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かるかやに 見にしむ色は なけれとも

2021年01月05日 17:37

825 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/01/05(火) 15:34:53.17 ID:hOMWL+6l
今川義元が戦場において、何某とやらを召し「先手の様子を見て急ぎ罷り帰るように。」と命じたが、
先手では早くも戦の半ばであるのに行き合い、逃れがたい状況であったので、鑓を入れて首一つを
取って帰り、義元の見参に入れてその成り行きを語った所、義元は大いに怒り

「様体を見計らって急ぎ帰れとこそ言ったのに、その身の働き、私に対して忠の所は少しも無い!
軍法に任せて、きっと計らうべし!」

そのように仰せに成られた。かの使いの者はしおれたような顔で、謹んで義元の前に侍ふ人に向かい、
小声で藤原家隆の歌をつぶやいた

「かるかやに 見にしむ色は なけれとも 見てすてかたき 露の下をれ」
(秋の苅萱は、心惹かれるような色ではありませんが、露の光るしなだれた様子を見れば、捨て難いものなのです)

この様子に義元はさらに怒り、「何を言っているのか!?」と怒鳴ると、近習の者がそれを申し上げた。
これを聞いて義元は暫く考え、気色和らぎ、

「とどかざる仕形であるが、急なるに臨み、奇特に家隆の歌を思い出した事は名誉である。」

として赦したという。
昔の人はこのようにやさしき事があった。ただし、「時によるべき事である。一様には定めがたい。」
という人も有る。

備前老人物語



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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    まとめがそりゃそうだ、な相対論でいっそ笑える

  2. 人間七七四年 | URL | -

    まあ、昔はよかったで済ませないで一応両論併記してるだけ誠実なのではなかろうか

  3. 人間七七四年 | URL | -

    要はやむを得ない理由で命令違反しちゃって滅茶苦茶怒られたけど、「反省してるから許してちょ」って古歌を引用して優雅に言ったから許されたってことか?
    まあ、全面的にいい話とは言い難いよな

  4. 人間七七四年 | URL | -

    散歩から帰ってきた愛猫が戦利品のネズミか何かをくれたようなもの…と思えば、ね。

    そりゃまぁ一旦はびっくりして怒るだろうけど、何も本気でおしおきしようとは思わないし、出先で余儀なき仕儀に見舞われただろう事も想像できるし…

  5. 人間七七四年 | URL | -

    桶狭間の敗因も家臣が軍法守らず状況確認が遅れて命取りになったとかだったりして

  6. 人間七七四年 | URL | -

    つぶやきが聞き取れずキレるくだり必要?面白いけど

  7. 人間七七四年 | URL | -

    これ、近習に「先鋒の戦闘状況を『視察』して報告せよ」って命令したのに、
    自分が戦闘に加わって首持って来たから義元が怒っている訳で、
    ただ、義元も怒りはしたものの或る可能性に気付いたから、仮に「つぶやき」の
    内容が自分への不平だったならその場で切腹モノだった話なんだろう。

    恐らくは義元の判断ミスか先鋒衆の索敵不徹底で混戦になっていて、
    近習も戦闘加入しないと後退も覚束ないくらいに拙い状況だったのだろう。

    だから〆の言葉が「時と!状況に!よるだろ!」的〆なんだろう。

  8. 人間七七四年 | URL | -

    もしも○○だったらシリーズ
    信長→激怒して追放
    氏郷→すでに先手で戦っていた
    官兵衛→事前に予想して使番を複数送ってある
    宗綱→先手のはるか前方で死んでいた

  9. 人間七七四年 | URL | -

    無右衛門→「心配御無用!」と言っておいていざ失態をすると誰それも悪いから一緒に叱るべしと主君に言い放つ

  10. 人間七七四年 | URL | -

    教養を披露することで許される名家の家風説

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