朝比奈弥太郎と異形の大男と箱根の地獄・悪い話

2009年05月26日 00:05

677 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:27:56 ID:Dx721VtV
天正十年(1582)、甲斐、若御子における対陣から、ついに講和を成した徳川と北条。
両家はそれぞれに、講和の成立を祝う引出物を持たせた使者を出した。
北条家からは石巻隼人佐、河尻下野守が、徳川家においては朝比奈弥太郎に
その役目が命ぜられた。

さて朝比奈弥太郎、北条氏政に対面し引出物を進上。氏政から褒美の太刀を渡され
面目を施し、小田原から駿河へ帰る。この折、馬にて山を下る途中の日金堂という場所で
夕暮れとなった。

この場の物暗い木陰になっている道の傍らに、六七尺、というから、2メートル前後もある、
頭は剃っているが法師とも山伏とも見えない、異形の大男が立っていた。

色は黒く筋骨たくましく、片手には鉄の熊手棒を持ち、松明を掲げている。
朝比奈は思わず「そなたは何者か?」と問えば、「わたしはこの山の上、日金の辺りに
住んでいる者です。今日は人を迎えにここまで出てきたのです。どうかご不信に思われないように。」

そうしてこの異形の者は
「あなたが向かう先のほうから、こちらに向かって若い女が上がってきているはずです。
その者に出会いましたら『早く上がって来い、上で待っている』と言ってやってください。」
そう、伝言を頼んだ。

弥太郎は不思議に思いつつも先に進むと、下のほうから、年頃は十六七ばかりの少女が
上がってきた。暗くなったことを大変恐れている様子で、ゆっくりゆっくりと上がっていた。
弥太郎、この少女に先の男の言葉を伝え、その場を行き過ぎたが、どうにも釈然としない。
それでもしばらく進んでいると、突然山頂の方から叫び声が聞こえ、それに続いて
何かを打ち倒すような音がした。

弥太郎、不審には思ったものの、その後は又静まり返り何事も無かったので、そのまま山を下り
玉澤という場所まで来ると、そこでは人が多く集まり葬式をしており、丁度火葬の最中であった。
弥太郎、ふと馬を止め、集まっている者たちに「この死者は何者か?」と尋ねると、
「これは箱根山中の関守にて、半田と言う人の娘です。十七にて早死にしてしまったのを、
葬っているのです。」

それを聞いた弥太郎、驚いて
「本当か!?箱根の奥、また日金の傍にも地獄があると聞いたことがあるが、さては
さっき見た少女は、この死者の霊魂だったのか!道の傍らに居た異形の者は鬼に違いない!
何と怪しいものを見てしまったのか!」

この事は当時の関東、相模、伊豆、駿河などで大変話題になり、『朝比奈は鬼を見た。
女は地獄に落ちた』などと、人々、大いに語り合ったという。


…が、この話、弥太郎の勘違いなのである。
かの異形の者、実は日金の地蔵の、御堂守りの法師であった。
この法師、娘を麓の里においていたのだが、この日は娘が父の元へと帰る所であった。
法師は娘を出迎えに出ていたのである。
ところが娘、父と落ち合う前に山犬に会い、大声で叫んだ。そこに父である法師が駆けつけて
この山犬を打ち倒した。これが事の真相である。

しかしこの弥太郎の勘違いのおかげで、山中の関守の半田などは、「あの男が情けの無い
ひどい男なので娘が地獄に落ちた」などと地下の者たちから言われ、散々であったとか。

今でも伊豆などでは、「箱根や日金には地獄がある」と言われているそうである。

勘違いで半田さんに大迷惑をかけた挙句、変な伝説まで作ってしまったお話。





678 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 00:53:36 ID:ufXJv979
>>677
朝比奈泰勝かな
かなり面白いよねこの人

682 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 07:28:14 ID:m20GZzZv
>>677
ひどいとばっちりだw
昔は山の中にあの世があるとされてたらしいけどこの時代でもそんな意識はまだ残ってたんだな

686 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 13:15:04 ID:SdOCmy/R
朝比奈弥太郎で調べたら香川家家臣にもいるんだな
しかもかなりの猛者

689 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/25(月) 16:29:29 ID:IzL6dZ7Y
>>682
普通に考えればその時代、山姥や山の民とされる人々はまだ存在したはず。
山に住む農民と違う文化をもった者をまだ異形として認知していた人は多かったのかもな。


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