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ご隠居、槍弾正

2010年01月01日 03:38

678 名前:1/2[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 07:50:31 ID:CAcwL7tU
天正13年(1585)11月、小笠原貞慶は石川数正に呼応して徳川から豊臣に寝返った。
同12月初め、上杉家からの支援をもとに5千の兵を集めた貞慶は、本拠地・深志(松本)
から、真田攻めの後処理で城主不在の地が多い南信濃に乱入した。

その城でも、主君の留守を守る侍たちが、対策を協議していた。
「殿も若様も、本隊を率い真田に備え、小諸に駐留。残った騎士40、雑兵350の小勢では
門の一つも守りきれまい。ここは城を落ちて下伊那へ逃れ、徳川様と伊那衆の助けを
得た上で反撃するべきだ。」
「うむ。蛮勇に走って城を落とされ、命を無駄にするは、小諸の殿にも申し訳なし。」

「かーっ!なんちゅう情けない事を言うとるんじゃ!」「あっ、ご、ご隠居様!」
今年75歳になる隠居した先代が、いつの間にか座に加わっていた。

「若い者が血気に逸って死に急いではいかんと来てみれば、一戦もせずに城を捨てる
相談とは…お主ら、それでも武士か!?」
「お言葉ですがご隠居様、兵にして十数倍の敵が相手では…」

「深志からこの城へ至るには不動峰南端の鉾持桟道(ほこじさんどう)、人がすれ違うのが
やっとの山道を通る他あるまい。そこが狙い目よ。
その上、小笠原は短気な性分。数を頼んで大した謀もあるまい。まあ、わしに任せておけ。
これでも戦に臨む事60余度、少しは駆け引きも心得ておる。
老後の思い出に九死一生の戦のやり方、お主らに見せてやるわい。」

679 名前:2/2[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 07:51:32 ID:CAcwL7tU
隠居は蔵から白布数十反を出し、数々の紋を描かせ、偽の旗印を大量に作らせた。
さらに、近隣の農民300余を招集し、このうち160人に武具鉄砲を与えて鉾持桟道の川向い、
白山の山中に伏兵として置いた。

12月3日、吹雪の中を鉾持桟道に差し掛かった小笠原軍の先鋒は、隠居の命を受けた
物頭・赤羽又兵衛率いる300余の奇襲を受けた。
初めは不意打ちに驚いた小笠原軍だが、次第に数の優位を取り戻し、赤羽隊を押し返した。

「よし、やれい。」
そこへ隠居の合図により、北原玄蕃率いる農民たちが山上から、用意した大岩・丸太を
小笠原軍目がけて投げ落とした。
直撃を受けた者は即死、あるいは谷底に落ち、先鋒と本隊は落石によって分断され、
先鋒は勢いを取り戻した赤羽隊に次々と討たれた。

吹雪が晴れた後、小笠原貞慶が見たのは、死屍累々たる先鋒の姿と山中から襲って来る
おびただしい軍旗(実は偽の旗印を持った北原の分隊わずか70人)、そして川向こうの
白山の山中から鳴り響く鉄砲の音だった。
「しまった!もう本隊が帰っていたか!?」早合点した貞慶は、深志目指して逃げて行った。

「…………」「おい、勝ったぞ。勝どきを上げんか。」
「す、凄い…これがご隠居様の、”槍弾正”の軍略……」
隠居こと保科弾正正俊は、この武功により家康から感状と名刀・手掻包永を授かり、
8年後の文禄2年(1593)、栄光に包まれながら80余年の生涯を閉じた。

680 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 08:28:17 ID:wsGoX+pl
へえ、石川数正以外にも徳川から豊臣に寝返った人はいたんだな




681 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 08:32:21 ID:xoe5lPV6
ちょっと疑問があるんだけど。
緊急招集した農民に鉄砲撃てるのかな?


682 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 08:57:02 ID:TBugmOiR
あの時代の農民なら、大概徴兵されて出兵した事があるんじゃないか?
もっとも戊辰戦争の会津城の戦いでは、鉄砲の操作方法を知らない隠居老人たちを、
山本八重子が率いて大山巌を狙撃し、負傷させた例もあるが。

683 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 09:12:56 ID:Rr9hWhnK
当たる・当たらないは別にして、音で敵を混乱させる
という目的じゃないの?

684 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 09:25:08 ID:UuJ3Puz7
じつは猟師かもしれんて

685 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 09:29:50 ID:b+q7JUZA
当時の農民は軍事のセミプロ。
最終的な村の生存権を守るのは村の軍事力だからな。
例えば禁制をもらったとしてもそれを執行するのは大名ではなく村、
あれは「うちの兵隊が濫妨狼藉したら自衛していいよ」って言うものであって
大名が積極的に取り締まるものではないから、
村に武力が無いと武装した雑兵には太刀打ちできないからね。

それに八十年代なら結構な数の銃が出回ってる頃だし、問題ないかと。

686 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 10:17:06 ID:l8nPUq1Z
田畑を耕すのも農民、戦に駆り出されるのも農民
この時代の農民ってハイブリットだよなあ

687 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 10:46:37 ID:rGm+zqWv
元々の武士の形だよ

688 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/12/31(木) 11:00:45 ID:4SiPZDd9
一領具足とかね

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