536 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 01:55:11 ID:INjin6tZ
ラスボスの関東仕置きの際の話。
駿河に集結した諸将を前に、最後の軍議を行っていた。
「それでは山中城攻撃は二十九日に行う。誰か先陣を願い出る者はいないか?」
衆知の如く、箱根の険に構えられた山中城は攻めるのに困難な堅城である。
皆尻込みをしてしまい、願い出る者は一人もいない。
「勿論、これは危険な任務だ。ただ働きさせるつもりはない。先鋒を務め、首尾よ
く山中城を陥とす事が出来たなら、どこなりと望みの一ヶ国を与えよう」
この破格の恩賞を聞いて、一人の男が進み出る。
豊臣譜代の将、一柳直末であった。
「おぉ、直末か。お前なら首尾よくやってくれるだろう。どの国が欲しい?今の内
に申しておけ」
「それでは伊豆を頂きたいと存じます」
「うむ、良いだろう。今日から一柳伊豆守を名乗るが良い」
「はっ 必ずや山中城を陥としてご覧に入れます」
直末は自陣に帰ると、早速物見を出し、山中城の偵察を入念に行わせた。
「……大筒が?」
「はい、三門ありました。ただでさえ急な斜面をよじ登らねば城に取り付けぬと言
うのに、進軍途中を大筒で狙われては一溜まりもありませんぞ」
「しかしなぁ、殿下の御前で大口を叩いてしまった以上、退く事は出来ぬぞ。被害
は覚悟で進むしかない。出来なければオレもお前も皆、死ぬだけだ」
攻撃開始の数日前、既に直末は悲壮な覚悟を決めていた。
一方北条方、山中城内。
この城の大将は間宮豊前守。
彼は小田原城での軍議において、松田尾張守等によって篭城策が採られた事に憤慨
を隠す事が出来なかった。
「この戦で北条家は滅びるだろうな。私も既に七十六歳になってしまった。最早惜
しむ物など何もない。潔く一戦して名を残して死のうではないか」
「打って出るおつもりで!?わざわざ小田原から運んだ大筒は如何なさるのですか?」
「敵とは言え、上方の連中に恨みはない。あのような物で打ち殺したとて、何の益
もないよ。敵の姿が見えぬ内に適当に何発か威嚇射撃しておけ。後は捨て置いて良
いさ」
537 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 01:58:08 ID:INjin6tZ
そしていざ、二十九日。攻撃当日になると山中城の方から、頻りに大筒を撃ち放つ
轟音が聞こえてくる。
「我等がまだ近づいていないと言うのに、盲滅法に撃ちまくっているな。山中城は
思ったよりも浮き足立っているようだぞ。これはチャンスだ!者共進め!」
しかし、山の斜面を登り進める彼等の前に、意外な光景が現れる。
「そこに見えるは先手の衆と見える!我は山中城将・間宮豊前守!尋常に勝負いた
し、この首を上方への手土産にするが良い!」
「な……っ!?篭城じゃないのかっ!? 大筒はフェイクだったのか!?」
慌てた一柳隊に、一斉に襲い掛かる間宮隊。
元より斜面の上から下へと駆け下る間宮隊は勢いに任せて一柳隊を押し捲る。
「お主が大将か!腕に覚えがあるなら、このジジイの首、取って見せよ!」
直末の姿を見つけた間宮豊前、足場の悪い山道を一直線に突き進んでくる。
馬を並べ、槍を合わせる事数合。斜面の上から突き降ろしてくる豊前の槍に、直末
は遂に捌き切れなくなり、バランスを崩して落馬してしまう。
「その首、冥途の土産に貰い受ける……ををぅ!?」
落馬した直末に止めを刺さんと槍を突き込んだ間宮豊前。
だが、ここが険しい斜面である事、足場が悪い事を忘れていた。豊前も直末同様、
バランスを崩して落馬してしまったのである。
「殿!? しっかりしてください!!」
双方、最早戦どころではない。
したたかに地面に打ち付けられ、ぐったりと意識のない主人の身体を抱え起こし、
それぞれの陣に分かれ退いたと言う。
結局、一柳直末、間宮豊前共に落馬にて死去。
城将を喪った山中城の兵は小田原に向けて逃げ去った。
一柳直末の活躍で、難攻不落の山中城は一日にして落城したのである。
城からの一斉射撃で討死にした、という通説と比べると、なんか締まらねぇなぁ、
という一柳直末さんの落命異聞。
みんなも足場の悪い斜面でハッスルする時は気をつけなきゃ駄目だZO!☆
(元ネタ:箱根山中城責由来)
なお、史実としてはどうだったのかと言うと、一柳さん戦死の報を聞いた幽斎さん
が、
「いと毛なる 具足をかけて鉄砲の 玉にもぬける一つ柳か」(東国陣道記)
と詠んでおられるので、やはり鉄砲で撃たれたのが死因で間違いないようです。
538 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 02:58:27 ID:fEgY9cdh
林蔵のご先祖さまかっこいい!
と思ったのに・・・
539 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 03:19:39 ID:OL1ydP+F
ちょっと締りの悪い話だなこりゃ、
ラスボスの関東仕置きの際の話。
駿河に集結した諸将を前に、最後の軍議を行っていた。
「それでは山中城攻撃は二十九日に行う。誰か先陣を願い出る者はいないか?」
衆知の如く、箱根の険に構えられた山中城は攻めるのに困難な堅城である。
皆尻込みをしてしまい、願い出る者は一人もいない。
「勿論、これは危険な任務だ。ただ働きさせるつもりはない。先鋒を務め、首尾よ
く山中城を陥とす事が出来たなら、どこなりと望みの一ヶ国を与えよう」
この破格の恩賞を聞いて、一人の男が進み出る。
豊臣譜代の将、一柳直末であった。
「おぉ、直末か。お前なら首尾よくやってくれるだろう。どの国が欲しい?今の内
に申しておけ」
「それでは伊豆を頂きたいと存じます」
「うむ、良いだろう。今日から一柳伊豆守を名乗るが良い」
「はっ 必ずや山中城を陥としてご覧に入れます」
直末は自陣に帰ると、早速物見を出し、山中城の偵察を入念に行わせた。
「……大筒が?」
「はい、三門ありました。ただでさえ急な斜面をよじ登らねば城に取り付けぬと言
うのに、進軍途中を大筒で狙われては一溜まりもありませんぞ」
「しかしなぁ、殿下の御前で大口を叩いてしまった以上、退く事は出来ぬぞ。被害
は覚悟で進むしかない。出来なければオレもお前も皆、死ぬだけだ」
攻撃開始の数日前、既に直末は悲壮な覚悟を決めていた。
一方北条方、山中城内。
この城の大将は間宮豊前守。
彼は小田原城での軍議において、松田尾張守等によって篭城策が採られた事に憤慨
を隠す事が出来なかった。
「この戦で北条家は滅びるだろうな。私も既に七十六歳になってしまった。最早惜
しむ物など何もない。潔く一戦して名を残して死のうではないか」
「打って出るおつもりで!?わざわざ小田原から運んだ大筒は如何なさるのですか?」
「敵とは言え、上方の連中に恨みはない。あのような物で打ち殺したとて、何の益
もないよ。敵の姿が見えぬ内に適当に何発か威嚇射撃しておけ。後は捨て置いて良
いさ」
537 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 01:58:08 ID:INjin6tZ
そしていざ、二十九日。攻撃当日になると山中城の方から、頻りに大筒を撃ち放つ
轟音が聞こえてくる。
「我等がまだ近づいていないと言うのに、盲滅法に撃ちまくっているな。山中城は
思ったよりも浮き足立っているようだぞ。これはチャンスだ!者共進め!」
しかし、山の斜面を登り進める彼等の前に、意外な光景が現れる。
「そこに見えるは先手の衆と見える!我は山中城将・間宮豊前守!尋常に勝負いた
し、この首を上方への手土産にするが良い!」
「な……っ!?篭城じゃないのかっ!? 大筒はフェイクだったのか!?」
慌てた一柳隊に、一斉に襲い掛かる間宮隊。
元より斜面の上から下へと駆け下る間宮隊は勢いに任せて一柳隊を押し捲る。
「お主が大将か!腕に覚えがあるなら、このジジイの首、取って見せよ!」
直末の姿を見つけた間宮豊前、足場の悪い山道を一直線に突き進んでくる。
馬を並べ、槍を合わせる事数合。斜面の上から突き降ろしてくる豊前の槍に、直末
は遂に捌き切れなくなり、バランスを崩して落馬してしまう。
「その首、冥途の土産に貰い受ける……ををぅ!?」
落馬した直末に止めを刺さんと槍を突き込んだ間宮豊前。
だが、ここが険しい斜面である事、足場が悪い事を忘れていた。豊前も直末同様、
バランスを崩して落馬してしまったのである。
「殿!? しっかりしてください!!」
双方、最早戦どころではない。
したたかに地面に打ち付けられ、ぐったりと意識のない主人の身体を抱え起こし、
それぞれの陣に分かれ退いたと言う。
結局、一柳直末、間宮豊前共に落馬にて死去。
城将を喪った山中城の兵は小田原に向けて逃げ去った。
一柳直末の活躍で、難攻不落の山中城は一日にして落城したのである。
城からの一斉射撃で討死にした、という通説と比べると、なんか締まらねぇなぁ、
という一柳直末さんの落命異聞。
みんなも足場の悪い斜面でハッスルする時は気をつけなきゃ駄目だZO!☆
(元ネタ:箱根山中城責由来)
なお、史実としてはどうだったのかと言うと、一柳さん戦死の報を聞いた幽斎さん
が、
「いと毛なる 具足をかけて鉄砲の 玉にもぬける一つ柳か」(東国陣道記)
と詠んでおられるので、やはり鉄砲で撃たれたのが死因で間違いないようです。
538 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 02:58:27 ID:fEgY9cdh
林蔵のご先祖さまかっこいい!
と思ったのに・・・
539 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/11(木) 03:19:39 ID:OL1ydP+F
ちょっと締りの悪い話だなこりゃ、
スポンサーサイト