小野次郎右衛門遠流の事附御免にて召し帰られし事

2016年07月30日 14:18

13 名前:1/2[sage] 投稿日:2016/07/30(土) 06:17:50.15 ID:n3UleyDq
小野次郎右衛門遠流の事附御免にて召し帰られし事

 世に愚かな者がいた。両国の辺りに看板を出し、
「剣術無双の者なり。誰でも真剣で立ち向かってこい。
たとえ切り殺されても厭わない。」
とのことを記した。

 都鄙から夥しい見物人が来て、
彼を切ることができず木刀でやっつけられた者は門弟となり、
もっぱらの評判となった。

 次郎右衛門がこれを聞き及んで、

「かのようないかがわしい者を天下の御膝元に置く事ふがいなし。」

と門弟を引き連れて見物に行った。
桟敷でかのいかがわしい者のなせる業を見て門弟一同は微笑していたのを、
かの者が聞いて大いに怒り、
「どうして笑いなさるか!
すでに看板を出しておるように、誰でもあれ真剣で試合しようと言っている。
笑いなさるのならば、ぜひ立ち合ってくだされ。」

と罵ると、傍輩の者が

「あの桟敷にいるのは、将軍家の御師範次郎右衛門です。」

と押し留めたが、全く聞き入れなかった。

「たとえ御師範であろうとも」

と申し止らなかったので、次郎右衛門も嘲られては武備の恥辱と、やむを得ず下へ降りて

「しかる上は立ち合おう」

と、鉄扇で立ち向かわれた。
かの者は正眼にかまえただ一討ちと切りつけたので、あわやと思われたが
いかがわしき者の眉間は鉄扇で打ち砕かれ、二言なく果てたという。

この話を大猷院様(家光)が御聞きになられ、
「師範たる者の行状ではない。」
と遠流を仰せ付けられたとか。

14 名前:2/2[sage] 投稿日:2016/07/30(土) 06:18:12.16 ID:n3UleyDq
 その後のことである。流された先の島では畑の瓜・西瓜を盗み食う曲者がおり、
捕らえようと島中の者が集まっていた。
しかし、盗人は大勢に手を負わせ、瓜小屋に籠り、小屋の周りに西瓜・瓜の皮を並べて、
捕り手の者が込み入っても瓜の皮を踏んでしまい身体が自由にならず、
多人数が死傷を負ってしまった。

次郎右衛門の元へ島の者どもが来て、

「なにとぞ捕らえてください」

と嘆くので、次郎右衛門は粗忽にも軽々しく脇差をおっ取り駆け行った。

「瓜の皮で足場がよろしくありません。」

と傍らから申してきたが、耳にもかけず駆け行き、やはり瓜の皮を踏んで仰向けに倒れてしまった。
待ち受けていた曲者は拝み打ちで打ちかけたが、
小野派の神妙といわれる太刀筋で、滑りながら脇差を抜き払って、上へ払うと
曲者の両腕ははたと落ち、すぐに召し捕らえられたという。

この趣が江戸にも伝わり、召し帰され、即時に元の禄を下されたという。

さて、次郎右衛門が召し出された時、、
「彼は遠流でしばらく剣術の修行を怠っているだろう。
我は日夜修行してきたので、立ち合って成果をみせてやろう」
と、大猷院様の思し召し、毛氈を敷いて、木刀を組み合わせて
「いざ、次郎右衛門、立ち合え」
との上意をされた。

次郎右衛門は謹んで毛氈の端に手をついて居た。
ただ一打ちにしてやろうと御振り上げ御声をかけられた時、
毛氈の端を取り、後ろへ引いたので、後ろへ御転びになられたという。
よって、大猷院様は御信仰なされ、一刀流を御修行なされたという。
(耳袋)




15 名前:人間七七四年[] 投稿日:2016/07/30(土) 12:28:58.10 ID:v3P/mw3I
>「瓜の皮で足場がよろしくありません。」
>と傍らから申してきたが、耳にもかけず駆け行き、やはり瓜の皮を踏んで仰向けに倒れてしまった。



言っちゃ悪いけど次郎衛門ってやっぱバカだよな・・・

16 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/07/30(土) 13:24:47.42 ID:XkDfPbFP
敵の誘いにわざと乗って油断して掛かってきたのを返り討ち
知勇兼備の男だと思うね


17 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/07/30(土) 17:11:38.20 ID:7z8Vcp0+

>>13-14
脳筋過ぎないこの人wそれで勝っちゃうのが凄いけど。

18 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2016/07/30(土) 18:52:32.85 ID:e1XwGdjL
わざと引っかかったのか、そうでないのかはわからん
ただ、咄嗟に脇差しを抜いて払っているあたり、わざとかかったようには見える
まあ、ただの反射神経かもしれんが

20 名前:人間七七四年[] 投稿日:2016/07/31(日) 08:41:19.10 ID:PQ8Hl6kn
>>15
言っても悪くないぞ。 俺もそう思うから。

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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    これは油断させる為にわざと踏んで転んだのでしょ?
    相手が小屋に篭城してるのだから、出てきてもらった方が早い

  2. 人間七七四年 | URL | -

    家光「よしこの毛氈の技ををあいつに試してやろう」
    かくして柳生三厳公方打擲事件発生

  3. 人間七七四年 | URL | -

    「やはり敷くなら大判小判に限るのお」

  4. 人間七七四年 | URL | USanPCEI

    小屋からおびき出す為にコケてみせたんじゃ? 

    しかし・・他人より何かに優れてるってのは
    羨ましいようで、なんか色々大変よね。

  5. 人間七七四年 | URL | -

    狙ってやったならすごいし
    狙ってなくてもそれはそれですごい
    個人的には狙ってない方が好きだがw

  6. 人間七七四年 | URL | -

    ≫3左内殿たいがいになされ

  7. 人間七七四年 | URL | -

    家光はこういうおじさん好きそう

  8. 人間七七四年 | URL | -

    ちなみに、バナナの皮に滑って転ぶというコメディのねたは、20世紀初頭には、すでに存在している。

  9. 人間七七四年 | URL | -

    いかにも家光公が好みそうな御仁ですが、
    遠流から戻ってきた後も行状が変わっていないのは、いいのかな?

  10. 人間七七四年 | URL | -

    某安房守「竹の葉もいいぞ♪ついでに粥もかけてやれ」

  11. 人間七七四年 | URL | -

    流されたのはどこの島でしょうね。
    西瓜ができるくらいだから暑いところだと思いますが

  12. 人間七七四年 | URL | -

    盗人:こ、これは、跳刃地背拳!
    次郎右衛門:いや跳んでねぇし

  13. 人間七七四年 | URL | -

    毎度おなじみ、小野師範のこけて切り返す芸

    同じ逸話がアレンジされまくったのか
    マジでこける技を得意としたのか気になりますね・・・

  14. 人間七七四年 | URL | EybeWf1w

    そういえば、某ゲームに転(まろ)びって奥義があったな

  15. 人間七七四年 | URL | -

    逸話に突っ込むのも野暮だけど、確か秀忠の代でやらかして閉門になった時点で指南役はクビになってたような

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