155 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2019/08/24(土) 02:46:52.12 ID:vjfU7B8l
同青木民部(一重)が真柄を討ち取り申されたこと以上に存じられるのは、牢人して今川家に武者修
行の士は多く、甲州勢が出ると聞き民部は一同に30人ばかりで掛け出て、新坂の道辺にある銀杏の
木の見えるところまで行った。その時、山上へ大物見の如く3百人ばかりが出た。
「何とぞ引き取るべき!」といずれも申したが、民部は曰く「引き色を見せれば、猶更敵は募ること
だろう」と。十死一生の戦を持ち戦う内に、民部は大きな男と組んで山の下へこけ落ちた。銀杏の木
の際へ落ち付いた時、民部は上になって首を取った。また、他の者も2人で敵1人を一緒に討った。
その内に味方の加勢が来て、敵は引き取ったのである。もっとも、初め同時に来た味方の内にも討死
は多かったのだという。
今川家よりその褒美として民部に金子1枚を賜り、一緒に敵を討った士には金の龍の口蓋を2人に1
本ずつ賜ったのだという。
民部はいつも武辺の話を致さぬ人であったという。また小兵で痩せた人だという。この人は青木先甲
斐守入道丹山(重兼)の父であるが、実はその伯父である。実父(青木可直)は輝政公(池田輝政)
の御家中におられたという。
前述の時に諸人は「引き取るべき!」と言ったが、青木1人は申され「引き取れば追い付かれて1人
も残らず討たれることだろう。堪えて戦おう!」と申した。その一言は大きな誉れである。その上で
功名があった故、ますます手柄となったのである。
――『烈公間話』
同青木民部(一重)が真柄を討ち取り申されたこと以上に存じられるのは、牢人して今川家に武者修
行の士は多く、甲州勢が出ると聞き民部は一同に30人ばかりで掛け出て、新坂の道辺にある銀杏の
木の見えるところまで行った。その時、山上へ大物見の如く3百人ばかりが出た。
「何とぞ引き取るべき!」といずれも申したが、民部は曰く「引き色を見せれば、猶更敵は募ること
だろう」と。十死一生の戦を持ち戦う内に、民部は大きな男と組んで山の下へこけ落ちた。銀杏の木
の際へ落ち付いた時、民部は上になって首を取った。また、他の者も2人で敵1人を一緒に討った。
その内に味方の加勢が来て、敵は引き取ったのである。もっとも、初め同時に来た味方の内にも討死
は多かったのだという。
今川家よりその褒美として民部に金子1枚を賜り、一緒に敵を討った士には金の龍の口蓋を2人に1
本ずつ賜ったのだという。
民部はいつも武辺の話を致さぬ人であったという。また小兵で痩せた人だという。この人は青木先甲
斐守入道丹山(重兼)の父であるが、実はその伯父である。実父(青木可直)は輝政公(池田輝政)
の御家中におられたという。
前述の時に諸人は「引き取るべき!」と言ったが、青木1人は申され「引き取れば追い付かれて1人
も残らず討たれることだろう。堪えて戦おう!」と申した。その一言は大きな誉れである。その上で
功名があった故、ますます手柄となったのである。
――『烈公間話』
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿