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宮下藤右衛門の上意討ち

2010年12月28日 00:00

7 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/27(月) 19:44:13 ID:FNU0RgcN
ある日、真田家江戸屋敷に詰めていた重臣の祢津志摩守幸直は、主君の真田信之に呼び出された。

「おぅ志摩よ。国許の宮下藤右衛門が、大坂の弟に通じ、玉薬を横流ししておった。成敗したいが、あやつも聞こえし
強者だ。ここは、お前に討手を頼みたい。」
「せっかくの仰せですが、その儀は倅にお申し付けくだされ。」
「?三十郎にか?」
「はい。倅・三十郎、十七歳になりますが、鼠の首も取ったことがございません。ここは是非とも大事の場を踏ませ、
器量をご確認ください。」
「よかろう。三十郎を呼べ!」信之の前にまかり出た祢津三十郎は、上意討ちの命を謹んで受けた。


しばらくして後、上田から江戸にやって来た宮下藤右衛門は、さっそく信之のもとに報告に現れた。

「藤右衛門、大儀である。上田表は無事か?城中に変わった事はないか?」
「はい。国許に異常はございませぬ。」
「そうか!実は、お前について不審な噂を聞いてな。まあ、今日は休んで良い。三十郎、付き添ってやれ。」
「……はっ。」

藤右衛門に続き立ち上がった三十郎は、父の方へチラチラと視線を送ったが、幸直はにらみ返すばかりだった。
そのまま藤右衛門が廊下へ出た時、三十郎は動いた。

「上意である!藤右衛門、覚悟!!」
「小僧がっ!!」
藤右衛門が脇差に手をかけた瞬間、三十郎は飛び違いざまに斬りつけた。なおも逃げようとする藤右衛門に、三十郎は
返す刀で二の太刀を与え、崩れ落ちるその身体を押さえつけ、首を取った。

見事に上意討ちを果たした三十郎だったが、家中全体の評価は低かった。
「三十郎め、藤右衛門を斬った手並みは見事だが、親父殿の顔色をうかがい、にらまれてもなお、しばし動けなんだ。
肝が成っておらぬわ。今時の若い者はダメじゃのぅ。」

評価が変わったのは、この二人の会話の後である。
「志摩よ。三十郎、なかなかやるではないか。」

「はっ、有難き仰せ。それにしても、あの際に三十郎は『もう斬っても良いか?』と眼で訴えて来ましたので、
私も『殿の御前で万一の事あってはならぬ。部屋を出てからにせよ。』と目線を送りました。あやつはそれに応え、
殿の御座所を出た所で、仕掛けました。親の欲目ながら、場を外さぬ出来る男に育ってくれました…」




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「三十郎お前、そりゃ嘘じゃろ?」

2010年12月28日 00:00

174 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/27(月) 20:52:40 ID:FNU0RgcN
真田信之の家臣に祢津三十郎という男がいた。信之の乳兄弟であり、股肱の臣たる父に似て有能な男だったが、
発言がブレる事が多く、しかもそれを口から出まかせでゴマかすのが常であった。信之が三十郎と話す際は、
「お前、そりゃ嘘じゃろ?」(三十郎、夫ハうそにてハ無きか)というのが口ぐせだったという。

ある日、信之が側近たちを集めて言った。
「世も泰平となり、わしもそろそろ庭いじりなどやってみたい。庭石として置くに、ちょうど良い石はないか?」
三十郎が、これに答えた。「それならば、善福寺に良い石がありまする!」
「……お前ソレ、いつもの嘘じゃろ?」
「ウソではござらん!その証拠に、この事は植村何右衛門が良く存じております。何右衛門にお尋ねくだされ。」

やって来た何右衛門に、三十郎は問いかけた。
「先ごろ、わしとお主で善福寺の辺りに、鷹狩りに出かけたろう。その時、川端の少し小高い所で良い石を見て、
『この辺りに、これほど良い石はあるまい。』と話した事があったのう。」「はっ。」
「いかがですかな、殿?」
「よし、わかった。追って沙汰する。下がって良い。」「「ははーっ!!」」

信之が退出した後、何右衛門は三十郎に食ってかかった。
「先ほどは殿の御前ゆえ、つい答えてしまったが、拙者はそんな石の事など、覚えておりませぬぞ?」
「まあな。殿が『ウソじゃ』などと言うので、お主と鷹狩りに言った事を思い出して、名を出したまでよ。」

「け、結局ウソではござらぬか!殿が『その石を持って来い。』と仰せになれば、どうするおつもりかっ!」
「なァに、その時は『埋まっている部分が深くて掘り出せません。人手を出しますか?』とでも申しておけば、
お優しい殿のこと、『わが遊興のために、これ以上の人手は使えぬ。』とか言って、沙汰止みになるわ。」


またある日の事、信之のもとに大きな梨が献上された。さっそく信之は、梨を存分に味わった。
「美味いっ!これほどの梨は、この辺りでは食えまい。」
三十郎が、この声に反応した。
「味はともかく大きさなら、長井四郎左衛門のところの梨の方が大きゅうござる。のう、四郎左衛門?」

話を向けられた四郎左衛門が、「そうですな、このくらいはありますかな?」
手で直径五寸弱ほどの玉を作って見せると、三十郎は信之の方に向き直り、

「お聞きになりましたか。これほどあるそうです!」満面の笑みを浮かべ、腕で一尺余りの玉を作って見せた。
「……………!!」

日ごろ物事に動じぬ男として知られる四郎左衛門も、大いに驚き迷惑したという、
真田家で寿命が縮むのは殿様だけじゃない、というお話。




175 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/27(月) 21:11:41 ID:6ctpxwy7
三十郎、いい話スレに話が上がったばかりだというのにw

176 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/27(月) 21:18:24 ID:wuPV4H9n
同じ人が投稿しているから
※いい話スレを先にお読みください
とでも書いとけばよかったんじゃ