789 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/11/15(土) 19:20:23.83 ID:rdZeeh9k
美作の毛利方の城・高田城は、、尼子再興軍と結んだ同国の蘆田、三浦といった国人に攻め立てられ、
毛利は香川光景を美作守とし、大将として新たに派遣した。
蘆田、三浦らは宇喜多和泉守(直家)にも支援を受け毎日のように城下まで攻めこみ、度々足軽の迫合が
あった。この状況に高田城内も動揺し、城の二の丸に熊野入道という者があったが、彼は元来出雲の者で、
尼子に志を通じて、兵糧蔵に火を掛けて敵陣へと立ち退いた。これにより城兵は、殊の外騒動した。
そんな中、城中に佐伯七郎二郎という、大力で知勇優れた者があった。かつて尼子が月山富田城に
籠城していた折、山中鹿之助が自分の下に付けたいと懇望し、妹を嫁がせたほど評価していた人物であった。
そして今、尼子再興の時節であるため、彼が再興軍に志を通じることもあると香川光景は疑い、
佐伯の下僕で、12,3歳ばかりの者を近づけ、折々酒食などを与えよく懐け、その後、様々なことを
尋ねてみると、この下僕は言った。
「三の曲輪の懸出の雪隠の下より、文を持って通う者が居ます。」
香川はさてこそと思い、宗像三郎左衛門、江戸三郎右衛門などに下知して、
かの雪隠の周りに伏兵を置いて待ち受けていた所に、敵が一人忍びきたのを、たちまち絡め取って
持っていた文を見ると、それは尼子方の蘆田五郎太郎の文であった。
これによって佐伯の逆意紛れ無しとなったがしかし彼は優れた力量の持ち主であったので、
たやすく討ち果たすというわけにはいかず、各々詮議して、先ず矢倉の普請を言いつけ
佐伯に奉行させて、その虚を窺って斬り殺すべしとし、討ち手の者達に言いつけたが、
佐伯は以ての外に用心していて少しも油断の体がなく、討ち手の者達は隙を窺うことも出来なかった。
ここで、香川光景の次男・兵部大輔春継が普請場に出て、佐伯とともに矢倉で工匠の働きを監督していたが、
佐伯の気が緩んだ所を見計らい、抜き打ちに、眉間を二刀打った。
佐伯、とっさに矢倉より飛び降りたが、痛手を負っていたためそのまま倒れた。しかしそれでも
刀を抜こうとしていた所を、兵部大輔が続けて飛び降り、その腕を切り落としたため、佐伯は
刀を抜くことも出来ず討たれた。
品川市右衛門はこの時離れた場所に居たが、この様子を見て走り来て、佐伯が倒れた所を斬りつけた。
(芸侯三家誌)
尼子に通じた佐伯七郎二郎を謀殺した折の逸話である。
美作の毛利方の城・高田城は、、尼子再興軍と結んだ同国の蘆田、三浦といった国人に攻め立てられ、
毛利は香川光景を美作守とし、大将として新たに派遣した。
蘆田、三浦らは宇喜多和泉守(直家)にも支援を受け毎日のように城下まで攻めこみ、度々足軽の迫合が
あった。この状況に高田城内も動揺し、城の二の丸に熊野入道という者があったが、彼は元来出雲の者で、
尼子に志を通じて、兵糧蔵に火を掛けて敵陣へと立ち退いた。これにより城兵は、殊の外騒動した。
そんな中、城中に佐伯七郎二郎という、大力で知勇優れた者があった。かつて尼子が月山富田城に
籠城していた折、山中鹿之助が自分の下に付けたいと懇望し、妹を嫁がせたほど評価していた人物であった。
そして今、尼子再興の時節であるため、彼が再興軍に志を通じることもあると香川光景は疑い、
佐伯の下僕で、12,3歳ばかりの者を近づけ、折々酒食などを与えよく懐け、その後、様々なことを
尋ねてみると、この下僕は言った。
「三の曲輪の懸出の雪隠の下より、文を持って通う者が居ます。」
香川はさてこそと思い、宗像三郎左衛門、江戸三郎右衛門などに下知して、
かの雪隠の周りに伏兵を置いて待ち受けていた所に、敵が一人忍びきたのを、たちまち絡め取って
持っていた文を見ると、それは尼子方の蘆田五郎太郎の文であった。
これによって佐伯の逆意紛れ無しとなったがしかし彼は優れた力量の持ち主であったので、
たやすく討ち果たすというわけにはいかず、各々詮議して、先ず矢倉の普請を言いつけ
佐伯に奉行させて、その虚を窺って斬り殺すべしとし、討ち手の者達に言いつけたが、
佐伯は以ての外に用心していて少しも油断の体がなく、討ち手の者達は隙を窺うことも出来なかった。
ここで、香川光景の次男・兵部大輔春継が普請場に出て、佐伯とともに矢倉で工匠の働きを監督していたが、
佐伯の気が緩んだ所を見計らい、抜き打ちに、眉間を二刀打った。
佐伯、とっさに矢倉より飛び降りたが、痛手を負っていたためそのまま倒れた。しかしそれでも
刀を抜こうとしていた所を、兵部大輔が続けて飛び降り、その腕を切り落としたため、佐伯は
刀を抜くことも出来ず討たれた。
品川市右衛門はこの時離れた場所に居たが、この様子を見て走り来て、佐伯が倒れた所を斬りつけた。
(芸侯三家誌)
尼子に通じた佐伯七郎二郎を謀殺した折の逸話である。
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