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松永久秀滅亡の時

2021年10月02日 16:00

81 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/10/02(土) 11:49:32.35 ID:0dQIK6u5
松永久秀滅亡の時)

松永は偽兵を知らずに門を開きこれを城に入れ、後より信忠大いに進みこれを攻める。
偽兵は内より応じて鬨をあげこれに応じ、城中の兵は大いに騒動して死亡する者多し。

松永も殿守に入って相待つ。信忠より人遣わし曰く「松永降参すべし。罪を許さん」。
松永曰く、「骨になっても信長には従わぬ」として降らず。ここに平蜘蛛という釜は
天下の名物である。ことごとく打ち砕いて箱に入れ、糠詰めにして封をなし、信忠の
陣に送った。

松永曰く「これは我の所持する平蜘蛛という釜だ。日頃信長の望みあるままに送ろう
と思っていたが、先延ばししていた。これは天下の名物である。今ここで失われるの
は惜しい。よってこれを贈る」と言った。

その箱の封を切る時にあたって城中より声をそろえて一斉に鬨をあげ、城外より鉄砲
を撃って攻め寄せた。

松永久秀の女子はその年20歳。打掛して久秀の前に来て曰く「事の急ならざる内に
我が身の暇を賜りください。先立って父を待ちます」と言った。久秀の曰く「まこと
に事の忙しさに汝のことを忘れていた。20歳も70歳も同じことだ。人は必ず一度
は死ぬ。汝は先立つべし。跡の仕舞いをして今我も行くなり」と言って、それそれ某
太刀取りせよと居所に入らせた。

この女子は太刀取りに言って曰く「女の死骸は醜くからんと思い、その支度をした」
と紅の下袴を着て上に打掛をし「首はこの内に落とすべし」と言って打掛を前に敷き
太刀を受けた。

その打ち落とした後に自ら打掛の端を被ったという。(其打落シタル跡ニ自ラ打チカ
ケノ端ヲ被リヌト云リ)哀れなる世の中なり。

久秀はこれより事終わって猿楽の囃子を始めた。諷は野宮である。「きりに成り火宅
の門をや出ぬらん。火宅の門」と言い終わると等しく、天守に火を放って屍も見えず
焼失した。

まことに討つ者も討たれる者も一時である。天正5年には松永滅亡す。天正10年に
は信長害に遇い給う。ただ5年の先後なり。

――『南海通記



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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    人の為と書いて偽り

    …何か物悲しいわね…

  2. 人間七七四年 | URL | -

    ※1
    FFTのアグリアスが言っていないセリフじゃねーか!

  3. 人間七七四年 | URL | -

    20歳で嫁いでないとか不良在庫だったんだろうか

  4. 人間七七四年 | URL | -

    嫁がすのすら忘れられてたのかな…

  5. 人間七七四年 | URL | -

    ・出戻り
    ・父親が警戒されてご遠慮されてた
    ・そもそもそんな娘は(本当は)居なかった

    取り急ぎwikipediaだけ見たら娘3人居て全員嫁いでるけど、系図に載らなかった娘が居たのかな?

  6. 人間七七四年 | URL | -

    >父親が警戒されてご遠慮されてた

    直家「ウチの娘はそんなことなかったんだけどなぁ」

  7. 人間七七四年 | URL | -

    ※6
    その頃まだアンタ若いし悪名まだまだそんなでもないけど、この時の松永久秀は晩年で悪名も鳴り響きまくりだしなぁ

  8. 人間七七四年 | URL | -

    ※7
    まぁ悪名も名のうちというもので、勢いがあれば縁談の話は引きも切らなかっただろう(ソースは真田安房守)。
    良縁がなかったとしたらそれは松永家の斜陽化を見透かされていたということじゃないかな。

  9. 人間七七四年 | URL | -

    >久秀はこれより事終わって猿楽の囃子を始めた。諷は野宮である。「きりに成り火宅
    >の門をや出ぬらん。火宅の門」と言い終わると等しく、天守に火を放って屍も見えず焼失した。
    燃え盛る本能寺で敦盛を舞う信長みたい
    でもそっちは現代の創作なんだってね

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