638 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/02/20(金) 04:18:30.92 ID:wXnmAeab
松平忠輝卿が在国されていた頃、領内に人の入れないという山があった。
忠輝は「我が領内に人の入れない山が有るというのは、私の国政の行き届かない故である。
私が行って、その山を実際に見てこよう。」そう言って家臣のうちから選んだ10人ばかりを
供として、その山に登った。
道なき山であったので、木の根、岩角に取りつきながらしばらく登っているとやがて頂上へと着いた。
頂上には少し平地になっていて、そこに大木が、根が朽ちて倒れているものがあった。
忠輝はその木に腰を掛け、水筒に入れていた酒を飲みながら遠近の風景を眺めつつ、ふと大木に手をかけると、
その表面松皮のようであったが、皮の重なっている間から、針金のように強い毛が生えていた。
忠輝は奇妙に思い、小柄を抜き小刀で皮を削り、剥がしてみると、その下は鈍く光っていた。
忠輝は驚き、供の者達を呼び「これは稀な木である。皆で削ってみよ!」と仰せになったため、
おのおの削る中、一人脇差しを抜いて深く刃を入れると、不思議なことにその大木、大地震のように
揺れ動き、やがれ山中鳴動した。
こんな中でも忠輝は少しも騒がず、山頂の真ん中に立って八方を見てみると、傍の嶽の上に、
風呂敷のような頭に鑑のような両眼を見開き、巨大な口を開いて火炎のような舌を動かし、
今にも忠輝を呑もうとしている怪物の姿があった。
この時、供の中に加島某という大力無双の士があった。彼はとっさに忠輝を抱きかかえ一目散に走り
山際までくると、そこから二十間(約36メートル)ばかり下まで飛び降りた。
そこは山の中腹で岩角、木の根の険しい場所であったが、抱えていた忠輝には少しも怪我を
させなかった。加島自身は、肩や肘など三ヶ所を負傷した。
この怪物は、蛟龍と呼べるような大蛇であり、忠輝が腰を掛けた大木に見えた部分は、をの蛇の体であった
のである。
またある時、忠輝卿が箱根山に遊んだ時、湖水の水底を探り見ようと水中に飛び込んだ。
この時、近習の土屋半蔵という者も続けて飛び込んだ。忠輝は水底において大きな岩穴を見つけ
その中に入ってみたが、特に変わったところもないので出ようとすると、九尺(約3メートル)もあった
入り口がひしと塞がり、出ることが出来なくなってしまった。不思議に思いその辺りを手探りに
探ってみたところ、柔らかい手触りであったので、刀を抜いて所々を突き、それから切り破って
外に出ようと切りつけた所、出口が自然と開いたためそこから外に出た。
この間、土屋半蔵は忠輝の姿が見えないため、あちこち探しまわっていた。そして船中の御供衆は
あまりに長く潜っているので大いに心配し、水上を見つめていかがすべきかと評議していた所、
一人の老臣が「各々の心配は尤もではあるが、みな殿が水練の達者であることは知っている通りである。
その上土屋半蔵もお伴しているのだから、決して心配には及ばない。」
そう言っている所に、忠輝と土屋の二人が水上に顔を出し、皆々船を寄せてこの二人を引き上げた。
その時、水面紅に染まり、皆驚いていると、しばらくして五間(約9メートル)あまりの巨大な亀の死体が
浮き上がってきたと云う。
(明良洪範)
松平忠輝の出会った怪異についての逸話である。
639 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/02/20(金) 08:12:14.69 ID:ulOvk87j
9mの亀の死体は浮くのだろうか?
640 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/02/20(金) 08:35:23.15 ID:6vXpoJRg
体液だらけのハリボテだったんじゃね
641 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2015/02/20(金) 11:09:19.37 ID:7SGB3vON
アーケロンか