遠野阿曽沼氏の滅亡

2011年10月26日 22:00

533 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 16:24:19.88 ID:MFVkJyOr
遠野阿曽沼氏の滅亡

陸奥国遠野保の独立領主阿曽沼氏は、鎌倉以来この地を領する大名だった。
だが秀吉の小田原征伐に参陣せず、家こそ潰されはしなかったものの領主としての地位を失い、南部氏の
付庸とされてしまった。

その南部氏との関係はあまり良くなかったらしい。
南部氏は阿曽沼氏の大身鱒沢氏を支援して、阿曽沼氏と対決してきた経緯があった。阿曽沼氏も
旧敵の配下にされ面白いはずがない。
また、当主阿曽沼広長の正妻が、伊達家臣となった気仙の世田米氏の出身であったことも、南部が
阿曽沼氏を警戒する理由であった。

ある時、阿曽沼広長と鱒沢左馬之介広勝の間に隠し田を巡る紛争が起こった際、
裁定を依頼された南部氏は、かねてよりよしみを通じていた鱒沢の肩を持ち、裁定は鱒沢に有利なものとなった。
それに怒った広長は、仲裁役の桜庭安房を闇討ちしようと兵を送る。
桜庭安房は従者を多数討たれながら這々の体でなんとか逃げ延び、闇討ちは失敗してしまう。

いかに裁定が不服とはいえこれはまずい。時の南部当主である南部信直は激怒したが
当時信直は病床に伏せっており、これから間もなくの慶長四年十月に逝去。遠野の処置はそのまま
沙汰やみの形になった。
信直の葬儀は大々的に執り行われ、領内の豪族達が続々参列し向後の忠誠を誓った。
だが、阿曽沼氏は報復を恐れたのか、なんの音沙汰もなく葬儀に参列しなかった。
これによって両者の亀裂は決定的なものとなってしまう。

「遠野孫三郎め、ついにこの方を袖にするつもりか! このまま捨て置いたら示しが付かぬ。速やかに
何らかの仕置の手立てを…」
といきり立つ家臣に、南部利直は、
「まてまて急くな、急いては事をし損じる、手立ては任せておけ」
と宥めたという。

そしてその時はすぐ訪れる。
慶長五年、関ヶ原の前哨となる上杉征伐がはじまり、阿曽沼広長は南部軍の一員として最上口に出兵
することとなった。
しかし家臣の鱒沢は病気を理由に参陣を拒否する。だが鱒沢は領内で釣りやキノコ狩りで遊んでおり、
仮病であるのは明らかだった。
広長は当然怒ったが老臣達に諫められて、仕方なく上野丹後と平清水駿河を留守居として、三〇〇の兵で参陣した。


534 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 16:25:07.58 ID:MFVkJyOr
しかし、南部軍が最上口に滞在していた時に、伊達政宗の支援を受けた和賀忠親が挙兵。南部軍は
急ぎ帰国することとなる。
南部利直は
「この騒動は手前の領土で起こったこと、お手前はゆるりと戻られよ」
と広長に言い急ぎ撤退。南部軍はそのまま和賀岩崎城を囲むが、冬の到来により一時囲みを解き、
戦いは翌年に持ち越された。

そしてその頃遠野では、鱒沢広勝が兵を挙げ、主のいない遠野を占領してしまっていた。無論、利直と
鱒沢が示し合わせてのことである。
鱒沢は居留守の上野丹後と平清水駿河など主立った者を招き、謀反の計画を明かした。
「手向かいせずに城を明け渡せば厚禄加増の上子々孫々まで安堵するが、
手向かえば当人は元より妻子眷属にいたるまで討ち果たすべしと、南部殿からも言われている」
と脅迫。上野丹後と平清水駿河は降参するよりほかなく、他の者も謀反に同意した。
唯一火渡玄浄のみがこれに同意せず、上野と平清水の不忠を罵り退席、その後彼は自らの館に籠城し、
壮烈な戦死を遂げた。

関ヶ原の戦いが終わり、広長は伊達領を通り、岩谷堂から人首まで到着したが、
鱒沢は南部の兵と共に遠野境で待ち伏せをしており、それを知らされた広長は当然驚き、遠野へ攻め入ろうとした。
が、士卒達は遠野に妻子を残しており、戦えば人質とされるのは明白で、士気は上がらず脱走者が続出。
広長は仕方なく、「他日必ず兵を起こして遠野に帰参する故、その時は出迎えて合力するように」
と誓わせて、腹心五・六人を連れて、妻の実家世田米へ落ち延びていった。

その後広長は伊達政宗に援助を頼んだ。政宗は「さては南部に先を越されたか」と口惜しがり、
阿曽沼氏に兵を授けた。
広長は奪還戦を挑み、首謀者である鱒沢広勝を討ち取ったりもしたのだが、とうの遠野からは期待していた
内応がまったくなく、
それどころか仙台勢の乱暴を恐れ、必死になってかかってくる。そのうち、郎党の松崎監物や海上喜八が戦死し、
浪人ばかりで戦意の薄い仙台勢は総崩れとなる。
「恩知らずの人でなし、犬にも劣る人非人!」
撤退する兵の中で、広長は助けに来なかった遠野侍達を罵り、男泣きに泣きながら落ちていった。
広長はさらに二度の奪還戦を試みるが、結局遠野奪還はならず、失意のうちに仙台で亡くなったという。




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