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火入れと香炉の道理

2014年10月05日 18:45

975 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/10/04(土) 19:50:49.38 ID:mYD4KyOV
片桐石見守(貞昌)は、茶事において衆に優れた人物であった。
懐石も上手であり、軽い料理を出しても、その風味、至極宜しきものであった。
諸人は片桐を真似て料理してみたが、その風味は片桐の作ったものにはなかなか及ばなかった。

そこである人が片桐に、料理の仕方を問うた。これに片桐は答えて

「料理は、軽い料理で風味を良くしようと思うのであれば、まず重き料理をこしらえて、
その重い内から出た軽き物は風味の良いものとなるのです。最初から軽くこしらえては
粗末になって客には出されません。」

またある時、人が片桐の煙草盆の火入れを見て、驚いて言った
「これは唐物ではありませんか。火入れにするには惜しい品です。香炉に用いるのが然るべきでしょう」

片桐これを聞くと
「茶道の趣とはこう云う所に有るのです。この器を火入れに用いればこそ、人に賞せられますが、
香炉に用いてしまえば下の香炉に過ぎません。上の火入れを捨てて下の香炉に用いるというのは、
道具を殺して使うと言うものです。

これは器物に限りません。何であっても、其の物を生かして使うことが肝要なのです。
人を使うにも、用いる人の上手下手によって、愚者も役に立ち、賢者も役に立たなくなる。
万事、火入れと香炉の道理ですよ。」
(明良洪範)

片桐且元の甥で高名な茶人である片桐貞昌の逸話である。




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