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真に必死と志さなければ

2018年01月06日 19:26

565 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/01/05(金) 21:09:25.99 ID:GQe9Igv/
織田信長のもとに、美濃侍で元は斎藤道三に仕え、度々戦功のあった平野与兵衛という勇士が
招き召された時、この平野に近付きになろうと、織田家の諸士がこれを訪ねた。
道化清十郎も彼の所に至りて対面し、このように言った

「平野殿の事は隠れも無き儀であり、当家にも招かれた以上、今後別して御意を得、
御指引にも預かりたいと思っています。」

これに平野
「思いのこもった仰せです。私は他家にあったとは言いながら、斎藤の家は御当家とも
縁がありますし、今後は御指図も請けたいと思います。
…ところで貴殿のお名前は?」

「私は当家でこれといった者でもありませんので、名乗るのもいかがと思いますが、
お尋ね故に申します。私は無双道化と申す者です。」

「さては聞き及ぶ無双殿でありましたか、初めて面謁いたしますが、久しくその名は伝え聞いて
おりましたので、久しき知音のように思います。」

この時道化は尋ねた
「非常に粗忽な質問だと思いますが、平野殿はいつでも、攻めかかるときは先駆け、
退く時には殿と、先駆け殿を毎回勤められていると承っています。こういったことは、
若輩として承っておきたい事です。我らもそういった働きを致すこともあるでしょうから、
その心がけを知りたく、仰せ聞かせて頂けないでしょうか?」

平野はこれを聞くと
「結構な質問だとい思います。ただ私は、何であっても存ずることがあって仕るという事は
ありません。

斎藤の家の子たちは、度々の取合いに、冥加に叶う者達は、先に先に、討ち死にしました。
私などは生き残ってしまった故、何とぞ重ねての戦にては必ず討ち死にを仕ろう。そう考えて
いるのですが、武勇が足らないゆえでしょうか、度々死を逃れ今日まで永らえ、つれなき命を
全うして、このようなお尋ねに出逢ってしまいました。恥ずかしいことです。」

道化はこれに
「平野殿の只今の御返答を承って、さても深切な事と存じました。
先駆け殿の事は、真に必死と志さなければ、勤め難きものなのですね。」
そう、感じ入ったという。

(士談)

まとめ1544の「俺は断じて及ばない」の、詳しいバージョンですね



566 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/01/05(金) 21:15:57.17 ID:dyTR67CM
無双

570 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/01/06(土) 21:21:50.09 ID:V+zRlDZ1
>>566
信長が、道化清十郎の武功を賞賛して、彼の旗指し物に「無双道化」と書いたそうな。
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俺は断じて及ばない

2012年11月14日 19:56

405 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/14(水) 17:39:52.21 ID:zHTQwAwI
道化(道家)清十郎は織田信長に仕え戦ではしばしば功を立てていた。
信長は清十郎の勇を愛し自ら無双の字を背旗に書いて清十郎に与えた。
人はこれに因んで道化を『無双道化』と呼んだ。

ところで信長が招いた美濃の士に平野某という人がいたのだが道化は
彼と親しく交わった。ある時、道化は気軽に「あなたは進めば先頭に立ち、
退けばしんがりを務めるが、どうしてあのようにできるのだ」と尋ねた。

「死を決するのみ。…ではあるが斎藤家の諸将は皆国の為に死んでしまったから
それがしは独り余命を保ってここにいる。結局は勇気が足りないのだ。今あなたの
問を受けて、恥ずかしさのあまり背中にたくさんの汗をかいてしまったよ」

道化は退くと「勇を誇らない平野殿には、俺は断じて及ばないな」と嘆じた。

――『近古史談』

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