山田事件

2018年05月22日 21:21

785 名前:1/2[sage] 投稿日:2018/05/22(火) 00:07:01.30 ID:yNjh7yJS
天文23年2月下旬、宗像家の家臣の中に、陶全羨(晴賢)き媚びへつらうものあり、
周防国に使いを立て讒言を行った
宗像氏男の後室は山田の邑に有り、旧好の臣達に密かに命じて、息女を豊後大友の方へ
遣わし、宗麟の子息のうち何れなりとも婿として宗像の家督を譲り、全羨様より遣わされた
氏貞様を攻め殺そうと議されております。ご油断なきように。』

これに全羨は大いに怒り、
「後室息女は先だって、男子を殺した時藍島に流すべしと申し渡したはずなのに、山田の邑に
召し置いているとは心得がたい!そういう事なら、宗像家の男子を殺したというのも偽りであろう。
この男子成人の上は彼に家を継がせるつもりなのだ。今は天下争乱の時であるから、この入道の
威を借りて暫くは当家に従う色を見せ、氏貞は私が宗像に遣わしたから、已むを得ず仮の主君として
頂いているのだろう。

急ぎ氏男の後室および二人の子供を殺し、その首を持ってくること無ければ、大軍で押し渡り
白山城を攻め破り、一人残らず妻子共に串刺しにすべし!」

そう、江良源左衛門賢盛を使いとして宗像家中に命じた。
これを受けて宗像の群臣は、石松和泉守の宿所に集まり詮議を行った。意見はまちまちであったが、
許斐氏鏡、占部貞安進み出て
「これはおそらく、家中に讒者があり全羨に悪しく申したものと考えます。あのように申せば
全羨が立腹するのも当然でしょう。ですが、後室息女共に何も知らず、明け暮れ山田の草庵にて
氏男様の菩提を弔い、また殺害された男児国丸様が、今も吉田飛騨守の元で養育されていると信じ、
毎日法華経を読誦し、その無事を祈られています。そのような方々を無下に殺すなど出来るでしょうか!?
遠賀の高倉に移し隠し置いて、全羨には事の仔細をありのままに申しましょう。
男子は先だって殺したことは事実です。また後室の陰謀ばるものは跡形もない虚言ですと申せば、
女子の事ですから、何事が有るでしょうか。ただ、後室母娘を高倉に遣わすべきです!」

そう申した所、吉田飛騨守が進み出た
「私は国丸様を預かりますと後室に嘘を言って殺害しました。しかし陶全羨は私が助け置いていると
疑われ、山口に召喚して殺すとの事です。またこの事が後室のお耳び入れば、私が今まで後室を
騙し奉り、3年前に国丸様を殺した罪は逃れがたいものとなります。
あなた方はいか様にも道を立てられよ。この飛騨においては、全羨の命に従い氏貞様を主君と
奉る上は別の主君など持ちません。後室息女を殺し全羨に首を見せ、3年前に国丸様を手に掛けた
ことも正直に申せば、我が身の科を免れ、また宗像社務七十九代の後栄ともなるでしょう。」
そう、言葉荒く申し、辺りを払うがごとく見えた。

占部日向守が進み出て「この上は誰に憚ることもない。氏貞様は年若いが我らの大将である。
明日、この事を申し上げて、氏貞様のお計らい次第に従うとしよう。」と申すと、各々も
最もであると同意し、この日、三月二十三日の評定はこれにて終了し、それぞれ宿所へと
帰った。

しかし吉田飛騨守は妻の弟である峰玄蕃を呼び
「今日の石松和泉守宿所での詮議では、占部、許斐の一族は道理を立てるような者が多く、老臣である
石松和泉守の言葉も出ぬ前から何かと申し立てたこと心得難い。あれでは明日氏貞様へどのように申す
だろうか。そうなれば我らの身の上にも大事となるだろう。
そこで、今夜の内に山田の邑に行き、後室息女を殺すのだ。お前も来い。」

玄蕃は驚き止めた
「これは大事の思い立ちです。しかしやはり、明日の御詮議次第とすべきではないでしょうか。」

786 名前:2/2[sage] 投稿日:2018/05/22(火) 00:07:35.16 ID:yNjh7yJS
ところが彼の姉である飛騨守の妻が説得した
「既に歳五十となる飛騨守の申される事に従わないとは何という若輩者でしょう。私達はあなたの
行く末を思えばこそ、代々の主君の妻子を殺すと申しているのです。飛騨殿のお供をして山田へ行き、
殺してくるよう、偏に頼み申します。」

そして飛騨守は
「ならば、私の存分ばかり聞いた所で納得しないだろう。中山勘解由左衛門は私の知古の友であり、
また石松和泉守は此の家の大老でも有る。この二人に相談いたせ」という。

玄蕃は先ず野中に相談すると、似るを以て友というが、彼もまた大悪人であり飛騨の意見が
尤もであると同意した。その足にて石松和泉守と談じたが、彼は既に七十あまりの年齢で、
老いぼれとなり人の言うことに従うだけで、もはや善悪の判断もできなくなっていたため、
「いかにも飛騨の申されること理り至極」と言うばかりであった。

そうして飛騨守は「今はこれまでぞ、明日まで引き伸ばせば何が起こるか解らない。」と、
玄蕃を同道して山田の邑に参り、後室の侍女に申し上げた

「実は俄に藍島に朝鮮よりの流船が来たため、我らはその見聞に遣わされる事となり、
その御暇乞いのためまかり出ました。」

これに対応した花見の少将と申す女房は
「今夜は二十三夜の御月待のため、今御行水をされております。暫くお待ち下さい。この事を
申し上げてきます。」
と申し、暫く待っていた所、後室は浴室より出て、姫君と共に窓前に座した。
少将が「吉田飛騨守、峰玄蕃が明日藍島への御用にて渡海すると、先刻より御暇乞のためとして
罷り出、お待ちされております。」と報告すると、後室は
「ならば待ちかねているだろう。ここへ」と飛騨を召され、玄蕃もそれに相従った。

飛騨守に向かって後室は言った
「この頃、うち続いて夢見が悪く、気にかかることが多いのです。どうでしょう、国丸殿には
何事も無いでしょうか?久しく見ることもなく、懐かしさだけが募ります。どうか良く良く、
養育をして下さい。」

そう言い終わらぬ内に、飛騨守は後室の御前に駆け寄り懐中より氷の如き短剣を抜き胸のあたりを
刺し貫いた。彼女は「あっ…」との言葉だけを最期に、そのまま空しくなった。
同時に峰玄蕃は姫君を刺殺した。
侍女である小少将、花見の少将、小萩、月白の四人は混乱し、「これはいかなる事か!?」と
両人に取り付いたが、彼らは二刀づつ刺し通し、四人共に斃れた。あはれと言うも愚かである。

(宗像軍記)

宗像家における「山田事件」についての記述である。


宗像氏男跡目の事

山田の怨霊



787 名前:人間七七四年[] 投稿日:2018/05/22(火) 07:48:43.97 ID:m1d/dBwZ
うーむ、えぐい。

788 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/22(火) 14:54:20.06 ID:hFRPbsPL
>>786
>うち続いて夢見が悪く
カーチャン…

789 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/05/22(火) 15:10:48.60 ID:fU0KShZ6
国丸って氏隆のことか?96まで生きてたよな
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