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伊賀崎治堅の殉死とその妻

2009年09月24日 00:08

709 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 19:02:29 ID:73oO+TsY
>>692

その内書き込もうかなと思ってたいい話に冷泉さんが出てきた気がしたので
確認したら冷泉隆豊の息子だった。
この逸話だと隆豊の父は大内義興が在京時にホモダチになって(裁袖余桃
ってそういうことだよね)山口についてきたんだよって話になってたけど
親戚なのかホモダチなのかどっちなんだ。

というわけで殉死のお話。
朝鮮陣のこと、築城中だった蔚山は慶長二年十二月二十二日明け方頃明軍の
急襲を受けた。
父兄を戦で失った剛勇の一族であった冷泉民部少輔元満は城外の仮営にあっ
たが、敵に背を見せまいと思ったのか城内を目指そうとはせず、己の陣屋よりも
二三町も敵に近い場所で戦死した。

この時元満の家臣伊賀崎治堅、白松時勝、吉安言之は任務で別の場所にいた。
彼らは事を知ると昼夜を問わず馬をとばして駆けつけたが、帰りついた頃には
刺し違えて死ぬ敵すら引いてしまった後だった。
伊賀崎は胸を打って嘆き悲しんでいたが、こう独りごちた。
「戸部(元満)の祖父、判官殿は大内義興卿在京時、裁袖余桃の契り深きが故に
防州へ共に下られた。
その時私の祖父も主人に供奉して下向してから主君も三代、我が家も三代
お仕えしてきた。
中でも私は幼少時から戸部にかわいがられ片時もおそばを離れずご奉公して
きたというのに、このような大事な時に同じ場所にさえいなかったのは過去世の
報いでもあろうか、神祇三宝に憎まれ君臣の契りも尽き果てたのか。
遅れたことは口惜しいが、しばしお待ち下さい。
腹を切って追いつき死出の山の露を払い三途の川を瀬踏みしてお役に立ち、
その時こそ御最後に遅れてしまった言い訳を致しましょう」

すると吉安、白松も「私たちもどうして後に残ろうか、同じ道を行こうではないか」
と三人共に堅く心に決めた。
彼らは主の死骸を三度礼拝し、腹を十文字に掻き破って同じ枕に伏した。
人々はこの忠義と勇気を比類なきものに感じ称賛したということだ。
------------

個人的に感心したのは「三途の川を瀬踏みして」の部分。
こいつら自力で渡る気満々だー六文払ってやれよ渡し守の商売あがったりだよ。

710 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 19:04:32 ID:73oO+TsY
で、この話には続きがあって、伊賀崎治堅には妻がいた。
日本で夫の殉死を知った妻は十九と十五の時から仲睦まじく二世を誓った夫に
(見初め、とあるので恋愛結婚だったのかもしれない)死に遅れたことを非常に嘆いた。
そもそも夫が朝鮮に立つ時、「船が沈むかもしれず、無事に渡れても戦で命を落とす
かもしれない、自分が死んだと聞いたら後生をよく弔ってほしい」と言われた彼女は、
「仰る通り無常の世です、あなたが亡くなったと聞いてどうして私も生きていましょう、
すぐに深い谷の淵に身を投げ、来世も同じ蓮の座をわけあいましょう。
たとえ輪廻を脱せず無明の業にとらわれたとしても、二人で手をとりあって並んで
廻ろうではありませんか」と答えたのだ。
仏の教えでは女性の成仏は難しいとされていたそのことだけが彼女の心にかかって
いた。
しかし彼女は女性に救いの道が全く開かれていないわけではないことも知っていた。
幼い頃から毎日読誦した法華経を読み、五の巻の摩訶波闍波題比丘尼が仏になる
予言を受けた文に至った彼女は涙を流し、法華経王に罪科を消除し先だった夫と同じ
寂光浄土に迎え給えと経誦し終わると、経典の表紙の裏に「死出の山したひてぞゆく
契置し君が言葉を道の枝折に」と書きつけた。
そして念仏を十返ほど唱えると、守り刀を抜いて胸に突きたて、うつ伏せになって
死んでしまった。
二夫を変えざる事すら珍しい世にあって命をかけて二世の契りを結んだこの事は、
人々の心をうち、遠く京の都まで伝わっただけでなく、漁夫や樵に至るまで夫人の
貞淑と哀れさに涙を流したということだ。
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現代人の俺からするといい話以前に玉突き事故並みに大変なことになってるなと
茫然としてしまうが、たぶんすごくいい話なんだろう。
いい話なんだけど仏教の教えでは女は成仏すると男になっちゃうんだね。
奥さんも「変成男子なんぼのもんじゃい」って言っちゃってる。
むさくるしいな浄土…。





711 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 19:27:40 ID:dBR9xyWK
すげーなーとしか言いようが無いな。
良くこの時代は命の価値が極端に軽いって言うけど、こう言うの読むと、
別の意味ながら極端に重かったようにも思う。

712 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 19:31:42 ID:i2pNSddr
なんか偉いお坊さんがやってきたとき
ところの偉い守護大名が足元にひれ伏して
俺ら一族みんな地獄に堕ちちゃう!助けて!なんて
ギャン泣きしたとかいう逸話を思い出したよ

714 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 20:43:24 ID:73oO+TsY
>>710
書き込んでから気づいたけど念仏じゃ宗派違っちゃうのか…
夫人が唱えたのは題目でしたすいません
元の逸話には呪文みたいな言葉が並んでたけど(うんたら比丘尼というのは
御釈迦様の乳母らしい)ぐぐったら大体全部出てきて魔法の箱スゲーって
なったのに初歩的な所ですっ転んだわ


715 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/23(水) 21:33:22 ID:vlhAJ38u

              _
            γ´ ̄`ヽ
            │LiLハ i_| 
            │ii ゚ -゚ノi|  地獄へ流します   
            ..jハ∨/^ヽi                 .
            .ノ::[三ノ :.'ヽ伊賀崎  白松  吉安 ワーイ    .    ┳━┳
   /\     . i)、_;|*く;  ノ (゚∀゚)ノ (゚∀゚)ノ (゚∀゚)ノ  ./\     ┣━┫ 
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716 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/09/24(木) 01:06:10 ID:+FvmWD7y
渡し守の収入に関しては心配いらないぞ、真田家がきっちり払ってくれるから

717 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/09/24(木) 02:32:36 ID:1o4LhX3A
茶会での大谷&石田の件。
真田の処遇についての本多の件。
この2つは個人的に好き。

718 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 04:45:55 ID:cLVH4A76
>>716
仕送りのせいで財政が厳しいのですが・・・

719 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/09/24(木) 10:27:04 ID:IveNN7UH
>>710
>いい話なんだけど仏教の教えでは女は成仏すると男になっちゃうんだね。
>奥さんも「変成男子なんぼのもんじゃい」って言っちゃってる。
>むさくるしいな浄土…。

なるほど、ホモダチのほとんどは前世ではどっちかが女性だったのですね

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