれば怨敵となって害を加える」と仏の言葉にもあるように、それからまもなく信隆は死んだ。

関連
「笹子落草紙」から鶴見の最期


612 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/10/02(日) 00:41:09.77 ID:BWfrvsk8
>>611
>九尺五寸の刀をするりと抜き
するりと抜けるもんなのか?

613 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/10/02(日) 12:55:23.87 ID:FY5nD3sY
おかしいと思ったら「九寸五分をするりと抜き」だった

614 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/10/02(日) 16:35:58.14 ID:ZOEnSsUz
脇差だな