625 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/07/06(土) 20:12:30.51 ID:ARBe2bS+
前田利常公の時代のこと
山本瀬兵衛は御用によって、小松から金沢に召されたのだが、いつもどんな用であっても、
召された時には軽いものを利常公に献上していたのに、この時はうっかり忘れて来てしまい、
台所奉行の
佐藤久右衛門の所に行き
「何でもいいので、手頃なものが有れば貸して頂けないだろうか?後で同じ物をそろえて返すので。」
と聞くと、「今朝方どこかからサザエが一折来ていたが」とのことなので、それを借りた。
ところが、その時期はちょうど夏であったため、サザエのうち1つか2つ、臭うものが有り、
「主に腐ったものを贈るなどあるものか!」
と、受け取った利常な以ての外に機嫌が悪くなり、そのため右筆の
中村久越殿が山本の所に
やって来て、彼を散々に叱りつけ、この事を聞かせると、山本はしかし
「これは近頃迷惑なことです。私は急に召し出されたため、献上品を忘れてきてしまい、
台所に行って
佐藤久右衛門殿に『何かあったら貸してほしい。後で揃えてお返しする。』と言って、
サザエを借りたのですが、その時私は焦っていて、それをろくに確認しませんでした。
そのため、少し悪いものがあったのでしょう。」
と言い、この事が
中村久越から申し上げられると利常は
「それが申し訳になるものか!それは田舎たわけの披露というものだ!
佐藤久右衛門は田舎ぶりの抜けない人間で、それ故に信頼していたのに、久右衛門は
親や子供には知らないが、人に物の用に立つものを貸さないような者であったのか!
そのような人物を重宝して台所奉行に置いていればそれは、前田家全体が田舎一門と
見られてしまう。それはたわけの至極である!早々に調査をせよ!」
との御意であったので、次の日
山本瀬兵衛が、再びサザエを
佐藤久右衛門から取り寄せさせた所、
今度は初めのものより大きく新鮮で、見事なものをくれ、しかも目録に印まで押して遣わされた。
これを見た
前田利常は
「久右衛門は
山本瀬兵衛の事をちゃんと心に懸けておるわ」
とお笑いに成り、
中村久越は山本に「昨日はお叱りになったのに、今日のサザエは見事だと、
お褒めになっていたよ」と伝えて笑われた。
この事は私(著者)の亡父である、
山本瀬兵衛が話したことである。
(微妙公夜話)
626 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/07/06(土) 22:26:04.83 ID:vX30mZNK
>>625
献上品を借り物で済ましてるのに、そのこと自体は怒らないんだな
627 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/07/07(日) 09:32:25.66 ID:5K76/cB6
あ゛あ゛あ゛あ゛面倒くせぇwwww
昭和時代の盆暮れの挨拶よりも面倒くせえよよよよよ
628 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/07/07(日) 17:51:09.48 ID:5PR2IANo
「武士の家計簿」でもやれ挨拶だの祝いだのお礼だのって金かかってたな
あれも加賀藩だったけど
630 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/07/07(日) 19:21:44.33 ID:4dLEp5fA
>>628
映画ては演出かもしれないけど
膨大な借金か抱えて家財道具売り払っても残り十年返済で事を納めたんだよな
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