524 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/01/11(月) 19:21:09.41 ID:SZMnZVxW
吉川元長、弟・経言の現状について苦言する
かつて吉川経言(のちの広家)には、尼子旧臣の小笠原長旌の婿養子になる縁談があったが
両家の間で話をし輝元に相談するところで、輝元の強い反対に遭い破談になったことがあった。
特に経言は破談になると外聞が悪いので、嫁取りだけはしたいと元長を通し輝元に伝えたが
輝元は「経言のせいで三家が滅ぶ」「(元春が)経言を操って養子入りを強行しようとしている」などと
聞く耳を全く持たず、最終的には「(養子入りを止めるために)この命を賭ける」という反応だった。
元々、小笠原氏は経言の弟の松寿丸を養子にしようとしていたが松寿丸が亡くなってしまったため
代わりに経言を貰いたいとの話であったので、元春・経言親子はあまりのことに驚き沈黙した。
以下は騒動から二年後、経言が秀吉への人質として送られる際の兄・元長の起請文。
宛先は隆景と毛利家重臣の福原氏。例によって長い書状なので、大意だけ意訳。
~~~~~
(輝元は小笠原家と吉川家には筋目がないと言われましたが)長雄(長旌の父)の妻は新庄(吉川家)の出です。
(元就夫人の妙玖も吉川家の出なので)つまり元春は(長雄の妻から見て)伯母の子にあたる訳です。
小笠原家に実子が出来ないから(吉川家が)改易する話ならともかく、養子入りさせて残そうとしているのに
非難されるのはよく分かりません。朋輩衆の養子契約はよくあることです。隆景は小早川家を継いでいますが
これは小早川興景の妻が毛利の出であるからですし、元春は吉川興経の養子になって吉川家を継いでいます。
経言の養子入りは小笠原の家中から出た話ですが、そうとは言えあの家の意見が一致しておらず
元春や私が道理に外れたことをしたと申し上げる者がおり、嘲りを受けることになったのは仕方ありません。
しかし御当家(毛利家)の御意を違えて、我ら一類の進退を失うような問題になるのは理解できません。
どこにでも養子や養父はいるのに、私や元春に対して(輝元の)なさりようはどうなのでしょうか。
御当家に対して隆景・元春が奔走するのは当たり前です。とは言え元春が(自分の家の都合を差し置いて)
日頼様(元就)の戦に今日に至るまで気遣いしてきたのは、皆々ご存知のはずです。
私の兄弟の一人でも引き立てていただければ、少ない分限で長年日夜を問わず苦労してきたことを
(輝元が)分かって下さったのだと(元春は)ありがたく思ったでしょう。
国衆の次男・三男でさえ過分の扶助を与えられています。取り立てての扶助は要りませんが
養子契約をしてよいか申し上げることも出来ないほど、万事遠慮しないといけないのでしたら
扶助して頂くことは無理ですね。
このことはすぐに言うべきでしたが、いまこのときになって言うのは、経言が上国するので
私の内心を明かしておきたいと思ったのと、経言が不憫だと申したいからです。
元春と経言はあの家(小笠原家)のことについてもう申し上げないと(輝元に)約束しました。
経言が上国するのに難渋したくないからですが、私はそんな約束はしていないし
遠慮ばかりして後悔したくないので、心中のことを残らず申し置くことにします。
今度の上国命令についてですが、経言は外聞を失ってしまったので今後出仕出来ない覚悟でいました。
そこに(人質として上国し)御用に立つようにとの命令がありましたので、(その覚悟を)忘れないように
(経言は命令を)お受けしました。今後経言が帰ってこられるか分からないので、(経言の)進退のことを
私は申すべきではないかもしれませんが、このような進退になってしまった経言が
その身をなげうとうとしているのが、不憫でならないのです。
ですから申します。元綱(小早川秀包)にはあれこれと扶助していますが、経言とどう違うのですか。
二人一緒に上国するのですから、(経言)一人で高名をするように申す訳ではないのですが
人質になる身上ですので、公私ともに心残りのないように上国したいと思っているようです。
私と元春も同じ気持ちです。
経言は(進退を失ってしまったので)元春の老後の話し相手にでもしようと思っていたのですが
(輝元の)御気遣いで御用に立てることになったので、人質として差し出すことにしました。
このような元春と私の心底を思いやって、(輝元に)口添えしてもらえないでしょうか。
そもそも経言の進退について今申すのがおかしいと言われるのなら、その旨を元春・経言に
申し聞かせます。たとえ経言に御憐憫の目を向けていただけなくても、我々父子の御当家に対する
奉公は変わらないということを、内々に申し分を伝えたくこのようにしました。
――『吉川家文書 一二四七号』
525 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/01/14(木) 15:34:24.13 ID:+EdODEIp
確かに経言のせいで三家が滅びそうになったね
吉川元長、弟・経言の現状について苦言する
かつて吉川経言(のちの広家)には、尼子旧臣の小笠原長旌の婿養子になる縁談があったが
両家の間で話をし輝元に相談するところで、輝元の強い反対に遭い破談になったことがあった。
特に経言は破談になると外聞が悪いので、嫁取りだけはしたいと元長を通し輝元に伝えたが
輝元は「経言のせいで三家が滅ぶ」「(元春が)経言を操って養子入りを強行しようとしている」などと
聞く耳を全く持たず、最終的には「(養子入りを止めるために)この命を賭ける」という反応だった。
元々、小笠原氏は経言の弟の松寿丸を養子にしようとしていたが松寿丸が亡くなってしまったため
代わりに経言を貰いたいとの話であったので、元春・経言親子はあまりのことに驚き沈黙した。
以下は騒動から二年後、経言が秀吉への人質として送られる際の兄・元長の起請文。
宛先は隆景と毛利家重臣の福原氏。例によって長い書状なので、大意だけ意訳。
~~~~~
(輝元は小笠原家と吉川家には筋目がないと言われましたが)長雄(長旌の父)の妻は新庄(吉川家)の出です。
(元就夫人の妙玖も吉川家の出なので)つまり元春は(長雄の妻から見て)伯母の子にあたる訳です。
小笠原家に実子が出来ないから(吉川家が)改易する話ならともかく、養子入りさせて残そうとしているのに
非難されるのはよく分かりません。朋輩衆の養子契約はよくあることです。隆景は小早川家を継いでいますが
これは小早川興景の妻が毛利の出であるからですし、元春は吉川興経の養子になって吉川家を継いでいます。
経言の養子入りは小笠原の家中から出た話ですが、そうとは言えあの家の意見が一致しておらず
元春や私が道理に外れたことをしたと申し上げる者がおり、嘲りを受けることになったのは仕方ありません。
しかし御当家(毛利家)の御意を違えて、我ら一類の進退を失うような問題になるのは理解できません。
どこにでも養子や養父はいるのに、私や元春に対して(輝元の)なさりようはどうなのでしょうか。
御当家に対して隆景・元春が奔走するのは当たり前です。とは言え元春が(自分の家の都合を差し置いて)
日頼様(元就)の戦に今日に至るまで気遣いしてきたのは、皆々ご存知のはずです。
私の兄弟の一人でも引き立てていただければ、少ない分限で長年日夜を問わず苦労してきたことを
(輝元が)分かって下さったのだと(元春は)ありがたく思ったでしょう。
国衆の次男・三男でさえ過分の扶助を与えられています。取り立てての扶助は要りませんが
養子契約をしてよいか申し上げることも出来ないほど、万事遠慮しないといけないのでしたら
扶助して頂くことは無理ですね。
このことはすぐに言うべきでしたが、いまこのときになって言うのは、経言が上国するので
私の内心を明かしておきたいと思ったのと、経言が不憫だと申したいからです。
元春と経言はあの家(小笠原家)のことについてもう申し上げないと(輝元に)約束しました。
経言が上国するのに難渋したくないからですが、私はそんな約束はしていないし
遠慮ばかりして後悔したくないので、心中のことを残らず申し置くことにします。
今度の上国命令についてですが、経言は外聞を失ってしまったので今後出仕出来ない覚悟でいました。
そこに(人質として上国し)御用に立つようにとの命令がありましたので、(その覚悟を)忘れないように
(経言は命令を)お受けしました。今後経言が帰ってこられるか分からないので、(経言の)進退のことを
私は申すべきではないかもしれませんが、このような進退になってしまった経言が
その身をなげうとうとしているのが、不憫でならないのです。
ですから申します。元綱(小早川秀包)にはあれこれと扶助していますが、経言とどう違うのですか。
二人一緒に上国するのですから、(経言)一人で高名をするように申す訳ではないのですが
人質になる身上ですので、公私ともに心残りのないように上国したいと思っているようです。
私と元春も同じ気持ちです。
経言は(進退を失ってしまったので)元春の老後の話し相手にでもしようと思っていたのですが
(輝元の)御気遣いで御用に立てることになったので、人質として差し出すことにしました。
このような元春と私の心底を思いやって、(輝元に)口添えしてもらえないでしょうか。
そもそも経言の進退について今申すのがおかしいと言われるのなら、その旨を元春・経言に
申し聞かせます。たとえ経言に御憐憫の目を向けていただけなくても、我々父子の御当家に対する
奉公は変わらないということを、内々に申し分を伝えたくこのようにしました。
――『吉川家文書 一二四七号』
525 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/01/14(木) 15:34:24.13 ID:+EdODEIp
確かに経言のせいで三家が滅びそうになったね
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