玉山大和の化物退治 その1

2010年11月03日 00:00

258 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 17:26:34 ID:bbtR+XkX
玉山大和の化物退治 その1-1

南部氏の家臣玉山大和。彼は南部信直の父南部高信のもとで、岩手郡の平定などに功を成した勇武の士であった。
ある時、彼は同僚の福士伊勢と共に三戸城へ向かっており、ふたりが蓑が坂という所にさしかかった時、
突然玉山の馬が病になり倒れてしまった。

どうしたものかと思案しているとちょうど巫女が通りがかり、玉山はお祈りしてくれないか頼んだ。
巫女「えー、嫌ですよ、馬なんか祈ったことないし」
玉山「人と獣じゃ薬が違うってのは分かるが、祈りに異なることはねえだろ、祈らなくばここを通さんぞ!」

玉山の脅しに巫女は渋々馬に祈ったが、すると巫女は突然神がかり口走った。
「我は坂の下の池に千年住む大蛇なり。諸人が我が頭の上を乗りうちすることが無念で
それを咎める為に馬を倒れ伏させたのだ」

巫女に乗り移った池の主の言葉に、玉山は切れた。
「この坂を通る皆が下馬する中で俺ひとりが乗りうちしたなら咎めるのも分かるが、
なんで俺ひとりだけ咎められなきゃならんのだ、姿を現せ!」
怒鳴るが大蛇は姿を現さない。
巫女は正気に戻り、馬は祈りもあってかすぐに回復した。

福士「まあまあ怒るな、たかが巫女の言ったことではないか。もう日暮れだ、先を急ごう」
玉山「……貴殿は先に三戸へ行ってくれ」
よっぽど怒りが溜まっていたのか、玉山は服を脱ぎ捨て、池の中に入ろうとする。ちなみに季節は真冬である。
「ちょっ、トチ狂ったか玉山!?」
止める福士の話も聞かず、玉山は池に飛び込んだ。


259 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 17:27:41 ID:bbtR+XkX
玉山大和の化物退治 その1-2
池は奇麗でチリもなく、水は湯の如く温かかった。
池の主らしきものは見つからなかったが、四~五丈ほどの臥せ木が横たわっている。
あるいはこれが池の主かもしれない。玉山はこれを引き上げようと福士に縄を用意させた。
福士はあきれ果てながらも、玉山の指示通り縄を用意した。

縄を木に付け終えた玉山は家臣二十~三十人でこれを引かせたがびくともしない。
往来の人に縄を牽くよう脅し誘い、さらに集まってきた見物人をも参加させて、
百人ほどでようやく岸辺まで上げたが、そこからどうにも動かない。

玉山は急いで三戸に使いを出す。
使者「玉山・福士が蓑が坂の池の主を引きあげています、ご加勢をたまわりたい!」
信直「……あの玉山が無茶苦茶すんのは今に始まった事じゃないからなぁ」
と信直はさらに五十人を遣わし、そうしてようやく引き上げたのは、なんの変哲もない朽木だった。
もう日も暮れる。玉山は根っこのほう三尺ばかりを斬り、それを三戸へ土産として持っていった。

翌朝朽木を見れば、それは何とも恐ろしい大蛇の首になっていた。それを見た信直はこう言った。
信直「こういうものは後でたたりをなすという。だが、その肉を食べればたたらぬそうだ。
玉山、食え」
大蛇は煮て食べられ、たたりも起きませんでしたとさ。




261 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 19:17:49 ID:2/jB8DPt
>>259
>縄を牽くよう脅し
往来の人すごい迷惑w
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玉山大和の怪物退治 その2

2010年11月03日 00:00

260 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 17:28:32 ID:bbtR+XkX
玉山大和の怪物退治 その2
南部家の家臣、玉山大和は信直の命を受け、前田利家への使者のひとりとして出立、出羽を抜けて日本海に出、
そこから船に乗って利家の領国へ向けて出航した。
乗った船は順調に航海を続けていたが、突然船が動かなくなる。騒ぎ出す乗員達。
船頭曰く、これは鰐が船をはさんでいるという。
海上では渦が巻き船も回り始め、このままでは船が覆されてしまう。乗員達は生きた心地がしない。

船頭「鰐がこのようなことをするのは何か望みがこの船にあるからだ。持っている物を海中にかざしてみてくれ」
乗船していた人々は自分の所持する物をかざしてみたが反応がない。
さては鰐の望みは物ではなく人であろうと、人々は髻を斬り海に投げてみる。
どの髻にも反応がない中、玉山の投げいれた髻は、海は落ちるより先に引込まれた。鰐の思い人は玉山だった。

玉山は乗員に迷惑を掛けまいと海に飛び込む決意をし、その前に鰐を見てから海に飛び込もうと
弓に矢をつがえて名乗りを上げる。
「我こそは南部家臣の玉山某なり! 何の遺恨あって我を害そうとするのか!」
すると、渦巻く海から恐ろしい大鰐が現れ、玉山を睨みつける!
玉山は慌てず騒がず、弓をひきしぼり矢を放つ。
矢は大きく開けられた喉の奥に命中! 鰐は波間に沈んでいった。

さて、船は無事に利家の領国へ到着し、使者の任をつつがなく終えた玉山は、
陸路帰還する際浜辺で大魚の肉を切り分けている所に出くわす。
話を聞けば矢が刺さっているという。あの大鰐であった。
確認してみると、喉には確かに自分の放った矢が突き刺さっている。
「俺を食おうとした天罰だ、思い知れ!」
と玉山は鰐の頭を踏んだ。その際エラが少し足に当たった。

その時は何もなかったが、帰還した後、足の痛みが増し、それによってついに落命した。
玉山の家では鰐を退治した矢の鏃を槍の穂とし、大蛇を斬った剣は蛇切りとして代々伝えたそうだ。


化物を倒した良い話というより、化物の為に周囲を否応なく巻き込む玉山のはた迷惑な話






264 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 21:45:54 ID:UfgZpsZ+
戦国時代みたいな合理主義が妄信を駆逐するような時代でも
こんな話が残るのは東北が草深い田舎だったからなのかそれとも・・・

265 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 22:09:38 ID:RY/CC7nx
>>264
中央部ですら可児さんみたいに尻をなでる妖怪にあった人もいるわけで。

267 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 22:15:11 ID:MUt707Cu
自然の猛威を神や妖怪に例えていたのかもね。
妖怪にとり憑かれた~とかなら現代でいう精神疾患だろうけど。

274 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/11/02(火) 22:37:30 ID:TXdefoR2
>>267
オッカムの剃刀とかの概念が無い時代だし、事象の解釈が雑多でも問題ないから
狐憑きとかの外的要因を想定するのはむしろ当然じゃないかね
当人たちが納得できればそれでいいんだよ