859 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2019/04/15(月) 09:22:33.08 ID:brTcL7Ue
筑紫より兵法修行に上った、
片山重斎という人があった。塚原卜伝の一流を伝えて、ふたつなき
兵法の極意を指南するとして、京の五条坊門にしかるべき宿をとって、武家、在家(庶民)を選ばず
弟子を集めて朝暮に指南した。彼の指導は「とりわけて兵法の道理おもしろし」と好評を得て、
京都所司代であった徳善院(
前田玄以)の家中などは、おおかた残り無く弟子と成って稽古した。
ある時、
前田玄以の家中、
深沢兵部少輔という人の元での寄り合いに、時期は6月半ばであったが、
片山重斎は呼ばれ終日遊び暮らした。
夜に入ると、庭前に水を撒いて、傍輩衆7,8人がうち寄って涼んでいた。このとき稽古のためであるとして、
木刀にて剣術の型をいろいろとやって見せていた。この時、年の頃16.7ほどであろう少年であったが、
顔つきも佇まいも、類なく美しく、白い帷子の、いかにも麗しいものを着て、一尺あまりの脇差に
扇を取り揃えていた。このような人物が忽然と庭前に畏まり、兵法を見物していた。
深沢兵部はこれに気が付き、「あれにみえる少年は何者か?」と声を掛けると、この少年が近づいて
答えた
「私はこの御館の近くに住む者ですが、兵法を私も少しばかり心がけており、明け暮れに、あちらこちらと
修行しています。今日
片山重斎という兵法者がこちらへ御来駕されるとうけ給わり、そこで御太刀筋を
一覧したく思って、案内も申さず御庭まで伺候仕りました。どうか御許しを頂けないでしょうか。」
深沢兵部はこれを聞くと
「そうでしたか、それは感心な御志です。この辺りとは、何れのご子息でしょうか。」
「とりたててどうという事もない者の倅でありますので、このような歴々の皆様の寄り合いにて
名乗るというのも如何かと思います。ともかくこの近辺に住む者ですので、ご心配はありません。」
この話を聞いた
片山重斎は
「未だ御若年にて兵法へのご興味がそれほど深いのであれば、定めて技も巧みであると思います。
誰か彼に打ち太刀を渡して、かの若衆の太刀筋を見て頂きたい。」
そう言うとその場の面々も「尤もである」と、各々珍しく、勇ましげに、片膝を立てて見物した。
ここに竹村七之助といって、
片山重斎の弟子の中でも2番目ほどに力量の有る兵法者が居たが、
片山はこれを呼んで少年に「彼を打ってみよ」と言った。少年も「初心者ですから、先ずそれがしが
仰せに任せて打ってみます。」と、2尺5寸(約76センチ)の木刀を取って構え、竹村七之助も1尺8寸
(約55センチ)の木刀を持って、打かかってくるのを待ち構えた。ところがこの時少年が言った
「その構えでは隙があって私の太刀に打ち込まれてしまいますよ。直さなくてもよろしいですか?」
これを聞いて七之助は「それでは」と構えを直したが、少年は「それでも打ち込まれますよ?」と言った。
七之助は「ともかく打って来るように」と申した。
が、そう答え終わるよりも早く、少年は七之助の左手(左手)の肩先を、したたかに身に応えるほど打った。
人々は大いに驚き、「さても少年は技に秀でた兵法者である。まことにあの太刀筋はよほどの巧者と見える。
誰か彼と対戦できる者が有るのか?」と唖然としている中、
片山重斎自身が出て「であれば少年、
打って見給え」と、1尺8寸の木刀を持って、一流の極意を構えて待っていた所、少年は立つより早く、
鳥が飛ぶように間を詰め片山の腕をしたたかに打つと、片山は木刀を落とした。これを見てその座の人々は
大いに驚き口をぽかんと開けた。
その後少年は言った「これは思いがけないことでした。また明夜参って御指南をこうむります」と、
さっと立って中門の方へ行ったかと思うと、跡をくらまして姿が見えなくなった。
夜が明けて人々は「さては片山重斎の兵法に、天狗が手出しして妨げたのだろう。今後よくよく心得て
おくべきだ」と恐れおののいた。
(室町殿物語)
864 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2019/04/16(火) 23:58:36.25 ID:rXDsnnYb
>>859
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ノノ `'ミ
/ y ,,,,, ,,, ミ
/ 彡 `゚ ゚' l
〃 彡 "二二つ
| 彡 ~~~~ミ はいはい、わしのせい わしのせい
,-‐― |ll 川| ll || ll|ミ―-、
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