410 名前:1/2[sage] 投稿日:2015/07/18(土) 23:30:41.18 ID:BFyGo3JW
将軍
徳川秀忠が上洛の時、荒井の渡を通過して本陣に入ると、井伊掃部頭(直孝)を召し出して言った
「今度の上洛につき、荒井の渡に船橋が駆けられていたが、一体誰が命じたのか?老中共の指図であるか!?
昔より、頼朝公を始めとして権現様までも、箱根荒井というのは関東第一の関所である。それに船橋をかけ
平地にしてして渡った例はない。であるのに、今度私の沙汰無しにこのような事をするなど、不届き千万である!
一体どうしてこのような事に成ったのか、直ぐに詮議して報告するように。
それが済まないうちは行水も食事も不要である!」
殊の他の立腹に、老中たちもどう説明すべきか分からずあぐみきった中、ついにこの結論に達した
「そうだ!立花飛騨守(宗茂)を呼ぼう!」
即座に早馬を出し『急に御用これあり、御本陣へ早々御出あるべし』と呼び出した。
宗茂の宿舎と本陣の間は1里ばかりも離れていたが、宗茂も何事かと馬で駆けつけると、老中たちから
「実はかくかくしかじかこういう事で、どうにも出来ないのです。飛騨守殿、どうか上様が、機嫌を直し
行水なされ御夕食を取られるようしていただけないでしょうか?お頼み申す!」
宗茂「はあ…。私を呼んだのは誰の指図でしょうか?」
老中たち「我々が頼んだのです!もはやこの上は船橋のことは言わぬ。ただ上様がお湯に入り
御膳を召し上がって頂ければ、それでいい!だから御機嫌の事についてのみ、偏にお頼み申す。」
しかし宗茂
「ですが、私が申し上げて機嫌が治るかどうか解りませんが…。とにかく、私がこちらに罷り越したことを
上様にお伝えいただかないと…」
「大丈夫!上様は貴殿の咳払いをいつもよくご存知である!」
「咳払い…?これですか?ゴホンゴホン」宗茂、試しに咳払いをしてみたところ
秀忠「!、その咳払いは立花ではないか。我が前に出よ!」
即座に呼ばれた。
宗茂早々に御前に出ると、秀忠から問われた「其方、どうしてこちらに罷り出でたのか?」
411 名前:2/2[sage] 投稿日:2015/07/18(土) 23:31:25.68 ID:BFyGo3JW
「はっ。本日ここまで、ご機嫌よくご到着されたこと目出度いと存じ奉り、そのため宿舎からこちらに
参ったのです。」
「いや、今日は散々なことがあった。ここの渡に船橋をかけたのは不届き至極であるので、必ず糾明するよう
命じた。この詮議が解らぬうちはこのままここを動かぬつもりだ。」
そう言う秀忠の機嫌はまったくもって悪い。ここで宗茂
「さてさて、日本国を治められている将軍様と、私のような者の所存とは白黒の違いがありますな。
荒井の関所を、公方様のご威光に寄って船橋をかけられたために、平地のように感じられ上下誰もが安々と
これを渡れること、真に公方様のおかげと、私もありがたく思いながら宿舎に到着いたしました。」
この時、御次の間では老中たちが秀忠の機嫌を案じ、宗茂との会話の様子を耳を澄まして聞いていた。
秀忠「いや、そうではない!頼朝卿、神君までも、人馬の渡河する拠点であるから殊の外大切になされていた。
そんな場所に船橋を心の儘にかけて往来する事は、畢竟神君のお心入れを浅ましく扱っているようになり、
何とも是非無き次第ではないか。」
「恐れながら」宗茂は反論した。「私のような者の考えは、そうではありません。
そもそも頼朝卿や権現様の時代に、関東の要衝である荒井川に船橋をかけゆるゆると渡るような事をすれば、
何方より横矢を射掛けられるか解りません。ですから、そういったことを恐れて大切にされていたのです。
しかし、御当代の御代は、弓を袋に、太刀を箱に納める、千秋万歳の時代です。御上のご威勢ますます強く、
それ故全国津々浦々まで、今度のご上洛を陰ながら喜んでいます。
下々まで喜び、ご威光強く、また御仁徳も備わられている将軍様というのは今までに無かったことです。
この事は唐土まで聞こえ、東朝の誉れ、これに過ぎません。
そういう時代なのですから、荒井に船橋をかけても、お気遣いなされることは少しもありません。
そこを将軍様が渡られ、ここまで無事にお着きになった事は、平和な時代を象徴した、誠に目出度い
事であると存じます。
私も御次の間で老中の方々から、この船橋のことに関して色々とお聞きしました。
しかし私は、これほど目出度いことはないとご挨拶いたしました。」
「…」秀忠はこれを聞いて、何の意見も言わなかった。しかし「飛騨守は夕食はもう取ったのか?」
「私は宿舎に到着して直にこちらに参りましたから、未だ食事はとっておりません。」
「そうか、では相伴せよ。私は先に行水をする。」
そして入浴し食事が済むと、
井伊直孝を呼び出し
「先程言った船橋のことだが、飛騨守の言うことを聞き、尤もに思った。
今度の上洛も目出度いことなのだから、船橋はあのまま差し置くように。」
こうしてこの一件は相済んだ。それより酒宴が始まった。宗茂は元より上戸であるので大いに飲み
「これほどの御喜びの時節ですから、私の仁王舞を上覧に入れ申す!」
と舞始めると、秀忠も殊の外喜び、希代なる飛騨守であると、秀忠自身も酒を過ごし、
夜九つ(深夜0時頃)まで続いた。やがて宗茂が退出する時、老中たちは彼を待ち受け
「今日は不意な事にてご苦労千万でした。貴殿の取り成しのお陰で早速ご機嫌も治り、
我々も大いに安堵いたしました」と、厚く礼を述べ、また宗茂の宿舎にも使者を出して
感謝を伝えたという。
(明良洪範)
412 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/18(土) 23:49:17.15 ID:OLvomVf/
忠長「大井川に船橋をかけて兄上(家光)の上洛をしやすくしよう」
家光「大井川は関東第一の要地であり権現様でさえ浮橋を使わず渡ったのに何事か」
忠長「・・・」
このときまだ秀忠も宗茂も生きてたのに何が悪かったんだろう
413 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 00:15:53.68 ID:xyAb/G9H
権現様が絶対正義やもん
そこから外れたことは出来ん
414 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 02:11:03.53 ID:76uak5PJ
そう、権現さまが味噌と申されたからには味噌なのでございます
415 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 02:32:50.94 ID:2eE22z30
>>412
やくざと一緒
416 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 06:06:26.03 ID:6+kB7YtG
>>415
さくざと一緒?
417 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 06:19:06.45 ID:GpAykuLV
鬼393
420 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 10:13:40.80 ID:aFpPCIlN
>>411
宗茂の元主君と比べたら秀忠はかなり扱いやすそうだな
421 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 11:45:07.35 ID:hGSWm65G
舟橋なら有事にはすぐ撤去できるしそこまで問題視する必要無い気が
422 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 12:07:31.09 ID:uwCXzDg7
信長公記、天正十年四月十六日の条だと
家康が甲州征伐から戻る信長のために、奉行人三人に命じて
「甲州・信州の大河集まりて、流れ出でたる大河、漲下り、滝鳴りて、
川の面寒、渺貼として、誠に輙く舟橋懸かるべき所に非ず」
と説明されている、天竜川に舟橋を架けさせるなど、信長を歓待するために
大変な気を配って尽力したため人々に賞された、
と書かれているのに。
権現様もしたことを息子や孫が批判するとは
423 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 12:21:47.47 ID:+TMhyEgo
本拠地がどこにあるかで違う
安土なら瀬田か
424 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/07/19(日) 12:25:15.80 ID:zpVlv4rz
秀忠ってホント宗茂好きだよな