567 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/30(金) 18:13:57.18 ID:wGHN8sOI
摂津の住人駒形甚九郎光親はある時、若侍十人ばかりと多くの勢子を連れて
鷹狩りに出かけ、一日中遊んで暮らした。同じ時、十河一存の子・孫六郎修理大夫の
次男・七郎兵衛が五十人ばかりで勝尾寺より帰るところだった。
一行が草の深い所の傍を通ると駒形の鷹犬が草原を嗅ぎ回っているところだった。
犬は人々をきっと見て見知らぬ奴だと大いに吠え掛かり、飛びついて噛み付こうとしたので、
小姓が素早い手利きで打刀を引き抜き、犬の細首をずんと切り伏せた。
その後、犬引きが犬の死骸を見つけて仰天し駒形に報せると駒形は「なんたる狼藉だ!
畜生をかように切って棄てるとは、あの野郎め逃がさんぞ!!」と、只一人三町ばかりを
走って一行を追いかけた。追いついた駒形は一行五、六十人の中へ押し入り、
「只今鷹犬を殺しなさったのはどなたですか」と言ったが、侍たちは「いやぁ知らないな」
とばかり言うので駒形は機転を利かせて「犬は畜生ですから別に死んでもよいのです。
ただ、もし噛まれた方がいて痛がっておられるのではと思いここへ参ったのです」と言った。
例の小姓は「ああ、そういうことか」と思って「それがしと主人へ噛みつこうとしたので、
ただ一打ちに致した。あんな癖の悪い犬を飼うなんておかしいですよ」と厳しく言った。
「さてはコイツか…」と感づいた駒形は「おのれも共に畜生道へ行きやがれ!」と言うままに
小姓の細首を宙に落とした。一行は大騒ぎになって傍にいた若侍が刀を抜いて向かったところを
駒形はその右腕を切り落とし、そのまま多勢を切って廻ると近寄る者もいなくなった。
そこへ駆けつけた駒形の侍や勢子三十人ばかりが切り掛かったので、勢子どもも多く切られた。
しかし、かなわないと思ったのだろう、五十余りの侍たちは主を捨てて逃げ出し、遅れた
七、八人が切られてしまった。後に隣郷にも聞こえて「駒形が手柄、修理の孫六郎後を取りける」
と噂になったので暫く世間へ出てこなかった。
――『室町殿物語』
駒形さんは愛犬家なんだなぁ(棒読み)
摂津の住人駒形甚九郎光親はある時、若侍十人ばかりと多くの勢子を連れて
鷹狩りに出かけ、一日中遊んで暮らした。同じ時、十河一存の子・孫六郎修理大夫の
次男・七郎兵衛が五十人ばかりで勝尾寺より帰るところだった。
一行が草の深い所の傍を通ると駒形の鷹犬が草原を嗅ぎ回っているところだった。
犬は人々をきっと見て見知らぬ奴だと大いに吠え掛かり、飛びついて噛み付こうとしたので、
小姓が素早い手利きで打刀を引き抜き、犬の細首をずんと切り伏せた。
その後、犬引きが犬の死骸を見つけて仰天し駒形に報せると駒形は「なんたる狼藉だ!
畜生をかように切って棄てるとは、あの野郎め逃がさんぞ!!」と、只一人三町ばかりを
走って一行を追いかけた。追いついた駒形は一行五、六十人の中へ押し入り、
「只今鷹犬を殺しなさったのはどなたですか」と言ったが、侍たちは「いやぁ知らないな」
とばかり言うので駒形は機転を利かせて「犬は畜生ですから別に死んでもよいのです。
ただ、もし噛まれた方がいて痛がっておられるのではと思いここへ参ったのです」と言った。
例の小姓は「ああ、そういうことか」と思って「それがしと主人へ噛みつこうとしたので、
ただ一打ちに致した。あんな癖の悪い犬を飼うなんておかしいですよ」と厳しく言った。
「さてはコイツか…」と感づいた駒形は「おのれも共に畜生道へ行きやがれ!」と言うままに
小姓の細首を宙に落とした。一行は大騒ぎになって傍にいた若侍が刀を抜いて向かったところを
駒形はその右腕を切り落とし、そのまま多勢を切って廻ると近寄る者もいなくなった。
そこへ駆けつけた駒形の侍や勢子三十人ばかりが切り掛かったので、勢子どもも多く切られた。
しかし、かなわないと思ったのだろう、五十余りの侍たちは主を捨てて逃げ出し、遅れた
七、八人が切られてしまった。後に隣郷にも聞こえて「駒形が手柄、修理の孫六郎後を取りける」
と噂になったので暫く世間へ出てこなかった。
――『室町殿物語』
駒形さんは愛犬家なんだなぁ(棒読み)
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