203 名前:1/2[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 22:06:04.11 ID:9r6Gn5yu
本山梅慶入道(茂宗)といえば、その当時「土佐七雄」の中でも最も勢力が大きく、
「其器傑出して、偏に興立の志ありければ、近辺の金銀衣食を与へて是を懐け、諸士に賄を厚くして
親みをなし、遂に人数を催して、土佐・吾川両郡に発向して、随はざるをば攻亡し、降を乞ふをば、
免して幕下になし、両郡く打摩け、猛威を振ふ事甚し」
と言われた傑物であり、長宗我部国親の成長を押さえつけた最大の障害でもあった。
永禄元年(原文ママ)六月十一日の早朝のこと、本山梅慶入道が庭の木々の梢を見ると、そこに
年の頃17・8程の美しい少女が、鮮やかな衣装を着て、松の梢に立ち、梅慶を見て
ニッコリと笑った。
梅慶はこれを見るや「誰か有る!弓を持って来い!」と声を上げ、若侍が何事かと急いで弓矢を揃えて
渡すと、梅慶弓を構えてその少女を狙う。が、少女の姿はかき消すように消え、虚空にただ笑う声が響き、
それは城に程近い、朝倉の宮の方へと消えていった。
4.5日ばかり後、城の大手に植えてあった杉の大木の根から火が燃え出た。
見る内に数百本に燃え付いて、黒煙が天を覆った。
人々は驚き、「水だ!熊手だ!」と騒いで近づいてみると、それは火ではなかった。なんと、
杉の枝々から、血が流れ出ていたのだ。
集まった人々は皆、真っ赤に染まって帰っていった。
このような不思議なこともあるのかと、上下の者共、囁いていた所、ある夜女の声で、
数百人ほども踊る音がした。
『これを聞けば、本山はまた本山になる』
と歌っていた。その夜は月明かりがあったのに、踊っている者達の姿は全く見えなかった。
その次の夜、2・3千人の声にて鬨の声が上がり、大石大木を崩す音がした。すわ!敵が寄せてきたか!
城内の上下の者たち、大いに騒いで城の外に出てみてみたが、人影すらなかった。
途方に暮れた本山の人々は、これはきっと天狗の仕業である、遠行寺において大般若経を真読あるべし、
ということになった。
やがて準備が整い、住持が真読を行うため、仏前に向かって勤行していると、どこからともなく、
大きな鼠が一匹、燈明の油注ぎの中に飛び込み油に浸り、そうして本堂の棟木に駆け上がり、身体を
擦りつけてまた走り下りて油に浸かり、再び棟木に擦りつけた。このような行為を行うこと、
百度あまりに及んだ。
204 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 22:06:40.53 ID:9r6Gn5yu
住持は不思議に思い、鼠の行動を目も離さず見守っていたが、鼠はまた来て、尻尾に火をつけ棟木に上がると、
たちまち火が付き猛火となった。
同宿の下部らは驚き騒いだが、住持は「これは、自滅の時が到来したのだ!経台を始め、寺の物一つも
持ちだしてはならない!このまま焼き捨てよ!」と言い、本尊の薬師如来だけは同宿に背負わせ、
寺の方を振り返ることもなく朝倉まで走った。
歴史と格式ある遠行寺はこれにて焼きつくされ、灰燼となった。
朝倉の宮の神主は、逃げてきた遠行寺の住持よりこれを聞いて驚き、
「これは只事ではない、当社の祟りなのだ!
それは何故かといえば、かつて、何のためだったかも解らないが、梅慶の下知によって、
この宮林の木を伐らせたことが会ったのだ。
この時私が出て、『神木を伐られるとは、一体どういうことでしょうか!?』と申し上げると、
梅慶殿は『これほど茂った林から、僅かばかりの木を伐ったからといって、どれ程の事があるものか。
それも神が惜しんでいるのではない、神人たちが私の心で惜しんでいるにすぎないのだ。
しかし、もし神が本当に惜しく思われたとしても、この梅慶はここの領主である、少しは
許してもらえるだろうよ。』と、大笑いされた。
なんと恐ろしいことであろうか。この宮林は大昔、斉明天皇の時代、当時の皇太子であった天智天皇、
そしてその弟君の清見原王子(後の天武天皇)が天皇の命により伐採したため、祟を受け、斉明帝は
間もなく崩御されたのである。
天子ですら宮林を伐採したために祟があったというのに、いわんや凡下の身である梅慶が、
奢侈のあまりに神木を伐るなど、どうして神意に背かないで済むだろうか。
なんと恐ろしいことだろう。」
と、語ったそうであるが、はたしてそれから間もなく、本山梅慶も死去したのだという。
(土佐物語)
本山城の奇異、という逸話である。
205 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 22:51:05.09 ID:vqvnAQxv
>>204
土佐は迷信深い地域なんだなぁ…
206 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 23:19:40.48 ID:EugR66oG
美少女は大切にしましょうというお話
207 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 02:21:42.76 ID:xrxrjIIm
美少女を射るなんてとんでもない
208 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 09:51:10.91 ID:o45zFqcb
祟りが回りくどい上にお城じゃ無くてお寺焼いちゃうとかちょっと
209 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 10:25:23.61 ID:dPgtRPnc
あの辺って、いまも民間に潜った陰陽の末裔がいなかったっけ?
210 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 10:47:46.18 ID:kWAbT5Np
阿波には忌部氏がいるが土佐はどうだろ
211 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 14:38:14.20 ID:8RQmEhTO
女装した元親さんとか
223 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/20(日) 12:18:30.11 ID:1ig2Tq6e
>>210
戦国時代の長宗我部家には芦田主馬太夫という陰陽師がいて、
現在もその流派が「いざなぎ流」と呼ばれてる。
本山梅慶入道(茂宗)といえば、その当時「土佐七雄」の中でも最も勢力が大きく、
「其器傑出して、偏に興立の志ありければ、近辺の金銀衣食を与へて是を懐け、諸士に賄を厚くして
親みをなし、遂に人数を催して、土佐・吾川両郡に発向して、随はざるをば攻亡し、降を乞ふをば、
免して幕下になし、両郡く打摩け、猛威を振ふ事甚し」
と言われた傑物であり、長宗我部国親の成長を押さえつけた最大の障害でもあった。
永禄元年(原文ママ)六月十一日の早朝のこと、本山梅慶入道が庭の木々の梢を見ると、そこに
年の頃17・8程の美しい少女が、鮮やかな衣装を着て、松の梢に立ち、梅慶を見て
ニッコリと笑った。
梅慶はこれを見るや「誰か有る!弓を持って来い!」と声を上げ、若侍が何事かと急いで弓矢を揃えて
渡すと、梅慶弓を構えてその少女を狙う。が、少女の姿はかき消すように消え、虚空にただ笑う声が響き、
それは城に程近い、朝倉の宮の方へと消えていった。
4.5日ばかり後、城の大手に植えてあった杉の大木の根から火が燃え出た。
見る内に数百本に燃え付いて、黒煙が天を覆った。
人々は驚き、「水だ!熊手だ!」と騒いで近づいてみると、それは火ではなかった。なんと、
杉の枝々から、血が流れ出ていたのだ。
集まった人々は皆、真っ赤に染まって帰っていった。
このような不思議なこともあるのかと、上下の者共、囁いていた所、ある夜女の声で、
数百人ほども踊る音がした。
『これを聞けば、本山はまた本山になる』
と歌っていた。その夜は月明かりがあったのに、踊っている者達の姿は全く見えなかった。
その次の夜、2・3千人の声にて鬨の声が上がり、大石大木を崩す音がした。すわ!敵が寄せてきたか!
城内の上下の者たち、大いに騒いで城の外に出てみてみたが、人影すらなかった。
途方に暮れた本山の人々は、これはきっと天狗の仕業である、遠行寺において大般若経を真読あるべし、
ということになった。
やがて準備が整い、住持が真読を行うため、仏前に向かって勤行していると、どこからともなく、
大きな鼠が一匹、燈明の油注ぎの中に飛び込み油に浸り、そうして本堂の棟木に駆け上がり、身体を
擦りつけてまた走り下りて油に浸かり、再び棟木に擦りつけた。このような行為を行うこと、
百度あまりに及んだ。
204 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 22:06:40.53 ID:9r6Gn5yu
住持は不思議に思い、鼠の行動を目も離さず見守っていたが、鼠はまた来て、尻尾に火をつけ棟木に上がると、
たちまち火が付き猛火となった。
同宿の下部らは驚き騒いだが、住持は「これは、自滅の時が到来したのだ!経台を始め、寺の物一つも
持ちだしてはならない!このまま焼き捨てよ!」と言い、本尊の薬師如来だけは同宿に背負わせ、
寺の方を振り返ることもなく朝倉まで走った。
歴史と格式ある遠行寺はこれにて焼きつくされ、灰燼となった。
朝倉の宮の神主は、逃げてきた遠行寺の住持よりこれを聞いて驚き、
「これは只事ではない、当社の祟りなのだ!
それは何故かといえば、かつて、何のためだったかも解らないが、梅慶の下知によって、
この宮林の木を伐らせたことが会ったのだ。
この時私が出て、『神木を伐られるとは、一体どういうことでしょうか!?』と申し上げると、
梅慶殿は『これほど茂った林から、僅かばかりの木を伐ったからといって、どれ程の事があるものか。
それも神が惜しんでいるのではない、神人たちが私の心で惜しんでいるにすぎないのだ。
しかし、もし神が本当に惜しく思われたとしても、この梅慶はここの領主である、少しは
許してもらえるだろうよ。』と、大笑いされた。
なんと恐ろしいことであろうか。この宮林は大昔、斉明天皇の時代、当時の皇太子であった天智天皇、
そしてその弟君の清見原王子(後の天武天皇)が天皇の命により伐採したため、祟を受け、斉明帝は
間もなく崩御されたのである。
天子ですら宮林を伐採したために祟があったというのに、いわんや凡下の身である梅慶が、
奢侈のあまりに神木を伐るなど、どうして神意に背かないで済むだろうか。
なんと恐ろしいことだろう。」
と、語ったそうであるが、はたしてそれから間もなく、本山梅慶も死去したのだという。
(土佐物語)
本山城の奇異、という逸話である。
205 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 22:51:05.09 ID:vqvnAQxv
>>204
土佐は迷信深い地域なんだなぁ…
206 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/18(金) 23:19:40.48 ID:EugR66oG
美少女は大切にしましょうというお話
207 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 02:21:42.76 ID:xrxrjIIm
美少女を射るなんてとんでもない
208 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 09:51:10.91 ID:o45zFqcb
祟りが回りくどい上にお城じゃ無くてお寺焼いちゃうとかちょっと
209 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 10:25:23.61 ID:dPgtRPnc
あの辺って、いまも民間に潜った陰陽の末裔がいなかったっけ?
210 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 10:47:46.18 ID:kWAbT5Np
阿波には忌部氏がいるが土佐はどうだろ
211 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/19(土) 14:38:14.20 ID:8RQmEhTO
女装した元親さんとか
223 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/20(日) 12:18:30.11 ID:1ig2Tq6e
>>210
戦国時代の長宗我部家には芦田主馬太夫という陰陽師がいて、
現在もその流派が「いざなぎ流」と呼ばれてる。
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