466 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2020/11/28(土) 13:33:04.26 ID:mBxLLQga
(細川政元暗殺(細川殿の変)後、その首謀者の一人であった香西元長は、細川高国らによって
討ち取られ、その居城である嵐山城は陥落した。)
さて、京都は先ず静謐のように成り、細川澄元は近江国甲賀より上洛された。そして京都の成敗は、
万事三好(之長)に任された。これによって、以前は澄元方であるとして方々に闕所(領地没収)、
検断(追補)され、逐電に及んだ者多かったが、今は(香西らが擁立した細川)澄之方であるとして、
地下、在家、寺庵に至るまで、辛い目に遭っている。科のある者も、罪のない者も、どうにも成らないのが
ただこの頃の反復である。
両度の取り合いによって、善畠院、上野治部少輔、故安富筑後守、故薬師寺備前守、同三郎左衛門尉、
香西又六(元長)、同孫六、秋庭、安富、香河たちの私宅等を始めとして、或いは焼失し、或いは
毀し取って広野のように見え、その荒れ果てた有様は、ただ枯蘇城のうてな(高殿)、咸陽宮の
滅びし昔の夢にも、かくやと思われるばかりであった。
そして諸道も廃れ果て、理非ということも弁えず、政道も無く、上下迷乱する有様は、いったいどのように
成りゆく世の中かと、嘆かぬ人も居なかった。
以前は、香西又六が嵐山城の堀を掘る人夫として、山城国中に人夫役をかけたが、今は細川澄元屋形の
堀を掘るとして、九重の内に夫役をかけ、三好之長も私宅の堀を掘る人夫として、辺土洛外に人夫役をかけ
堀を掘った。
城を都の内に拵えるというのは、静謐の世に却って乱世を招くに似ており、いかなる者がやったのか、
落書が書かれた
きこしめせ 弥々乱を おこし米 又はほりほり 又はほりほり
京中は 此程よりも あふりこふ 今日もほりほり 明日もほりほり
さりとては 嵐の山をみよしとの ひらにほりをは ほらすともあれ
この返事と思しいもので
なからへて 三好を忍世なりせは 命いきても何かはせん
何とへか 是ほど米のやすき世に あはのみよしをひたささるらん
花さかり 今は三好と思ふとも はては嵐の風やちらさん
この他色々の落書が多いと雖も、なかなか書き尽くすことは出来ない。
(細川大心院記)
(細川政元暗殺(細川殿の変)後、その首謀者の一人であった香西元長は、細川高国らによって
討ち取られ、その居城である嵐山城は陥落した。)
さて、京都は先ず静謐のように成り、細川澄元は近江国甲賀より上洛された。そして京都の成敗は、
万事三好(之長)に任された。これによって、以前は澄元方であるとして方々に闕所(領地没収)、
検断(追補)され、逐電に及んだ者多かったが、今は(香西らが擁立した細川)澄之方であるとして、
地下、在家、寺庵に至るまで、辛い目に遭っている。科のある者も、罪のない者も、どうにも成らないのが
ただこの頃の反復である。
両度の取り合いによって、善畠院、上野治部少輔、故安富筑後守、故薬師寺備前守、同三郎左衛門尉、
香西又六(元長)、同孫六、秋庭、安富、香河たちの私宅等を始めとして、或いは焼失し、或いは
毀し取って広野のように見え、その荒れ果てた有様は、ただ枯蘇城のうてな(高殿)、咸陽宮の
滅びし昔の夢にも、かくやと思われるばかりであった。
そして諸道も廃れ果て、理非ということも弁えず、政道も無く、上下迷乱する有様は、いったいどのように
成りゆく世の中かと、嘆かぬ人も居なかった。
以前は、香西又六が嵐山城の堀を掘る人夫として、山城国中に人夫役をかけたが、今は細川澄元屋形の
堀を掘るとして、九重の内に夫役をかけ、三好之長も私宅の堀を掘る人夫として、辺土洛外に人夫役をかけ
堀を掘った。
城を都の内に拵えるというのは、静謐の世に却って乱世を招くに似ており、いかなる者がやったのか、
落書が書かれた
きこしめせ 弥々乱を おこし米 又はほりほり 又はほりほり
京中は 此程よりも あふりこふ 今日もほりほり 明日もほりほり
さりとては 嵐の山をみよしとの ひらにほりをは ほらすともあれ
この返事と思しいもので
なからへて 三好を忍世なりせは 命いきても何かはせん
何とへか 是ほど米のやすき世に あはのみよしをひたささるらん
花さかり 今は三好と思ふとも はては嵐の風やちらさん
この他色々の落書が多いと雖も、なかなか書き尽くすことは出来ない。
(細川大心院記)
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