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高遠城の"化物"

2018年07月18日 17:14

87 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/07/18(水) 13:14:41.83 ID:HI2wwpjF
高遠城の"化物"


森武蔵守(長可)殿の家来に大塚主膳という者がいた。
(跡を継いだ)美作守(忠政)殿が川中島を領知していたとき
主膳の親(丹後守)は高遠城を預かり、在城していた。

主膳は近習として小室(小諸)城にいたが、所用で高遠城へ行った。
高遠城は山城なので、植え込みが山へと続いている。
その夜(主膳が)「囲のくさの間に寝る」と言うと、児小姓共が
「その部屋には化物がいて、寝る者を必ずたぶらかすのです」とささやいた。
主膳は若き者なので「どうして戯言を言うのか」と聞かない。
年老いた者も「入らないで下さい」と再三諫言したが(主膳は)
「左様なことがあるだろうか」と言って、(その部屋で)起きていた。

その夜主膳が横になっていると、得体の知れないものが体に上ってきて
一晩中そのままだったので、息も絶えるような心地になった。
東雲のころ(夜明けごろ)になってから探したが、どこに行ったか分からない。
主膳は無念に思ったがやりようがなく、その日には帰る約束だったが
とにかく他の理由にかこつけて城に留まった。

先の夜と同じく抜身の中脇差を小夜着の下に隠し、小夜着の裾を足に纏い
蹴ってはげるようにして、少しも寝ないで待ち構えた。
子の半刻になる頃には、眠くて仕方がない。
主膳は「化物は間違いなく今来るはずだ」と思うようにして
気を静めて少しも眠らず待ち構えていると、村雨が夥しく振り
風が吹き渡って、木々の梢をひどく鳴らした。

そのとき何かが縁側に上る足音がしたかと思うと、腰障子の掛金を
自力で外し(障子を)さらりと開け、主膳の上にぱっと上った。
そのとき主膳は小夜着を蹴ってはぎ、すぐ(化物を)切った。

(主膳は)化物が飛び退るより早く飛び起きて、障子を閉め掛金を掛け
次の間にいる小姓を起こし「蝋燭を持って来い」と言ったところ
(主膳の)親がその声を聞いて、十文字槍の鞘を抜き手燭を持って来た。
「何物かは分かりませんが、傷を負わせました。先に手燭を入れて下さい」
と主膳が言ったので(親は)障子を細めに開け、手燭を入れてから入った。

脇差に血は付いていたものの、(部屋には)付いていなかったので
この部屋より外には出ていないだろうと探したが、一向に見つからない。
思いがけずあちこち見ていると、見回す者の後ろに猿のような影が
壁に写っていたので、気づかなかった体で取って返し押さえた。

見れば狸であった。
切られた前足を口にくわえ血を吸い、血を下に落とさないようにして
人の陰に付いて回ったのは、畜生と言えども賢き物である。
(この狸が)来るときに村雨が夥しく降ったが、どこにもその様子はなく
飛び石も濡れてはいなかったので、不審千万であったらしい。
(狸は)台所に繋ぎ、四、五日人に見せた後に殺したという。

誠に勢い強く心が強ければ功は成るが、勢いが弱ければ功を遂げにくい。
だからこそ武士は、勇猛の心を日夜朝暮にひたすら願い求めるべきなのだ。


――『功名咄』



88 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/07/18(水) 14:57:40.88 ID:P7fNmpSG
>>87
>切られた前足を口にくわえ血を吸い、血を下に落とさないようにして
>人の陰に付いて回ったのは、畜生と言えども賢き物である。
怪談なのに妙にリアルだなw

89 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/07/18(水) 18:07:39.33 ID:mmGCON2A
そんなのを台所に繋いだのか....
もしかして、後で美味しく頂きました?

90 名前:人間七七四年[] 投稿日:2018/07/18(水) 21:54:33.59 ID:/NO3z8Xw
>>89
そらもう餌断ちして臭みが少し減ったら〆て狸汁よ

91 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/07/18(水) 23:15:17.74 ID:F+2jpvv+
     )、._人_人__,.イ.、._人_人_人
   <´ 狸じゃ、狸の仕業じゃ! >
    ⌒ v'⌒ヽr -、_  ,r v'⌒ヽr ' ⌒
// // ///:: <   _,ノ`' 、ヽ、_ ノ  ;;;ヽ  //
///// /::::   (y○')`ヽ) ( ´(y○')    ;;|  /
// //,|:::     ( ( /    ヽ) )+     ;| /
/ // |:::     +  ) )|~ ̄ ̄~.|( (       ;;;|// ////
/// :|::       ( (||||! i: |||! !| |) )      ;;;|// ///
////|::::    +   U | |||| !! !!||| :U   ;;; ;;;| ///
////|:::::       | |!!||l ll|| !! !!| |    ;;;;;;| ////
// / ヽ:::::       | ! || | ||!!|    ;;;;;;/// //
// // ゝ:::::::: :   | `ー-----' |__////

92 名前:人間七七四年[] 投稿日:2018/07/19(木) 07:31:41.10 ID:d/QlK5mL
     ,へ、        /^i
     | 〉`ヽ-―ー--< 〈 |
     7   , -- 、, --- 、  ヽ
    /  /  \、i, ,ノ    ヽ  ヽ
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   /  <  / ▼ ヽ    >   、 はいはいワシのせいワシのせい
  く彡彡   _/\_    ミミミ ヽ
   `<             ミミ彳ヘ
      >       ___/   \
     /         7      \
     |        /

93 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2018/07/19(木) 16:43:01.09 ID:MMKjxULT
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コメント

  1. 長宗我部元親 | URL | SFo5/nok

     猫かと思った。
    最初にそのたぬきにエサあげて布団で寝かせた武士が居そう。

  2. 人間七七四年 | URL | -

    小姓「化け物が『ヒャッハー』と鳴くや、隣におった者の首を刎ねられておるではありませんか。恐ろしゅうて恐ろしゅうて…」
    主膳「ふうむ、それはまこと奇怪じゃのう」

  3. 人間七七四年 | URL | -

    >>畜生と言えども賢き物である。
    と褒めておきながら
    >>(狸は)台所に繋ぎ、四、五日人に見せた後に殺したという。
    と、むごい仕打ち。別段誰かを傷つけたわけでもないのに。

  4. 人間七七四年 | URL | -

    ※3
    むごい仕打ちとかではなくて広まった噂の沈静化のためではないでしょうか。実物を見て納得する人もいるでしょうから。個人的な感想としてこの狸は賢きものであると褒めてはいますが

  5. 人間七七四年 | URL | -

    たぬきなのん

  6. 人間七七四年 | URL | -

    タヌキ「お婆様…もう悪さはしませぬ、反省しました。家事を手伝いますので縄を解いて下さい」

    タヌキ「…騙されやがって!ババアw」

  7. 人間七七四年 | URL | -

    1600~1603年の間の出来事なら、実は狸とされているのは徳川、豊臣(石田方)、真田いずれかの忍だったのではなかろうか?
    公にするとマズイ相手だったから狸という事にして…

  8. 人間七七四年 | URL | -

    ※7
    時系列を考えろ
    狸呼ばわりは明治の話だぞ

  9. 人間七七四年 | URL | -

    ※8は「狸とされているのは徳川」までしか読まなかったんやろなあ

  10. 人間七七四年 | URL | -

    まあ夜毎忍が特定の部屋で寝てる人の上に乗っかってくるていうのは流石に訳が分からな過ぎ

  11. 人間七七四年 | URL | -

    だから、もっともらしくそういう風に話を差し替えたとか考えられんかな?

  12. 人間七七四年 | URL | -

    そもそもこの頃高遠城って森家のものだったんですかね?(小声)

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