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天文九年の徳政令

2019年04月04日 17:26

826 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2019/04/04(木) 14:15:33.45 ID:WgAZnRxq
諸国が惣劇の状態になり、諸大名は分国に新関を立てたため、往来の旅人も安定した移動が出来なくなり、
都鄙を巡る商人も途絶した。

このため京都の工商は家業を虚しくし、日を追って糧も尽き、家財を蓄えていた者はそれを質物に入れて
暫く妻子を育んだ。財宝なき者は行く当てもなく逐電した者多かった。人々がこのように窮迫したため、
公方役や地子役を成すことも出来ず、きびしく催促されても、財産は概ね質物として払底していたので、
致し方なく、上下京衆一同は、検断所に訴訟を上げた

「近年、京都の諸商売は全く生活の糧を得ることが出来ず、暮らしに非常に困っています。
そういうことで家財を質物に入れ、又は売り払うことでなんとか年月を過ごしていますが、それでも
ついに糧尽き、既に飢渇に及ぼうとしています。このため御公儀役も勤めること出来ません。
こうした事情でありますから、御慈悲を加えられ、徳政を御赦免くだされば有り難く存じ奉ります。」
こう言上すると、早速老中(重臣)たちが披見し、上聞に達した。公方(足利義晴)はつくづく御覧に
なって、翌日人々を召してこう仰せになった

「住民たちは近年家業の利を失い、飢渇に及ぶとのこと、非常に不憫である。そもそも士農工商というものは、
昼夜心骨を刻み、上を育み、上はまた下が豊かになるよう常に注意し、安全を守るべきものである。
ではあるが当世は睡世であり、政道もまた無きが如し。

それについて、徳政を望むこと、もとより米銭に富んでいる者は、利益を上げるために質物を取る。
質物を取るほどの輩は、たとえその財産を悉く取られたとしても、飢渇に及ぶほどのことは無いだろう。
有徳(裕福)の者は百人に一人二人である。しかれば、小を殺して大を救う事こそ法である。
その上に先例も無きにしもあらず。常徳院(足利義尚)、法住院(足利義澄)の例に従い、
急ぎ徳政を行い、貧窮を暖和するように」

そう仰せ付けに成ったため、人々承り、すなわち評定所にて案分を作成した。新規ではなく、ほぼ先例を踏襲した。


      徳政      城州(山城国)
一、借銭、借米の事。
一、武器の類に於いては   廿四ヶ月
一、絹布の類は   一二ヶ月
一、仏具、絵賛の物、家具の類は   一二ヶ月
一、家屋を抵当にしたとき、貸主から徳政のがれのため沽券(家を売ったという証明書)を書き、
  その形式も正しいとしても、利子を取っている場合は借銭同然とみなす。

  右の五ヶ条、元金の十分の一を以て白昼取り戻すことが出来る。もしこれに違反する輩が
  有る場合は、処罰の対象であり、申し出るように。仍って下知件の如し

   天文九年三月
                   (中沢)光俊
                   (不明)貞長
                   (楢林)長高 (判)

こうして質物を入れた者たちは、九月の干魃の時に大雨を得るような思いをして、喜ぶこと大方ならず、
質屋の内外に人の出入りは限りなかった。ところがこのような時に、洛外に隠れ住む浮浪人たちは、
良い幸いと悦び、五人十人づつ押し入り、質物に事寄せて財宝を奪い取った。これに異議を述べようとすれば
狼藉に至ったため、質屋は大いに迷惑し、この事を訴訟した。諸奉行はこれを聞いて、重ねて高札を立てた。

      掟
一、今度徳政を免除された所、在々所々に隠れ住む不浪人たちが質屋方へ押し込みをし、資財を奪い取る
  との事聞き及んだ。今後この浮浪人たちの近辺に在る者たちは、事前に申し合わせをし、不浪人たちが
  出てくれば即座に出合い、できるだけ打ち留めるように。生け捕りした場合は大功であり、
  それが侍であれば何であっても望みを叶え、平人であれば当座の褒美として銭二百文を与える、
  仍って下知、件の如し

この高札が洛中を初め、在々所々に残らず立てられた。
(室町殿物語)

天文九年にあったとされる(史実的には怪しい)徳政令についての記事


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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    忠実的には怪しいんですねw
    足利義晴さんの代から士農工商ってハッキリ別れてたんでしょうか?
    商人は分かるんですけど稼ぎの少ない士は農も工もやるでしょうし、その逆もまた然りのような…

  2. 人間七七四年 | URL | -

    鎌倉時代の御家人みたいに徳政令が出た時はいいけど
    その後の貸し渋りで更に悲惨な状況にならなかったんだろうか?

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