武勇実談の事

2016年07月29日 14:12

928 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/07/29(金) 00:42:50.57 ID:qYW8xHbD
武勇実談の事

戦国が治まり太平に成りました頃まで長生された老人が、
〔此の老人の名を聞いたが忘れてしまった。問い質したうえで追って申し伝えたい、と川尻氏は言った。〕
集会にでて雑談していたとき、年若い輩が戦場に出て功をなしたいとの事を狂い語ると、
かの老人は笑った。

「それは大きな了見違い違いじゃ。
我らは数度戦場に出たが、なかなか恐ろしくて、かねての心がけはできないものじゃ。
我らはある日の戦で、伏勢の中に組み入れられて草が高い林の中に埋伏しておったが、
その時の心に、
『ぜひとも、敵よこの道を過ぎてくれ...』と思っておった。
遥かに馬煙が見えた頃には、いよいよ恐ろしくなり、
『今度の合戦が済みましたら武士を辞めましょう。』
とまで思うが、
敵兵が通り過ぎる頃に合図が出て打ち出るに至ると、さほど恐ろしく思わず、
味方の馬に踏まれたり、打ち者に当たったりして討ち死の数に加わる者もあるが、
その期に至っては何とも思わん。
籠城にも数度行ったが、このときも再び武士にはなるものかと思い詰めた事もあったが、
戦が散った後は、また辞めようなどという気は失せるんじゃ。」

と語ったという。

そうでもあろうという実情の物語だと、聞いたままに記した。
かの老人の物語に
「我が臆した心底だから、こうなのじゃろうと思われるだろうが、
そのときの同輩の者はいずれも同様なのじゃ。」
と話したという。

(耳袋)

いかにもなお話ですね




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