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家の宝を焼いたこと

2018年05月19日 10:30

915 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/18(金) 22:39:50.44 ID:xeERsPD+
天文21年のこと。水谷蟠龍斎(正村)の居城の台所に火事が起き、危うく焼け落ちる所を、
家中の者達走り来てどうにか消火をした。

この事より、火事への対策として、城の東の藪の中に五間の蔵を建て、そのうち二間は
番所とし、残りの三間の中に、先祖代々の功名の感状数通、そして所領加増の書付などを
はじめとして、家重代の諸道具、その他高値の諸道具などをここに籠め置いた。
そして家臣の根岸兵庫、河上勘解由の両人を頭として足軽20人を付け、昼夜番をさせた。
殊に火を用いること、固く禁止させた。

そうするうちに、かの番頭両人はこのように話し合った
「この番所は、人の通わぬ場所にある。であれば、実に良き博打打ち所ではないか!」
そして忍び忍びに相手を誘い、昼夜を分かたず博打を打った。

その時はみな博打に打ち疲れ、さらに酒に酔い寝てしまった。この隙に火鉢より火事が起きた。
かの者達は、「火事だ!火事だ!」と叫んで逃げた。
家中の者達かけつけ、蔵の中の物を取り出そうとしたが、10のうち1つも出すこと成らず、
殆どが焼失した。

その後、家老たちはこの番頭2名を探し出し、死罪にすべきであると水谷蟠龍斎に申し上げた。
しかし蟠龍斎はこう言った

「家の宝を焼いて損をした上に、大切な譜代の臣二人を殺すというのは、重ね重ねの
費えである。
前に台所の家事があった故、その予防のため随分念を入れたのに焼失したという事は、
もはやそういう運命の時節であったのだろう。全く彼らの咎ではない。
早々に召し返し、元のように仕えさせよ。

彼らは心こそ阿呆なのであろうが、臆病ではない。
万一の時、役に立つのは譜代である。
さあさあ、早く召し返せ。」

そう仰せ付けられたのである。

(水谷蟠龍記)

正直めちゃめちゃ甘いとは思いますが、確かにいいお殿様ですね。



916 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/18(金) 23:53:55.92 ID:yTxT8aCv
重要書類だの、非常用の高価な品々を焼失させて、許すって、心広すぎる。
しかし、これ、許してもらっても針の筵だろ。同僚からの冷たい目にどれだけ耐えられるか。

917 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/19(土) 00:15:53.43 ID:D+THEoGj
水谷さん名君だな。ちと甘いかもしれんが。

919 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/19(土) 08:44:45.92 ID:shzG6qdW
>>915
地方だから緩いのかと思ったら陸奥じゃあブラック893がいるし品格なんだろうな

927 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/19(土) 14:17:51.34 ID:lbvMQOtY
>>915
>その予防のため随分念を入れたのに焼失したという事は、
>もはやそういう運命の時節であったのだろう。全く彼らの咎ではない。
悟ってる…

939 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/21(月) 19:46:37.70 ID:DLAIiPg8
>>915
甘いというより徹底した合理主義な印象を受けた。
戦国の世では書状や感状より忠臣が何より価値ありという判断力よ。
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殿は不思議なるお生まれ

2018年05月18日 21:18

903 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/17(木) 20:08:26.40 ID:l4//1zVI
天文21年の正月のこと。
この頃、水谷蟠龍斎(正村)の領内では、正月に村々の百姓の大人衆が城へ御礼に上がることが
嘉例であった。彼らには供餅一重、並びに酒食が出され、終日の御馳走であった。

この時、百姓たちがこのように言った
「今年は餅が、一回り小さいようですな。」

これを聞いた蟠龍斎は
「餅の大小はお前達次第だ。年貢さえ多く上がってきたならば、餅を富士の山ほどにして
取らせるぞ。」

百姓たちはこれに
「我らは下郎ですから、上を恐れずむさ苦しい事を申してしまいます。それを怒っても当然なのに、
殿は狂を散じる御意をなされ、却ってご機嫌よろしくされています。殿は不思議なるお生まれ
ですな。」

そう申すと、お互い大いに笑ったとのことである。

(水谷蟠龍記)

「場をわきまえないでこんなぶっちゃけたこと言っても怒らず、それに乗っかってきてニコニコしてるなんて、お殿様変わった人だねえ」
みたいな感じでしょうか



904 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/17(木) 20:55:26.16 ID:Hj+5d5xo
人間ができてるなぁw

905 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/17(木) 21:17:37.60 ID:UpvLuhWb
これ、いい話かなあw
収入の多寡で、供応の内容が変わるって、けっこう露骨だと思うが。

906 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/17(木) 22:16:53.97 ID:phZG3KKg
>>905
ちゃんと読んでるかい?
百姓に負けてるよ

水谷蟠龍斎、家重代の刀剣を売る

2018年05月16日 21:36

889 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/15(火) 22:13:41.40 ID:bS8mkxlx
水谷蟠龍斎(正村)が二十歳の年(天文11年)、領内の作柄が非常に悪かった。
この事を聞いた蟠龍斎は、「今年の年貢は通年の三分の一にせよ」と命じた。

家老たちはこれを聞いて猛反対した「それでは家中の者達の生活が成り立ちません。」
すると蟠龍斎は、家重代の刀六腰を取り出し
「これを質に置け」と仰せになった。

そこでこの事を徳者(裕福な町人)に相談すると、彼は
「惣じて質の物は、直に買い取る価格の半分が相場です。ですのでこれらを質に入れても
大した額には成らないでしょう」と言う。

すると蟠龍斎は即座に言った「では買い切りに致せ。」

家老たちは強く諫言した
「お家の、重代永代たる刀を失う事を、一体いかなる分別にて行うのでしょうか?」

蟠龍斎は答えた
「刀千腰にも代えがたいのが譜代の者達である。その彼らを助ける目的なのだから、
何も問題はない。
例えば、私が刀を千腰挿して敵に向かっても、一人ではどうにも出来ない。
しかし、例え少人数であっても家中上下の心を合わせれば、敵を抑えることが出来る。
であれば、家中こそが我家の重代ではないか。」

この言葉に家老たちも一言もなく、蟠龍斎は刀を売ってその代金を家中上下に配った。

次の年は大変な豊作であった。
蟠龍斎領内の百姓たちは一同に心を合わせ、前年に売られた水谷家重代の刀を買い戻し、
これを蟠龍斎に差し上げた。

この事に、蟠龍斎は涙を流して言った
「君に明有れば臣に忠有りと言うが、古人のこの言葉を今心得ることが出来た。
私が欲心から離れて家重代の刀を売り民を助けたのは、君の心明らかという事に、
少しは似ていたのだろう。また賤しき百姓とはいいながら、その恩を知り、今年少しばかり
耕作が良かったからと言って買い戻し、私に献上するというのは、臣下の忠心という
ものではないか。誠に聖人の言葉に偽りは無いものだ。」

そして

「今年度の年貢のうち、三分の一を免除するように。」と命じた。

百姓たちは驚き、一同に登城して「そのようなつもりで献上したのでは有りません」と、
様々にこれを撤回するよう説得したが、「君子に二言はない」と、終に免除となった。
このあまりの忝なさに、百姓たちも涙を流して城より退出したという。

(水谷蟠龍記)



890 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/15(火) 22:25:10.59 ID:Br8B8qxA
イイハナシダナー

891 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/15(火) 22:58:52.10 ID:WTVGDZaX
豊作=米価下落って思ってしまうのは現代人の感覚なのかな

892 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/15(火) 23:35:36.79 ID:PG1AXGp+
米を作る=通貨を作るみたいな時代だしね

893 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 00:21:44.95 ID:DdjCXKqO
日本昔ばなしにこの話があっても違和感ないレベル

894 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 01:08:38.87 ID:G8KIY6Xp
せっかく買い戻してくれた百姓たちを賤しきって言っちゃうのはちょっと失礼な気が

895 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 03:08:08.98 ID:s7+ZKaJ9
>>899
>>898でどこがいい話なんだよと書き込みたかったが
続き読んで伏線かよと

いい話でした
ありがとうございます

896 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 03:09:56.78 ID:s7+ZKaJ9
>>894
今の時代の賤しきとは違う意味だと思う
我が家でも代々「お百姓さん」とは言わず「百姓が作った米は喋らずによく味わって噛み締めて食べよ」と言われてて
あくまでも百姓は百姓と言う感覚
今の時代は皆、平民になってお百姓さんになってしまったが

897 名前:人間七七四年[] 投稿日:2018/05/16(水) 05:52:09.82 ID:+o1rA7gK
>>895
>>898,>>899に期待

898 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 07:07:56.71 ID:MlSBrpYu
>>894
ここは「一般には賤しき百姓などと言われているが」程度の意味でいいと思う

899 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 10:37:35.98 ID:l3hhkPYC
カーストかよ

900 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 11:08:37.71 ID:7w2utxgu
これ、商人の方も、資金の融通をしたつもりで転売しなかったのだろうな。

901 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/16(水) 13:20:03.03 ID:ZK9AFFT7
>>889
イイハナシダナー(´;ω;`)

>水谷蟠龍斎(正村)が二十歳の年
!?( ゚Д゚)

水谷蟠龍斎は生まれる前からすごかった

2018年05月14日 17:25

888 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/13(日) 19:15:43.74 ID:+8Eg9vkp
常陸国久下田の城主、水谷蟠龍斎(正村)は、その誕生前より不思議の有った人であった。
大永3年正月17日の子の刻に、御老母の夢に80あまりの老僧が、額より光を放ちながら現れ
『汝に宝を授ける』
と、口の中に玉を入れた。この玉は次第に腹中へと落ち、腹の中で膨れる感覚を覚えた所で
夢から覚めた。この月より御懐妊され、翌年正月17日の子の刻に御誕生あった。
月も日も時も、あの夢と同じであり、誠に希有なる事であった。
以上、胎内に13ヶ月宿られていた。

そして左の目に、瞳が2つ有った。これは御老母が常々千手観音を信仰し、毎月17日の早朝に
身を清め精進し、不問品を三十返づつ読誦されており、これ故に定めて観音の御利生の御子で
あるのだろうと、人はみな申した。

彼は誕生以後、赤子のうちに終に泣くことは無く、7歳より好んで弓馬兵法を習い、
8歳で師匠に劣らぬほどになった、
9歳にて法華を習い、毎日一巻づつ読誦した。
10歳にて万事の理非を弁じられたことは、尋常の人に優れたものであった。
11歳(天文元年)の時、中間二人が頻りと口論しているのを聞き、御裁許なされた。これは
中々年寄衆も及ばないものであった。
12歳より馬を習い、13,4,5の時分には師匠より優れた腕前になっていた。
惣じて、何によらず諸芸に器用であった。

(水谷蟠龍記)

結城四天王の一人、水谷蟠龍斎は生まれる前からすごかった、というお話。