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相部次郎右衛門の切腹

2009年09月26日 00:02

743 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 14:27:34 ID:T489/zDC
さてさて、>>708で主君村上頼勝をも狼狽させた、幻術師相部次郎右衛門。
狼狽させたほうは大成功だろうが、狼狽した頼勝のほうは、彼のことを非常に不安に思った。

頼勝は家老を呼び、その不安を語る

「次郎右衛門の幻術、あれはあまりに怪しすぎる。
あの男をこのままわが家に抱えては、世の中に至らぬ噂を振りまくだけでなく、
下手をすれば最近ご禁制となった、切支丹の類とすら見られるのではないだろうか?

だからと言って暇を出しても、その後何か騒ぎを起こされて、わが家がそれに
巻き込まれぬとも限らない。

よって、大変不憫なことではあるが、無益な術を身に付けた事、不肖であるとして、
次郎右衛門に切腹を申しつけよ!」


家老の面々は、頼勝の決心を変えることは無理だと考え、次郎右衛門の元に検使を派遣し、
その旨を伝えた。
しかるに次郎右衛門は、「それではしかたがありません」と、抗弁すらなくあっさりと承諾。
かねて懇意にしている寺に行き、そこで切腹するとした。

腹を切る前、次郎右衛門はその寺の住職に

「私が切腹した後は、その遺体を長持の中に納め、それを鎖で巻いて、埋葬していただきたい。」

そう言い置き、腹を真一文字に切る。
そこを介錯人が首を打ち落とすと、彼の遺言の通りに埋葬した。

そこまで見届けた検使が城へと帰り、報告を行っていると、そこに家老宛の書状が届いた。

「あ、相部次郎右衛門からです!」
「なんじゃと!?」

さっそく書状を開くと、そこにはこうあった

『それがし、何の罪も無く死罪に会うことになったようなので、ただいま城下を出て、
どこそこまで退いたところであります。』

一同大いに驚き、検使は大急ぎであの寺に帰って死体を入れた長持を掘り出した。
その蓋を開けてみれば、中には腹を切った、巨大な狸が入っていたそうだ。

これは後に美濃の加納家に仕えた次郎右衛門のかつての同僚が、語ったことだそうである。




744 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 15:53:15 ID:lsujLIsc
戦国イリュージョニスト現る

745 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/09/25(金) 17:16:55 ID:8Xun/+mH
松永さん「妖術ぐらいで狼狽するなんて情けねーw」


746 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 17:22:11 ID:GCY73Ivv
もちろん腹切ったタヌキは家中でおいしくいただきますた

747 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 17:24:27 ID:ocoDKqOi
タヌキといえば化かすものというのが日本人の共通認識だが、
化かすための道具として腹を切らされたタヌキがいるなんて不憫すぎる

748 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 18:07:22 ID:cJmuv4Ow
動物愛護側からすると、かなり悪い話

749 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 18:08:44 ID:WD3XCd6a
タヌキっていっても家康のほうでしょ?

750 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 18:13:33 ID:pv8zzC7d
「ばかも~ん!そいつが次郎右衛門だ~!」

751 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 19:34:39 ID:+8kOTPuM
そういや今俺たちが一般的にタヌキと聞いて思い浮かべる獣と
童謡なんかに登場するタヌキ鍋に用いられるタヌキは別の生き物らしいね
童謡とかで鍋にされているのはアナグマの類で脂身が少なくてまあまあの味で
現在一般的なタヌキって言われる獣は煮ても焼いても食えない位不味いんだそうな
アナグマとタヌキは地域や時代によって呼び方や種別が混在しててまぎらわしいということらしい

752 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 20:46:51 ID:tj/WCdUM
タヌキムジーナ事件ってのもあったな。


753 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 20:49:08 ID:Vwz80bEc
左慈とか于吉みたいに術を使う奴を殺そうとすると碌な結果にならんな

754 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 22:03:36 ID:uox+CSPH
>>743
わざわざ長持を鎖で巻いて脱出困難にするとか本気で奇術師じゃねーかw

755 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 22:07:21 ID:3cVhZO/0
>>754
完全にショーの構えだよねw

756 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 22:39:56 ID:Of+vPYs+
律儀に巻いちゃう介錯人&住職も相当なもんだな。

何の疑問も持たずに巻き巻きしちゃったのか。

757 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 23:29:18 ID:leGLu6Rn
当時の人間にしてみたら棺桶(みたいなもの)を何で鎖で縛るのか不思議だったろうな

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相部次郎右衛門の幻術

2009年09月25日 00:01

708 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 19:38:55 ID:K2pSn0ts
越後国本庄の領主、村上頼勝の家臣に相部次郎右衛門と言う者がいた。
この男、武士としてよりも、何故か幻術の達人として有名であった。

ある夜、この次郎右衛門の自宅に、悪友2,3人が集まり軒端で色々と物語などしていた折、
この次郎右衛門ふと空を見上げ、ぽつりと言った。

「今夜は見事な銀河が見られるな。あの銀河に泳ぐ鮎を食いたいものだ。」

友人達はこれを面白がり、

「そんな事、どうやってするというのだ」

と、げらげら笑った。しかし次郎右衛門

「よろしい、では今宵のもてなしに、銀河の鮎を獲ってくるとしよう。」

そう言うと下僕を呼び、細引縄を幾筋も持ってこさせ、その縄をみな結びつけると
庭に降り、繋ぎ合わせた細引縄の端を取って空に向かって投げ上げた。

するとその縄、不思議なことに竿のように立ち、どんどんと空へ上っていった。
次郎右衛門はその縄の末に取り付き、共に空へと上がった。

友人たちは、あまりに奇異の事に驚いて空を見上げたが、空高くに上にあがったせいか
次郎右衛門の姿も良く見えなかった。

そのうちしばらくするとだんだんと降りてきて、その姿がわかるほどになった。
そして地上に降りると、袂から、生きた見事な鮎を2,30も取り出し。これを料理して友人達に
饗応した。

このような不思議なことが度々あったので、主君、村上頼勝も「彼の幻術を見物したい」と、
次郎右衛門を御前に呼び出した。

そこで次郎右衛門、「失礼いたす」と立ち上がり、鼻紙を取り出すとそれを裂き、
大豆ほどの大きさにしたものを柱に貼り付けて、また元の座に戻った。

しかし何が起きるというわけでもなく、頼勝はじめこの座にいた者達も、「なあんだ」と
少々残念な面持ち。

ところがしばらくして、柱に貼った鼻紙から、少しばかり水が染み出していることに
皆が気づいた。

村上頼勝をはじめ近習の者達、「何事か仕掛けやあらん」と、目を離さずそれを見つめていたが、
徐々に鼻紙より出る水量は増え、しまいには滝のように噴出し、その座はことごとく水に浸かった。

頼勝もこれにはたまらず叫ぶ

「もうよい!術を止めよ!」

即座に次郎右衛門すくりと座を立ち、柱の鼻紙をはがすとその瞬間、水は消え去った。
その座も、元の乾いたままであった、とのことである。


主君も狼狽させた、相部次郎右衛門の幻術、のお話。




713 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 21:55:05 ID:zVgG2Htl
>>708
普通の家中の士なんだよな・・次郎右衛門
本物の幻術使い顔負けの術はどこで仕込んだのやら

714 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 21:56:21 ID:R+1dhuZw
中の人が果心居士だったんじゃねえの?

736 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 09:39:18 ID:hLJplzR/
>>708
これは面白いな。縄上りの奇術はインド発生で、中国まで伝わったとされるけど、
日本にも伝わってたんだな。


739 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 12:56:06 ID:hAg1oxPF
聊斎志異にも縄登りの奇術の話が出て来るから遅くても明末清初には中国に伝わってるのは確実。
戦国時代の日本に伝わっててもおかしくないな。