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汝の運命尽きたることを告げんがために

2020年05月31日 17:25

97 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2020/05/30(土) 19:11:42.69 ID:GvcTHadk
(桶狭間の戦いの頃)

かように義元(今川義元)勝利の威勢日々強くなりけれども、不思議の事々も多かった。

まず、今川家には往古より“真範公”という出家の亡霊がいた。国主に凶事ある時は出現すると申し
伝えた。しかるに今回、義元が駿府を打ち立ち給うところで、かの真範の亡霊がまさしく阿辺川の
ほとりに現れたのを見た人が多かった。

また駿州の鎮守総社大明神は霊験無双の神なり。かの社の山の中に白狐の奇怪あり。いつもの白狐
を所の者どもは「神の遣わし者なり」と言ったが、その白狐の胸おのずから裂け破れて、自ら死し
て社壇にありけり。

また花倉といって義元の兄弟(玄広恵探)の死霊あり。かの花倉はうつつに出でて、義元にまみえ
来たる。義元はこの時、枕元に立て置いた松倉郷の刀を抜いて切り払い給えば花倉は飛び上がって
「汝の運命尽きたることを告げんがために来た」と言う。

義元もさすがに強き大将なれば少しも騒がず、はったと睨んで「汝は我が怨敵なり。何ぞ我に吉凶
を告げん。ただ我を悩まさんがために来たのであろう」と宣えば、花倉また言うには「汝はもっと
も怨みあれども、今川の家運尽きんこと甚だもって悲しければ、今まみえ来たる」と言い捨て、掻
き消すように失い果てた。

かように怪異ひとかたならず、未然に凶事を現したのは不思議なりし事々である。

――『織田軍記総見記)』



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花倉の警告

2012年10月10日 20:12

765 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/09(火) 21:56:34.95 ID:sRAIjwt0
今川義元が三河表に発向するという時の事、不思議な夢を見たことがあった。
夢のなかに花倉(花倉の乱で義元と家督を争った玄広恵探)が現れ、義元に対し

『今度の出陣は止めるべきだ』

と云った。
義元はこれに

『貴様は私への敵愾心からそんな事を言うのだろう!そんな話を聞くことは出来ない!』

そう答えたが、花倉は更に云う

『今川の家が滅びるということを、どうして憂わざるか!』

そこで目が覚めた。

その後、駿河の藤枝を通った時、義元は突然刀に手をかけた

「町中に花倉が立っている!」

しかし周りの者達には何も見えなかった。
不思議な事である。

(当代記)