fc2ブログ

久武親直の讒言と吉良左京進親実の祟り

2009年07月05日 00:12

973 名前:八人みさきと久武親直 1/3[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:01:32 ID:0RBfpCEO
久武親信の話が出たので、奸臣と名高い弟・久武親直の話を。
あ、それにかこつけて怪談話するから苦手な人は逃げるようにw

1588年(天正十六年)、長宗我部元親は長年本拠としていた岡豊城から
新たな拠点として大高坂城(現・高知城)を築き、そちらに映ろうと考えていた。
これを機会に後継者問題も決着しようと、その普請が続く最中に評定を開き
後継ぎに千熊丸(後の長宗我部盛親)を据え、その正室に先年戸次川で討死した
長男信親の未亡人を娶らせるという方針を発表する。

これに反論したのが元親の婿であり甥にあたる吉良左京進親実である。
併せて、彼の同族にあたる比江山親興も反論に転じた。

親実>>『三男の孫次郎様(津野親忠)が健在なのに四男の千熊丸様を据えるのは
    長幼の序に反し御家の乱れとなりまする!!(#゚Д゚)』
親興>>『それに、兄の未亡人を正室に迎えるなどと…人倫の道に外れますぞ!!(;゚Д゚)』

その二人を制したのが、久武内蔵助親直である。実は親直、以前に仁淀川の畔で木材監督を
して居た際、その場に現れた親実を無視したことがあり、それに怒った親実から
頭に被った笠めがけて矢を打たれるという暴挙を受け、ずっと根に持っていた。

親直>>『御家の事は御家の頭領が決めるのが一番良いに決まってる、常識的に考えて。
    差し出口を挟んじゃねーよ鬱陶しい。(*>ヮ<)』
親実>>『あァ!?言うじゃねえか内蔵助!!御家の頭領が人道外れた真似をしてるのに、
    それを諫めないでどうするんだ。お追従いうとか言語道断だぞ!!』

元親は二人の口論を不興に思い、そのまま評定の席を立った。内蔵助はこれが
恨みを晴らす好機と見て、元親に親実の悪口雑言、あること無いことを讒言し続けた。
吉良親実が出仕停止、そして死を賜ったのはそれから間もなくの事だった。

親実>>『そうか、そうか。人の命運が尽きると、左前になって坂道が多くなるという。
    坂道で家が真っ直ぐに立つ道理がどこにあろう。長宗我部の家もあと五・六年じゃのう…。』

吉良左京進親実はそう言い残し、静かに自害して果てた。
親実の他に死を命じられたのは比江山親興・永吉飛騨守・宗安寺真西堂・吉良彦太夫
城内大守坊・日和田与三衛門・小島甚四郎・勝賀野次郎兵衛実信の八人。

比江山親興は家族六人を逃がしたのちに自害、家族達は長福寺の住職を頼って
逐電し、住職もまたこれを匿ったが…植田という村の者が報奨金に目が眩み
これを長宗我部家に訴え、まもなく六人の家族は皆殺しにされてしまった。

長福寺の住職は、親興の遺族が処刑される場で気違いの様に叫び狂った。

住職>>『この見物人の中に植田の村の者は居るか。あぁ、なんという人非人であろう!!
    殺されていく罪も無い者達が可哀想とは思わぬのか!!
    この恨み、末代まで忘れぬぞ!!m9っ;・`ω・´)』

住職はその場で切腹して果て、次いで親興の家族六人の首が飛んだ。
今でも、親興他七人が眠る地に植田の者が近づくと祟りがなすという。


974 名前:八人みさきと久武親直 2/3[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:12:01 ID:0RBfpCEO
さて、親実他八人が死んでしばらくしたある夜の事、仁淀川で渡守をしていた
常七は、川の向こう岸から大きな声で呼ばれ目を醒ました。

常七>>『ンっだよ面倒臭いな、こんな真夜中に…。』

愚痴を言いつつ向こう岸まで舟を漕ぎ、さぁどうぞと客人に言うと…。
確かに舟が軋み、何人かの者が乗り込む気配がしたのだが…姿が見えない。

勝賀野実信>>『はよう向こう岸にやってくれ。』

声がした。常七は顔面蒼白になり、魂も失せた様子で急いで岸を渡らせた。
そして、向こう岸に着くと…今度は確かに、舟から誰かが降りる気配がした。

勝賀野実信>>『此方は、吉良左京進様じゃ。大高坂に居る不義奸侫の輩に
       目に物を見せてやるとお越しになるところじゃ。帰りにも
       この舟を使うので宜しく頼むぞ。なお、不思議な話が大高坂から
       聞こえてくるであろうが、その方には何もお咎めは無い。安心して良いぞ…。』

姿の見えない八人の気配が去ると、常七は全力疾走で渡守小屋へ逃げ込んでいった。

…―それから間もなくの事…大高坂では奇妙な噂が続出するようになった。
比江山親興の屋敷に鬼火が出た、吉良親実の屋敷近くでは鉄炮のような
火の玉が飛び、当った者が頓死した、ets、ets…。
そんな最中、久武親直の屋敷でも奇妙な事が起こった。

親直の末子…まだ五・六歳だった少年が屋敷内で犬と遊んでいたところ、
邸内に植えられていた松の木の傍から五十路ほどの老女が現れ、その頭を撫でた。

老女>>『綺麗な若様じゃの…。』

次の瞬間、少年は大声で泣き喚き…そのままひっくり返って動かなくなった。
屋敷内は蜂の巣をつついたような大騒ぎになり、間もなく加治祈祷の為に
僧侶が呼ばれ、お経が唱えられたが…その最中、今まで微塵と動かなかった
少年が不意に起き上がって、狂った様に叫んだ。

少年>>『悪臣を生かして置いてたまるか!!奸臣は生かして還さんぞ!! (;゚Д゚)』
僧侶>>『 ! ? ( ・ ( , , ェ ) ・) 』

少年>>『悪臣を生かして置いてたまるか!!奸臣は生かして還さんぞ!! (;゚Д゚)』

僧侶は脂汗を流して一生懸命読経を続けたが、少年は狂った様に座敷をのたうち
廻って一向に正気へ戻らない。

少年>>『悪臣を生かして置いてたまるか!!奸臣は生かして還さんぞ!! (;゚Д゚)』

少年>>『悪臣を生かして置いてたまるか!!奸臣は生かして還さんぞ!! (;゚Д゚)』

とうとう、親直の末子…少年は這いずり回った挙句に死んでしまった。

975 名前:八人みさきと久武親直 3/3[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:22:39 ID:0RBfpCEO
流石の久武親直も、これには色を喪って恐れた。少年の葬儀と禍祓いを兼ね、
それから七日七晩祈祷を行わせて…七日目の夜が来た。

仏壇の前では、徳の高い僧侶が読経を続けていて…内蔵助は妻と共に
亡くなった末子の事を話し合っていた。妻の瞳からは涙がこぼれている。

そんなとき、隣の部屋から声がした。久武親直の嫡男、十二・三歳になる
男児の声に間違いなかった。

嫡男>>『南無阿弥陀仏』

いそいで親直夫婦が隣の部屋に行くと、嫡男は腹に短刀を突き刺して苦しんでいた。
慌てた親直、短刀を握ったほうの手を掴んで喚いた。

久武親直>>『なぜじゃ、どうしてこんなことをしてくれたッ!!(´;ω;`)』

すると、嫡男は一言…こう囁いた。

嫡男/吉良親実>>『元 親 公 の 御 諚 で 検 使 が 二 人 来 て 、
           詰 腹 を 切 ら さ れ た か ら で す 。 (il゚Д゚)』

その晩のうちに、嫡男は死に…二人の息子を失った久武親直の妻も発狂して死んでしまった。

久武親直の子は全部で八人あったそうだが、無事に育ったのは一人だけ。その子もまた、
長宗我部家滅亡後に親直と一緒に日向に逃げ、土佐に残ることはなかった。

長宗我部元親が大高坂城から浦戸へ逃げるように拠点を移したのは、三年後のことだったという。

そんな久武親直の、(背筋がゾっとするような気味とばつが)悪い話。
長尺ログ失礼しました。あと、怪談嫌いの人ゴメン。





976 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:35:06 ID:XPjETLdV
こええええええええええorz
でも面白かった!

978 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:36:28 ID:0RBfpCEO
973-974
補記・吉良親実らの亡霊八人はこの後も元親を怯えさせ、元親はとうとう
親実を木塚明神という神様として祀りなおした。
以後、この八人のことを『八人みさき』と呼び、恐れ敬うようになったとさ。

979 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 13:36:37 ID:u6iyPImS
戦国怖い話ですな
人の怨念という物は計り知れん

986 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 14:34:54 ID:xXhQWNVc
俺には、どうみても吉良親実たちの方が悪臣の様な気がするのだが…

987 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 15:12:23 ID:nk5gA0yM
讒言して八人を殺すように仕向けたという意味では、久武親直も悪臣だけどね。
でも、怨霊らもそこまでしなくてもとは思う。

↓:これくらい爽やかになれなかったものかと・・・
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-category-372.html

988 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/04(土) 15:20:06 ID:5o60DOOQ
本質としては、吉良ら門閥派と久武ら側近派の対立だろうから
どちらが善悪だといえることじゃないとオモ



関連
吉良親実と「七人ミサキ」
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-2288.html

まだまだ祟るよ!!吉良左京進親実の怨霊
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-2368.html


スポンサーサイト