937 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/02/14(日) 16:41:25.64 ID:tAp7OMu6
主君の御前において、傍輩を取りなすことは、品々あるべきであるとして、ある人が言ったことに、
大和大納言(豊臣秀長)殿の御咄の法師が出頭した時、大納言殿が「今朝はどうして遅れてきたのか」
と仰られた。「御普請場の見物に参っておりました。」と申し上げると、
「法師の身にては相応しくない見所である。ところで堀石垣はどれほど出来ているか、奉行の侍どもは
精を出して仕事をしているか。」とお尋ねになった
「何れも、殊の外精を出されており、御普請は順調に進んでいるように見えました。」と申し上げると
「さもあらん。誰にも怠りなど無い。されど、その中でも殊に精を出していると見える者は無いか?
ありのままに申せ。」
そう仰せに成られた。これに「仰せのごとく。誰も怠り無く見えましたが、中でも抜きん出て諸人に
下知し、現場を飛び回り、骨を折っているように見える者が居りました。その人物について、何者かを
尋ねたのですが、つい今しがた、その名も名字もはたと忘れてしまいました。」
「誰であるか、思い出せ。」と仰せに成られると、その時法師はうち案じて
「名字は魚の名であったはずなのですが、忘れました。」
「鈴木か、益田か、魚住か。」と仰せになったが、「いや、それではありませんでした。」
「さては鯰江か」と仰せになった時、「その鯰江にて候!」と申し上げると、殊の外御気色良く
「総じて、あの鯰絵勘右衛門は慥かに用を成す人物である。」と評判も上がり、その後御加増を
給わったという。
(備前老人物語)
主君の御前において、傍輩を取りなすことは、品々あるべきであるとして、ある人が言ったことに、
大和大納言(豊臣秀長)殿の御咄の法師が出頭した時、大納言殿が「今朝はどうして遅れてきたのか」
と仰られた。「御普請場の見物に参っておりました。」と申し上げると、
「法師の身にては相応しくない見所である。ところで堀石垣はどれほど出来ているか、奉行の侍どもは
精を出して仕事をしているか。」とお尋ねになった
「何れも、殊の外精を出されており、御普請は順調に進んでいるように見えました。」と申し上げると
「さもあらん。誰にも怠りなど無い。されど、その中でも殊に精を出していると見える者は無いか?
ありのままに申せ。」
そう仰せに成られた。これに「仰せのごとく。誰も怠り無く見えましたが、中でも抜きん出て諸人に
下知し、現場を飛び回り、骨を折っているように見える者が居りました。その人物について、何者かを
尋ねたのですが、つい今しがた、その名も名字もはたと忘れてしまいました。」
「誰であるか、思い出せ。」と仰せに成られると、その時法師はうち案じて
「名字は魚の名であったはずなのですが、忘れました。」
「鈴木か、益田か、魚住か。」と仰せになったが、「いや、それではありませんでした。」
「さては鯰江か」と仰せになった時、「その鯰江にて候!」と申し上げると、殊の外御気色良く
「総じて、あの鯰絵勘右衛門は慥かに用を成す人物である。」と評判も上がり、その後御加増を
給わったという。
(備前老人物語)
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