541 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/02/01(月) 16:37:00.04 ID:s06oUcHl
関ヶ原の合戦の前に、石田治部少輔(三成)は、一騎駆にて佐和山より大阪に馳来たり、
増田右衛門尉(長盛)に参会し、密に談ずるべき事ありとして、数寄屋に入って物語をした。
初めは何事を語っていたのか、やがて三成は
「せめてこの上は五畿内の諸浪人共を集め、無二無三の合戦を行わねば叶いがたし、いかが考えるか。」
と言った。
これに右衛門尉は
「尤も然るべき事であるが、それではこちらから企んだような事となる。とにかく時節が至るのを
待って、天道に任せることこそ然るべきである。」
と応えた。
治部少輔は微笑して言った
「太閤様の患いが御快気されていた時、貴殿や我らたちを召され、『汝らに百万石づつ下そう。
何故ならば、私は今度の病気中に様々なことを考えた。汝らを大名にしておけば、万事心安かるべしと
思ったのだ。』と仰せになった。
その時皆々目を合わせ、『さても有難き仰せかな。何と申すべき言葉もありません。ですが、
人の口も有ること故、重ねてこそ仰せをば奉ります。』と、その時はたって辞した。その事を
思うに、返らぬことでは有るが、くやしき事である。あの時百万石を領していれば、現在、
何の不足があっただろうか。とにもかくにも、私は人数を持っていない以上、思うに益なし。
口惜しき次第である。」
そのように語ったとのことだ。
このような大事の事を、一体誰が聞き伝えたのだろうか。しかし私は確かに、人が語っているのを聞いた。
不審なることである。
(備前老人物語)
関ヶ原の合戦の前に、石田治部少輔(三成)は、一騎駆にて佐和山より大阪に馳来たり、
増田右衛門尉(長盛)に参会し、密に談ずるべき事ありとして、数寄屋に入って物語をした。
初めは何事を語っていたのか、やがて三成は
「せめてこの上は五畿内の諸浪人共を集め、無二無三の合戦を行わねば叶いがたし、いかが考えるか。」
と言った。
これに右衛門尉は
「尤も然るべき事であるが、それではこちらから企んだような事となる。とにかく時節が至るのを
待って、天道に任せることこそ然るべきである。」
と応えた。
治部少輔は微笑して言った
「太閤様の患いが御快気されていた時、貴殿や我らたちを召され、『汝らに百万石づつ下そう。
何故ならば、私は今度の病気中に様々なことを考えた。汝らを大名にしておけば、万事心安かるべしと
思ったのだ。』と仰せになった。
その時皆々目を合わせ、『さても有難き仰せかな。何と申すべき言葉もありません。ですが、
人の口も有ること故、重ねてこそ仰せをば奉ります。』と、その時はたって辞した。その事を
思うに、返らぬことでは有るが、くやしき事である。あの時百万石を領していれば、現在、
何の不足があっただろうか。とにもかくにも、私は人数を持っていない以上、思うに益なし。
口惜しき次第である。」
そのように語ったとのことだ。
このような大事の事を、一体誰が聞き伝えたのだろうか。しかし私は確かに、人が語っているのを聞いた。
不審なることである。
(備前老人物語)
スポンサーサイト