124 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/04/17(土) 13:03:15.82 ID:3ZdxbqK5
ある人が、豆州(松平信綱)に疑問を述べた
「大名は国を拝領し、常に安楽のみを致しているのに、彼らの参勤の時も将軍家より上使など遣わされ、
御暇を申し付けられた時も、時服、金銀等に至るまで下されます。
一方で御旗本は常に御奉公により頻繁に労苦をも致しております。又何事かあったとしても、
御用に立つのは御旗本に過ぎるものは有りません。
然るに大名への御馳走強く、御旗本へはさほどでもないというのは、これは逆ではないかと思うのです。
どうしてこのような事になっているのでしょうか。」
そのように戯言を申すと、豆州は取り敢えずこのように答えた
「そうであるからこそ、大名に成ることを人は殊に願うのだろう。
さりながら、大名衆をあのように常に御懇に成されているのも、その代に大きな役が当てられ、
或いは御普請の労力など殊の外の御使となり、又御軍があれば、これも誰であっても一口に大きな
御用が仰せ付けられる。そういう事であるから、普段大名衆は御馳走されているのだ。
ただ、人の幸不幸というものであろう。人には生まれつき、こう言ったものが有ると思っている。
身の回りに例えると、人々の腰に指す刀脇差は、一代一度の用のために指しているのであるが、
十人の内九人は、その用無く過ぎていく。しかれどもそれらを秘蔵する事大方成らず。
また、小刀は日夜の用に立つが、あえてそれを馳走する事はない。それと同じものであろう。」
このように申された、兎角仮初の事にも理屈で人に負けられない人であると、諸人舌を震わせたという。
(信綱記)
ある人が、豆州(松平信綱)に疑問を述べた
「大名は国を拝領し、常に安楽のみを致しているのに、彼らの参勤の時も将軍家より上使など遣わされ、
御暇を申し付けられた時も、時服、金銀等に至るまで下されます。
一方で御旗本は常に御奉公により頻繁に労苦をも致しております。又何事かあったとしても、
御用に立つのは御旗本に過ぎるものは有りません。
然るに大名への御馳走強く、御旗本へはさほどでもないというのは、これは逆ではないかと思うのです。
どうしてこのような事になっているのでしょうか。」
そのように戯言を申すと、豆州は取り敢えずこのように答えた
「そうであるからこそ、大名に成ることを人は殊に願うのだろう。
さりながら、大名衆をあのように常に御懇に成されているのも、その代に大きな役が当てられ、
或いは御普請の労力など殊の外の御使となり、又御軍があれば、これも誰であっても一口に大きな
御用が仰せ付けられる。そういう事であるから、普段大名衆は御馳走されているのだ。
ただ、人の幸不幸というものであろう。人には生まれつき、こう言ったものが有ると思っている。
身の回りに例えると、人々の腰に指す刀脇差は、一代一度の用のために指しているのであるが、
十人の内九人は、その用無く過ぎていく。しかれどもそれらを秘蔵する事大方成らず。
また、小刀は日夜の用に立つが、あえてそれを馳走する事はない。それと同じものであろう。」
このように申された、兎角仮初の事にも理屈で人に負けられない人であると、諸人舌を震わせたという。
(信綱記)
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