146 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/05/03(月) 16:53:05.12 ID:xtvZpTjR
池田輝政様の御逝去の時、武蔵様(池田利隆)は江戸に在った。
帰国のための御暇を得る時分であったため、武蔵様にはこの事を申し上げず、お聞き無きように、と
御老中の内意であったため、御暇が出た後にお聞きになり、これへの御愁傷は大方成らないものであった。
直ぐに帰国の途につき、成宮にて尾張大納言殿(徳川義直)より、成瀬隼人正が御使として出られ、
その他にも御家来衆が武蔵様を迎えるために御出になった。
武蔵様の御愁傷の様子を隼人正は見て
「左様に御愁傷されていては、幼少の御舎弟たちを、今後お取り立てなさることも出来ません。
御酒を参らせられますように。」
と、御酒を乞い、先ず自分が中椀にて二つばかり呑み、武蔵様へ進上した。武蔵様が無理に呑まれた時、
「そろそろ潮時が良いでしょう。早く御船に召してください。」
と言って、実は未だ潮時の前であったのだが、御船を召された。しかし潮時前であったので
船が出されぬままであったのを、隼人正は股立を高く取り自身海に飛び込み、武蔵様が召した船を
押し出した。隼人正がこのような体であったので、他の尾張家の諸士も各々海に飛び込み船を押した。
これにより船は浮き出た。
池田輝政公の御妹は浅野紀伊守(幸長)の室であり、また尾張殿は紀伊守の聟君であった。
然れば、尾張殿の御内室は武州様の姪子である。それ故に、尾張家はこのように、武蔵様に対して
御入魂であったのである。
「烈公間話」
池田輝政様の御逝去の時、武蔵様(池田利隆)は江戸に在った。
帰国のための御暇を得る時分であったため、武蔵様にはこの事を申し上げず、お聞き無きように、と
御老中の内意であったため、御暇が出た後にお聞きになり、これへの御愁傷は大方成らないものであった。
直ぐに帰国の途につき、成宮にて尾張大納言殿(徳川義直)より、成瀬隼人正が御使として出られ、
その他にも御家来衆が武蔵様を迎えるために御出になった。
武蔵様の御愁傷の様子を隼人正は見て
「左様に御愁傷されていては、幼少の御舎弟たちを、今後お取り立てなさることも出来ません。
御酒を参らせられますように。」
と、御酒を乞い、先ず自分が中椀にて二つばかり呑み、武蔵様へ進上した。武蔵様が無理に呑まれた時、
「そろそろ潮時が良いでしょう。早く御船に召してください。」
と言って、実は未だ潮時の前であったのだが、御船を召された。しかし潮時前であったので
船が出されぬままであったのを、隼人正は股立を高く取り自身海に飛び込み、武蔵様が召した船を
押し出した。隼人正がこのような体であったので、他の尾張家の諸士も各々海に飛び込み船を押した。
これにより船は浮き出た。
池田輝政公の御妹は浅野紀伊守(幸長)の室であり、また尾張殿は紀伊守の聟君であった。
然れば、尾張殿の御内室は武州様の姪子である。それ故に、尾張家はこのように、武蔵様に対して
御入魂であったのである。
「烈公間話」
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