911 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/02/03(水) 14:52:38.05 ID:Hr476j/4
吉村又右衛門は人の知りたる武勇の人である、と申されていた。
私(著者)が中国へ罷り下ろうとしていた頃、暇乞いとして、彼が夜中に来た。
「又いつ会えるか知れないから。」と言って、酒を飲んで過ごし、様々な事を心静かに語った。
そして「もう夜も深くなってしまった。では。」と言って帰ろうとし、私はそれを門の外まで送り、
「命あらば、又逢おう。」と言って立ち別れようとすると、吉村は名残惜しげに、私の手を取って
「今少し送れよ。」と言った。そこで二、三町ばかり語らいながら歩いていると、この時吉村は
こう語った。
「人が終わろうとする時、必ず一言を残すものだという。私は老いた。これは今生の御暇乞いである。
その方は年が若い。相かまえて、”つらくつなき”者からは遠ざかるように。尤も主人童僕であっても
その心得があるべきだが。貴人も賤しきも、人を知るという事を、心得るべきだ。
今はこれまでぞ。さらば、さらば。返すがえすも命あらば。」
そう言って立ち別れた。その時のことは、老後の今も忘れがたい。
眼にも耳にも残っている。
”つらくつなし”とは俗語で、例えば我儘で、異見も聴き入れないような、気儘な者の事を言うのだと理解している。
(備前老人物語)
912 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/02/03(水) 20:41:30.83 ID:cMyRziqo
吉村又右衛門さんって福島の家老から極限の貧乏に転落した人か
吉村又右衛門は人の知りたる武勇の人である、と申されていた。
私(著者)が中国へ罷り下ろうとしていた頃、暇乞いとして、彼が夜中に来た。
「又いつ会えるか知れないから。」と言って、酒を飲んで過ごし、様々な事を心静かに語った。
そして「もう夜も深くなってしまった。では。」と言って帰ろうとし、私はそれを門の外まで送り、
「命あらば、又逢おう。」と言って立ち別れようとすると、吉村は名残惜しげに、私の手を取って
「今少し送れよ。」と言った。そこで二、三町ばかり語らいながら歩いていると、この時吉村は
こう語った。
「人が終わろうとする時、必ず一言を残すものだという。私は老いた。これは今生の御暇乞いである。
その方は年が若い。相かまえて、”つらくつなき”者からは遠ざかるように。尤も主人童僕であっても
その心得があるべきだが。貴人も賤しきも、人を知るという事を、心得るべきだ。
今はこれまでぞ。さらば、さらば。返すがえすも命あらば。」
そう言って立ち別れた。その時のことは、老後の今も忘れがたい。
眼にも耳にも残っている。
”つらくつなし”とは俗語で、例えば我儘で、異見も聴き入れないような、気儘な者の事を言うのだと理解している。
(備前老人物語)
912 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/02/03(水) 20:41:30.83 ID:cMyRziqo
吉村又右衛門さんって福島の家老から極限の貧乏に転落した人か
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