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家に帰り、妻と相談します

2021年11月13日 16:37

782 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 15:04:15.20 ID:dtC1eCiP
天正十六年(1588)、徳川家康公は駿河の国府に移住されるに際して、多くの御家人の中から
板倉勝重を、ここの町奉行にしようと仰せ下された。しかし勝重はその任に堪えられないとの理由を言い、
固くこれを辞した。しかし家康公はそれを許さず、そこで勝重は

「ならば宿所に帰り、妻と相談してご返事をしたいと思います。」

と申し上げた。家康公は笑われ、「さもありなん、罷り帰って相談せよ。」と仰せ下された。

妻は勝重か帰ったのを迎えて言った「悦ぶべき事が有る、と告げてきた人が居られました。
いかなる幸いでしょうか?」これを聞いた勝重は微笑んで、物も言わず衣装を脱ぎ捨て座に直り、
妻に向かって

「されば今日召されたのは余の儀ではなく、今度御座所を移されるに依って、かの町の奉行になるようにと
仰せ下された。私はこれを辞したのだが御免無く、『であれば私は家に帰り、妻と相談します。』と
申し上げて罷り立った。
さて、御事はそのことを如何思うか?」

妻は大いに驚き、「あな浅ましや、私事であれば夫婦で相談するという事もあるでしょうが、公の事に
このようにすべきでしょうか?ましてや上より押して下される所であり、殊に職に堪えないか堪えるかは、
あなたの心にこそ有るものですから。私がどうして知れるでしょうか。」
このように答えると、勝重は

「いやいや、この職に堪えぬ堪えるは、我が心一つの事ではない。御身の心によることである。
先ず、心を静めて聞いてほしい。古より今に居たり、異国にも本朝にも奉行などと言われる者で、
その身を失い家を滅ぼさないという者は稀である。或いは内縁に付いて、訴訟を断る事は公ではない。
或いは賄賂によって理を分かつという事には私が多い。これらの禍、多くは婦人より起こる所である。
私がもしこの職に預かった後は、親しき人が言い寄ってくることがあっても、また訴訟を執るからと
僅かの贈物が来たとしても、それらを受けることはない。

これらを始めとして、この勝重の身の上にいかなる不思議があったとしても、御身は差出て者を言わないと、
固く誓ってほしい。それを請けなければ私がこの職を預かること、どうしても叶わない。
さればこそ、御身と相談しているのだ。」

妻はつくづくと聞いて「誠に宣う所、理屈が通っています。私はいかなる誓いをも立てましょう。」と言うと、
勝重は大いに悦び、神にかけ仏にかけて堅き誓いを立てさせ
「この上は思い置くことは無い、さらば参らん」と、衣装を引き繕って出ようとし、袴の後ろ腰を押し戻して着た。
妻はその後ろ姿を見て「袴の後ろが悪くなっています。」と言い、立ち寄って直そうとした。
勝重はこれを聞くやいなや

「さらばこそ、私が妻に相談したいと申したのは過ぎたことではなかった。
勝重の身の上にいかなる不思議が有ったとしても差出た事を言わないと誓ったばかりなのに、早くも
忘れている。今御身から承った事は間違いだった」と、また衣装を脱ぎ捨てようとした。
妻は大いに驚き悔やみ、様々な証文を勝重に参らせた。
「ならばこの事を、いつまでも忘れないように。」
そう言って、勝重は御前へと参った。

家康公は「如何に、汝が妻は何と言ったか」と仰せになった。
「妻は、承るようにと申しました。」

「さこそはあらめ」
家康公はそう言って、大いに笑われたという。

新東鑑

板倉勝重が駿府町奉行の職を受ける時のお話



784 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 16:45:03.72 ID:YGR930dS
>>782
夫の奉行としての公の判断に差し出口を叩くなというのと、夫の身だしなみを気遣うことは
別だと思うが… 板倉勝重はだらしない格好して妻が陰口叩かれてもいいのか
それとも、武家の身だしなみなどは侍女の仕事で妻がいちいち口出しすることではないというのが
当時の常識なのか?

あと戦国期徳川家の奉行職はそんなに乱れてたのか

785 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 17:05:42.55 ID:Q5i73spP
板倉勝重は江戸初期の大岡越前、遠山の金さんだから。大岡裁きのエピソードも板倉勝重のエピソードからとったものも多いそうだし。

江戸中期の人からふりかえって「お奉行というのはかくあってほしい」という理想を具現化したアイドルなんだし、実際に乱れていたのも江戸中期の奉行なんではなかろうか。

786 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 17:29:40.95 ID:YGR930dS
>>785
なるほど
新東鑑からして江戸中期の本か
確かにその解釈は当たってそうだ

787 名前:人間七七四年[] 投稿日:2021/11/13(土) 17:36:53.84 ID:R2eUT5+e
奥さん、子連れ再婚だけど愛されてるよね

788 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 18:25:16.92 ID:fmoZ38EX
京都の魑魅魍魎相手にするのはこのぐらいの人物じゃないと無理だったんだな

789 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/13(土) 18:53:15.00 ID:cTjwbe/v
>>782
前にも出てたけど出典書いてないしいいか
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-2031.html
藩翰譜にも載ってる話らしい

791 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/15(月) 19:05:25.09 ID:ambZywFs
勝重の頭固すぎ

792 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2021/11/16(火) 15:47:02.26 ID:1RB3fzAx
三河侍って面倒くさいからな
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    ものすごく良い話だけどドラマ化するならドリフっぽいコントで見てみたい…(笑)

  2. 人間七七四年 | URL | -

    戚継光さんがいいねしました

  3. 人間七七四年 | URL | -

    妻(面倒クセェ…)

  4. 人間七七四年 | URL | -

    家康曰く確か『奉行と代官の首はいつでも切れる』だっけ?
    物理的に切って居るから勝重も色々考えたんだろうな

  5. 人間七七四年 | URL | -

    父と兄が相次いで亡くなって、僧侶だったのに、いきなり結婚&板倉家継ぐ事になった上、いきなり町奉行=現在の県知事+警察署長やれって言われたら、確かに躊躇するだろうなあ。

  6. 人間七七四年 | URL | -

    板倉の倅もかなり躊躇してたよね

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