井戸亀右衛門の業

2014年12月13日 17:55

2 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/12/13(土) 02:13:34.79 ID:ely2tu/9
丹後の国人である小野木縫殿助と江見某との間で、領地争いより合戦となったが、ここで江見は
敗軍し出撃して戦うことも出来ず籠城となった。そこに小野木は攻め寄せ落城は目前に迫った。
この時、小野木は家士に向かって、

「誰が江見の首を取ってくるか!?」

と呼びかけると、この時17歳の井戸亀右衛門と言う者が進み出て

「私が江見の首を取ってまいります!」

と言い放った。側に居た亀右衛門の兄はこれを聞いて弟を叱りつけた
「たとえ心に思う所あったとしても、諸士万座の中で若輩である汝が左様なことを申すのは過言である!」
しかし亀右衛門は声高に成って
「首を取れなければ確かに過言でしょう!しかし首を取り得たれば過言にはなりません!
私が首を取ることが出来るかできないか、兄であれば私の胸中を慮るべきなのに、過言であると叱るのは、
兄こそ過言である!」

そうして兄弟口論に及んだが、列座の諸士が双方を宥めて無事に相済んだ。

その夜、小野木縫殿助はこう言った
「亀右衛門を兄が叱ったのは、諸士に対して弟を戒めたわけで、至極尤もなことである。
しかし弟の面相は、兄と違い並々ならぬものがあった。彼は必ず首を取りに行くだろう。
先刻の亀右衛門は、江見の首を取るか自分の首が取られるかを決心した顔であった。」

さて、井戸亀右衛門はその夜、敵城へ忍び込み、江見の居室の軒下に忍んだ。
明け方、江見が起きだし未だ小具足を付けただけで一人軒先に出てきた所を、
足を捕らえて引き下ろし、難なく首を取り、塀を乗り越えて城外へと出た。
この亀右衛門は忍びの名人であり、かつ大力早業の持ち主で、塀を乗り越えるのも飛鳥の如き早さであった。
しかしこれまでその事を誰も知らなかった。
この事があって、彼の業は広く知られるように成ったのだという。

さて、小野木勢は翌日未明より城に攻めかかっていたのだが、そこに亀右衛門が江見の首を持って
塀を乗り越え出城の方に向かい

「小野木の家臣、井戸亀右衛門、敵将江見某を討ち取ったり!」

そう大音にて3度叫んだ。敵も味方もこれを聞いて大いに驚き、敵方はたちまち力を失い、
我も我もと落行き味方はたちまち城を乗っ取った。

この亀右衛門は後に細川家に仕えて二千石を領した。

(明良洪範)



3 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう[sage] 投稿日:2014/12/13(土) 22:29:20.29 ID:z8iwcjaw
のちの亀忍者の元ネタである

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井戸亀右衛門の諫言

2012年10月02日 20:31

668 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 08:24:16.57 ID:1m4zqM3Q
細川忠興の家臣に、井戸亀右衛門という高名な勇者があった。

さて、この亀右衛門の友人に、増田蔵人という者があった。
この友好は蔵人の父が臨終の時、彼にくれぐれもと深く頼み置いたことによる。

蔵人は細川家で六千石を領していたが、家は常に貧乏で一金の貯蓄もなく、この事を亀右衛門は常々
諌めていたが、蔵人はその度に「実にそのとおりだ」と言いながら、しかし反省した様子は見えなかった。

有る年、蔵人は1年間江戸にあって後、細川家の領国である小倉への帰国の途についた。
亀右衛門は彼の帰路を推し量って逆に江戸方面へ上り、桑名で行き会った。

亀右衛門が十人ほどの徒歩の者共を引き連れ馬にて通るのを見た蔵人は、これを不思議に思い
「どうして今、江戸へと上るのか?」
と尋ねた。すると亀右衛門は

「やがて華々しいものを見るぞ!今は一言の暇も惜しむゆえ申せぬ。その理由は早々に小倉に帰って聞かれよ!」

そう言い捨て打ち過ぎた。蔵人はこれを聞くと馬を返して亀右衛門に追いつき
「日頃の友情はこういう時にこそ表されるものではないか!密かに私だけに教えてくれ!」と、従僕達はみな後ろに下げ
唯自分一騎のみで亀右衛門の側に付いた。すると亀右衛門は馬から降り、蔵人を前に呼び寄せ

「私は片時の時間も惜しんでいるのだが、この上は話してしまおう。よいか?今度、大坂に事が起こる。
そのため我が君にも近日中に御船出あるべしとの、幕府よりの陣触れがあった。これによって私は俄に
命を蒙り、急ぎ江戸に参る最中なのである。」

これを聞いた蔵人は驚愕した。「私は貧困であり、少しの貯蓄もないことはあなたも兼ねてよりよくご存知であろう。
どうして今私が、人並みの出陣が出来るだろうか!それに帰国後江戸に戻るということになれば、もはやその旅費も
無いのだ!この上は唯この場で腹を斬るしか無い!

これを見た亀右衛門殿「貴殿は常々私の諫言を聞きながら、これを用いようとしなかった。
普段から軍役を疎かにし、殿より頂いた大禄を空しくして、今またここで犬死するなど、一体何の意味があるのか!?
従者を扶持する資金がないのなら、只一騎敵と戦い討ち死にすれば良いだけではないか。
されどもこんな所で切腹など、人に笑われるだけの話である。
加々山隼人は貴殿と同じ知行であるが、彼は兵船数艘、騎兵歩兵の3~400をいつでも揃えられるよう用意をしている。
貴殿は彼に劣っていることを、口惜しいと思わないのか!」

蔵人はこれに途方に暮れて「死ぬにも死なれず、帰るにも帰られず…」と、悄然として溜息を付くばかりであった。

と、暫くして蔵人が全く追い詰められた様子なのを確認すると、亀右衛門はにわかに言った

「実はさっき言ったこと、アレは全部ウソだ。」

「…!なな!?」

「ウソだ!…が、今の天下は既に乱の兆しがある。そもそも時安けれど危を忘れざるを武備と呼ぶ。
夏に衣を作って冬の寒さに備え、晴れた日に傘を貼って雨を待つのと同じ事だ。全ての事はあらかじめ
準備をしておかなければ、突然のことに対応することは出来ない。明日にも兵乱という事態も
考えられるのだ。もし本当に合戦騒ぎが起これば、貴殿は間違いなく今のように狼狽しただけであっただろう。

貴殿は、普通の諫言ではもはや容易く聞いてはくれぬと思ったので、今度貴殿が帰国するのを利用して
かく注意したのだ。」

増田蔵人はさすがにこの諫言に感じ入り、帰国すると驕りを捨て倹約を守った。そしてそれから3年、果たして
大阪の陣起こる。この時蔵人は見事、六千石の軍役を果たしたそうである。

現代でも耳の痛い人がいるであろう、井戸亀右衛門の諫言、という逸話である。
(武士道美譚)





669 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 14:00:57.12 ID:revx2Qwa
あれ、いい話じゃないか!

670 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 14:30:16.40 ID:gREDtAD2
忠興「人の言う事聞かなきゃ。それに無駄遣いは駄目だよね。」
政宗「俺は素直だから人の言う事聞くよ。借金までして金を使うやつなど信じられぬ」
忠教「忠告聞いて短い刀にしたし、老中におべっかを言ったよ」

671 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 14:35:33.12 ID:g89Stshg
>>668
なんだ、ただのいい話か

672 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 15:12:33.13 ID:Q4Igc7Eu
備えあれば憂いなしとは言うが、
黄金伝説の無人島生活で台風が来るってんで必死で台風対策するも
結局ほとんどろくな風雨が来ず空回りに終わったのを見るに、
日本人の何でも備えすぎの風潮にはいささかうんざり。

673 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 15:49:25.04 ID:Vdedxfgm
完全に平和な江戸中期以降ならともかく、この時代はまだ戦争させるために武士を雇ってるんだから軍備やらない奴は給料泥棒だろ

674 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 15:51:44.32 ID:vWdIZzrV
権現様「ケチと言われようが」
如水「金をためておかねば」
利家「いきなり戦が始まった時に役に立たんぞ」

675 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 16:18:57.03 ID:9K05Yjh7
常に貧乏で貯蓄もないとは一体何に使ってたんでしょうな

676 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 17:03:31.16 ID:Y5U38PiW
この頃だとやはり博奕と女じゃないでしょうか

677 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 19:57:26.36 ID:l3oT3NZz
主君に毒されて数寄三昧とか

678 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 20:02:06.94 ID:J9gE9iit
尾張大納言「使うときに使わぬのはしみったれというのだ」

679 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 20:07:04.92 ID:Z7bsmnpv
使わなきゃいけないときに金がないんじゃね^^;

井門亀右衛門と二代目蔵人

2009年10月08日 00:20

170 名前:酒と泪と男と漢 1/2[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 10:25:49 ID:SWUx4Vul
井門亀右衛門は、単身敵城に忍び込み敵将の首を掻いたり、関ヶ原の戦いの際、
田辺城攻めに参加し、城方の矢弾が雨あられと降りそそぐ中、単騎殿軍を果たしたりした
剛の者だったが、関ヶ原後に主君・赤松氏は切腹となり、浪人の身となった。

次に亀右衛門が仕えたのは、なんと田辺城主だった細川幽斎の子・忠興だった。
かつての敵を細川家は温かく迎え入れ、益田蔵人という親友まで出来た。

しかし良い事は長く続かず、親友・蔵人が危篤に陥った。臨終の床で蔵人は息子と
亀右衛門を呼び、息子には
「これからは亀右衛門殿を父と思い、夢にも逆らうな。」
と言い、亀右衛門には
「日頃のよしみを忘れぬならば、こやつをおぬしの子と思って導いてくれい・・・」
と言って愛用の扇を亀右衛門に譲り、息を引き取った。

さて、蔵人の子は父の名跡を継いでそのまま益田蔵人を名乗ったが、この二代目蔵人
酒癖が悪く、昨日はあちらで宴会、今日は遊郭と、放蕩の限りを尽くしていた。
「・・・・・・」
ウィーヒック「おや!これはこれは井門どのー!」
「・・・蔵人殿、その有様では父上があの世で嘆いておられるぞ。」
「いやはや、ごもっとも!それでは、宴席の約束がありますので失礼!」ウィー

(・・・これは荒療治をせねばなるまい・・・・・・)

171 名前:酒と泪と男と漢 2/2[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 10:26:35 ID:SWUx4Vul
益田蔵人は江戸勤番を終えた帰国の途中で、異様なものを見た。
旧知の井門亀右衛門が武装した十数人の供を従え、江戸へ向かおうとしていたのだ。
「い、井門どの、その姿は何事ぞ?!」
「なんじゃ蔵人どの、知らぬのか?いよいよ大阪で戦じゃ。我らが殿も江戸にて軍を整え、
将軍家に従い出陣するとの事。わしもとりあえず人数を揃えて、江戸に向かうところよ。
おぬしも早く国許に帰り、郎党を集めて江戸に戻られい。」

それを聞いた蔵人は、顔を青くして汗を滴らせた。
「どうした、蔵人どの?おぬしの知行ならば、軍役として数十人は連れて行かねばなるまい。
こんな所でモタモタしているヒマはないぞ。早く帰られよ!」
蔵人は、ついに泣き出した。
「じ・・・実は日頃の酒色がたたり、数十人も養えるだけの蓄えがござらぬ・・・」
「何と!ならばどうする?」
「こ、この上は、潔く腹かき切って殿と父に詫びる所存。介錯をお願い致す・・・」

「良く言った。その覚悟で、以後は武道に励むべし。」
「?い、井門どの、どういう事ですか?」
「戦はウソじゃ。おぬしの帰国に合わせて、一芝居打ったのよ。」
「そんな・・・どうしてこんな酷いことを・・・」
「おぬしのご尊父に代わって折檻せんが為よ。現在は太平なれど、大阪の出方によっては
いつ東西に風雲起こるとも限らん。その時、今のごときうろたえたる様にて何とする?
おぬしの知行は酒色の為に賜わったものか?禄盗人とはおぬしが事じゃ!」
叫んだ亀右衛門は、懐から先代蔵人形見の扇を取り出し、ピシリと蔵人の頭を打った。

これが堪えた蔵人は帰国すると、蒐集した美服等を全て焼き捨て、食事に酒・魚・肉を除き
倹約に努めた。数年後、実際の大阪の陣の際には、軍役をはるかに超える人数を揃え、
家中を驚かす活躍を見せたという。




172 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 10:28:00 ID:SWUx4Vul
以下蛇足

亀右衛門の次男、井門重之は細川分家・宇土藩に仕え、島原の乱で手柄を立て、
家老として重きをなした。
藩主の細川綱利(のちの本家五代目)は、その武功と長年の忠勤を賞し、知行の加増を
申し出たが、重之はこれを断った。
「要り申さず。どうしても褒美を、とおっしゃるなら、益城郡に良き枝振りの松がござる。
その松を、わが屋敷の庭に植え替えて下され。老いの愉しみにいたしまする。」

一説によると千石にも及ぶ加増を断り、松を所望した重之の心意気を称え、いつしか
その松は「千石松」と呼ばれるようになった。
この話を聞いた宇土細川家出入りの菓子職人は感銘を受け、明治初年に出した菓子店で
松の焼印を押した薄焼煎餅を売り、同じく「千石松」と名づけた。

この菓子店「一心堂老舗」は今も宇土市で「千石松」を作り続け、井門家の士風を
今に伝えている。
ttp://www.i-kumamoto.net/bussan/itiran/index.php?shopItem=2




173 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 10:40:20 ID:D6UjE//s
( ;∀;)イイハナシダナー
いま親友の子供の世話をきちんと見られるほどの気概を持った人間っているんだろうか?

174 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 10:51:20 ID:APscASuI
久々に本当のいい話を読んだ。ありがとう。


176 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 11:12:18 ID:uj6riz2x
ちょっと宇土に行ってくる。

百段で。