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武州忍城攻防戦・速水時之ブチ切れ編

2010年04月04日 00:05

870 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/04/03(土) 13:53:40 ID:5Sc1c9z9
ラスボス秀吉の関東仕置きの際、武州忍城攻防戦での一幕。

圧倒的兵力で忍城を囲んだ石田三成の率いる上方勢。
時を移さず攻撃に入るが、堀と沼と田んぼに囲まれ、「登城するのに船を使う」といわれた忍城に、
中々効果的な攻撃が出来ずに苦しんでいた。

一方の攻め口を受け持っていた長束正家、先鋒の速水時之に厳しい言葉の使者を送る。

「他の攻め口からは鬨の声が厳しく聞こえて来るのに、ウチの陣だけは、ただ悪戯に日を費やすの
みだ。いくら難所とはいえ、宇治や瀬田の橋と比べるようなモノではないだろう? 過去の歴史に残
るような武士がおらずとも、この程度の堀を踏み越える者はおらんのか!?」

速水はこの使者の口上を聞き、
「我等の攻めがぬるいと大将よりお叱りを受け、この時之、面目を失った! 各々、命を要らぬと思
う者のみ我に続け! 命の惜しい者は後陣へ退くが良い!」
と配下の軍勢に声をかけると、一目散に敵陣へと駆け込んだ。

が、いくら気合が入っていようと堅い城は堅い城。
あぜ道を一列にならないと進めないような場所で、まともに攻撃など出来はしない。
城からは先頭を突き進む速水時之目掛けて狙撃が繰り広げられる。

その内の一発が、時之をかすめ、彼のすぐ後ろにいた小栗某の胸を直撃した。
小栗は落馬し、助け起こされた時には息を引き取っていた。
時之の側仕え、真下藤兵衛はこれを見てヤバい、力攻めはムリだ、と思ったのか、時之の乗馬の轡
を取り、無理矢理引き返させる。
時之は「おのれ真下! 主命に逆らうとは何たる曲者! 離さぬと討ちすてるぞ!」と怒り狂うが、
それでも真下は怯まず、
「主を犬死にさせぬためなら、手討ちにされるのはむしろ本望である」
と真っ向から言い返した。

一方、叱責の使者に対する速水時之の返答を聞いた長束正家、少々狼狽していた。
「え、えっと……さっきの使者なんだけどね、キミらを励ます為にちょっとキツいコト言ったんだ
ケド、別に責めるつもりはなかったんだ、いや、ホント。だから早まらないで、お願いっ!!」

その、宥めるための使者が速水の陣についた時も、まだ真下と時之の揉み合いは続いていた。
「離せ!」「離さぬ!」
押し問答を繰り広げる、頭に血の上った主従二人。
そんな所に「真面目に攻めろよ!」と言った本人から「さっきの無しね? 命を大事にね? 早まっ
ちゃダメよ?」なんて伝言が届いたのである。
時之、火に油。

「ざけんなぁっ! 他の陣と比べて攻撃が緩いっつったのは誰だ! それは先陣たるオレらの責任だ
ろ! オレらが命を惜しんで攻撃の手を緩めてると思われるのは我慢ならない! オレはここで死ぬ
から、ラスボス様によろしく言っとけ!」

そう言うと、馬の轡を握ったままの真下を切り捨てる為に刀を抜く時之。
慌てて周囲の者がその手を押さえ、真下と共に時之を拘束にかかる。
暴れる時之を皆で宥めている所に、長束正家の帰依が厚い僧が、使僧としてやって来た。

「何たる勇将! 何たる忠士!」
涙を流して速水主従を褒め称え、長束の軽率を謝罪し、今無駄死にするより、後の決戦で励むのが
忠義であると切々と訴えた。
この僧の説得に、ようやく速見時之は刀を収め、真下藤兵衛を許したと言う。
っつーかその時にはもう夕方で、辺りは暗くて皆引き上げていたとか。





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