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金森宗和と加藤某

2022年05月20日 16:23

192 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/05/19(木) 23:13:26.62 ID:ra+2wtGb
槐記享保十二年十月十五日の記事から 金森宗和と加藤某

中井主水常覚が常修院殿(慈胤法親王)にこうお話し申し上げた。「昔、加藤越中守は武威天下に隠れなき者だったが、茶の湯のことはさほど世に聞こえておりませんでした。ある時、金森宗和に茶の湯を所望して、甚だ賞嘆して、『宗和の茶は名人と言うべきである。私は茶の湯を所望したのではない。その気のひっぱるところを見たいと欲したゆえである。ぬっと炭取を持って来られたところから一礼されるところまで、隙あらば鑓を入れようと狙っていたが、気が満ちていて一毛の入る隙もなく、ついに鑓を入れることが出来なかった』と語ったそうです。誠にお上手であったと承り及んでいます」こう常覚が常修院殿に語ると、「誠にそうであったろう」と常修院殿は大いに嬉しがられた。

「ひっぱる」「ぬっと」は原文ママ。面白い表現なので訳さずそのままで。

加藤越中守には適当する人物がいないので、名前か官位に誤りがあるのは確か。加藤越中守は肥前守としてある異本もあるそうで、岩波の日本古典文学大系の近世随想集では、肥前守は肥後守の誤りで清正のことかとしている。清正と宗和では年齢がかなり離れているので、あるいは清正と宗和の父可重との話か。ウィキペディアの宗和の項では加藤泰興との話としているが、泰興は出羽守で、出典も書かれていない。



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