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生駒騒動

2016年01月26日 17:55

38 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/01/26(火) 17:01:09.85 ID:H4d7WJ4x
生駒壱岐守高俊は、藤堂高虎の外孫であり、土井利勝の婿であった。しかし彼は天性愚かなる人物で、
世の笑い草に成る事ばかり多かった。

生駒家の家老、石崎若狭・前野助左衛門という者二人は常に江戸にあり、中でも前野一人が
計らいとして生駒家全体を差配していた。それは在国している家老等には納得出来ないもの
ばかりであったが、前野は常に「御舅土井殿の仰せである」或いは「幕府執政の人々の旨を得ている」などと
言い送ったため、「ならばかの人々の仰せに背くのは、家のため然るべからず」と、曲げてその旨に従った。
そのようであったから、生駒家の政治は日々月々に善からぬこと多くなって行き、武士も領民も怨み苦しんだ。

ここに至り、在国の家老である生駒将監は「このままでは家が滅びるのも遠からず」と、密かに江戸に参り、
幕府の執政の人々に「高俊が家の事すべからく、早く関東よりのご沙汰を止められ、父祖の例によって
国の静謐を致すべきです!」と訴えた。

これを聞いた執政の人々大いに怪しみ、先ず前野助左衛門を召喚して尋問した。しかし前野は
「皆様の御下知を承らない事を、私がどうして国元に申し送るでしょうか?」
そう陳じた。このため生駒将監前野助左衛門の両名を召して対決させた。

生駒将監は何も言わず、懐中より一枚の書状を出して執政の人々に捧げた。
彼らがこれを見てから「それを前野にも見せてください」と申し上げた。
前野はその書状を見ると思わず吹き出し、執政の人々に向かって言った

「これは将監の元から鯛二つが送られた時、私が送った礼状です。一体どういう意味があってこんなものを
ここで披露するのか。こんな不思議の事をやるような男ですから、今回のように跡形も無いものを訴えたり
するのですよ!」

将監、人々に向かい
「この書状は前野自ら書いたものか否かを尋ねて頂けますか?」
前野は人々より聞かれるより早く「勿論私が書いたものだ」と応えた。

「ならばその書状を返していただきたい。」そう言ってこれを再び懐中に戻すと、今度は別に大量の書状を
取り出した。それは数年に渡り、前野が、土井利勝を始めとした幕府執政の人々の仰せを承ったと騙り、
自らの心のままに国務を沙汰した文書であった。それらは全て、前野自身の筆跡であった。

ここに至り前野は争う様子もなくひれ伏した。執政の人々大いに怒り、彼を即座に搦め捕って禁獄した。
そして即座に生駒高俊およびその家臣たちを召喚し

「高俊が天性愚かである事、知らないわけではなかったが、父祖の功を捨てられぬため家を継がせたというのに、
このように家が乱れた上は、今後国を与えておくわけにはいかない。
しかし、心が至って愚かである以上、その罪も重くはない、とも言える。」

そう沙汰し、別の義を以って所領一所を賜った。
前野は一族尽く誅せられ、石崎若狭は、同じく江戸にあり、前野の振る舞いを見ていながら彼に従ったこと、
その罪逃れるべからず。しかし前野とは罪の科は同等であるべきではないと、誅殺は彼自身のみに留まった。
その他の家臣たちも、その罪の軽重によって尽く刑が行われたという。

(藩翰譜)

「馬鹿だから罪一等を減ずる」というのもひどい話ですな。



39 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/01/26(火) 17:13:55.78 ID:Kn7fuvcZ
現代の精神鑑定してなんちゃらってのと同様やね。昔の記録にもちょくちょく出てくる
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山口彦十郎の怨念

2012年03月27日 21:41

452 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 10:18:49.02 ID:jE/JHN0D
讃岐国高松藩主 生駒讃岐守高俊の家臣に、山口彦十郎という侍があった。

山口は長年忠勤を励んだにもかかわらず、俸禄の加増も全くなく、後から取り立てられたものが自分を追い越して
立身していくのに我慢がならず、その事の不満を広言し、ついに出仕を止めてしまった。

生駒高俊はこれに激怒し、山口を捕らえ斬首を命じ、のみならず彼の女房子供まで殺した。
斬首の場において、山口は激しく怒り叫んだ

「お上のなさりように不平を申し上げたのは、この身に覚えのある罪過である。だから処罰の受けるのも
仕方のない事だ。だが何の罪もない妻子まで殺すとはどういうことか!?
そのうえに、侍に切腹させず、斬首にするとはいかなる処遇か。この屈辱、耐え難い!」

そして斬首役の横井二郎右衛門を睨みつけ

「斬り損なうな、見事に斬れよ!我が怨念に力がAあるなら、近いうちにそのしるしを見るであろう!」

これに横井

「うむ!承知!」

と、山口の首を落とす。その首は2,3間転がると斬られた面を下に立ち横井の方を向き、彼の目をきっと
睨みつけてから、静かに目を閉じた。


斬首をした横井は、自宅に帰った途端狂乱した。
寝ても覚めても、山口が血眼で睨みつけている姿が見え、彼は大声で叫びつつ刀を抜いて、そこらじゅうを
斬って回った。家族の者が何とか取り押さえ、刀を取り上げたが、
「彦十郎よ!殿のご命令で仕方がなかったのだ!許してくれ!許してくれ!」
そう手を合わせ足掻き続け、7日目に死んだ。

その後も山口彦十郎の亡霊は高松城下に現れ続けた。生前と同じ肩衣姿の山口に行き会い、
身がわなわなと震えそのまま病みついて死んでしまったものが14,5人にも及んだ。
このような怪異に生駒家中の者たちは恐れおののき、山口の菩提を弔い供養を行った。
すると城下で山口の姿を見ることはなくなったが、それでも怪異のことは続き、長屋が突然鳴動したり、
城中の大木が風も吹かないのに折れ倒れるなど、不思議なことが数多く起こった。

そして生駒高俊にいつしか邪悪の心が起こり、藩政が乱れ、ついに改易されたのも、この山口彦十郎の
怨念のためであると、人々は噂し合ったとのことである。

(平仮名本・因果物語)




453 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 10:39:33.24 ID:0755qksH
関係のない妻子を殺したことを憤っていながら、
命令でやっただけの横井だとか、高松城下の一般人に迷惑をかけるとか
山口酷いな

454 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 12:25:57.72 ID:Aaov2+7D
悪霊に道理が分かろうものか

455 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 19:26:34.33 ID:I8GjOD58
崇徳院もびっくりだ

456 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 20:12:16.74 ID:gKvQg+Sl
弔えばある程度おさまるだけ富田に道理説くよりマシじゃないか


457 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 20:20:13.21 ID:e8HIytf9
http://ja.wikipedia.org/wiki/かけひき
小泉八雲「怪談」に載っていた話でちょっと似たようなのがあるが

>「怨霊となって人を呪おうとするには強い末期(まつご)の怨みが必要だが、あの罪人は私の挑発に乗って
>石に噛り付くことのみを念じて死んだ。怨霊となることは出来ないだろう。」
こっちでは祟りは起きなかったようだ
しかし、ラヴォアジエがギロチンで斬首された後、瞬きしたという都市伝説を思い出した

458 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/03/27(火) 21:37:57.91 ID:+wX57e12
スレ違いだが、幕末の晒し首を取った写真があったんだが、
首が倒れないように左右に盛り土してるのが妙にリアルだったわ・・・