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秀吉と曾呂利の話

2022年05月11日 17:12

182 名前:人間[sage] 投稿日:2022/05/10(火) 21:03:38.91 ID:XPxiA+Ql
槐記の享保十年九月十六日の記事から 秀吉と曾呂利の話

進藤夕翁(泰通)の話に、太閤秀吉天下一統ののち、西明寺殿(北条時頼)をまねて日本廻国を思い立ち、側近たちにひそかに語った。側近たちが「あきれたことだが、日ごろの御気性では止めたとてお聞き入れあるまい」と陰で噂しているのが四人衆の耳に入った。丹羽五郎左衛門(原文七郎左衛門)などはどうにかして止めようと思ったが手立てがなかった。時に曾呂利という冗談のうまい奇人がいて、太閤の気に入りだった。五郎左衛門はこの男に「太閤殿下が日本廻国を思い立たれたが、お前が見事止めおおせればこの上ない忠勤であるぞ」と頼み込むと、「心得ました。折を見て申し上げましょう」と曽呂利は請け合った。

ある時、曽呂利が御前に出たときに、「何か変わったことはないか」と問われると、答えて、「最近変わったことといえば、この頃以ての外に博奕が流行っております。東国からも西国からも、都下に大勢人が集まって、そこここで賭場を開いては勝負を争っております。近頃、東国と西国との勝負を一気につけようと、清滝のあたりに集まっているところへ、旅人と見える山伏のどこからともなく現れて勝負を見物しておりました。
少しして『私も人数に加え給え。一勝負いたそう』と山伏が言うと、親分衆これを聞いて『まずは元手をお見せなさい』と言う。山伏、『元手には及ぶまい。諸君らの如き下手を相手にすれば、座中の賭金はすべて我が物となろうが、いくらかは元手も懐中している』と金三百両を出してこれを質として勝負しました。言葉に違わず山伏は大いに勝ちまくって座中の金をことごとく巻き上げてしまいました。東西の親分衆、腰を抜かすほど驚いて『あなたはどこの国の方ですか』と問うと、『俺はこの山麓に住まう、天下を思いのままにする博奕の大親分だ。侮るまいぞ』と言えば、座中の者みな再拝稽首します。
さらに山伏語っていわく、『博奕に限らず、俺は天地をひとつかみにし、山川を自在に操り、高からんと欲せばこの愛宕山頂と頭を並べ、長からんと欲せばそこの君の東国よりそちらの君の西国に届くまで長くなる。大ならんと欲せば天地に充満し、小ならんと欲せば煮豆ほどに小さくなる』と語りますと、一人進み出て、『さてさて世にも稀な話です。何としても煎り豆ほどになるのを見たいものでございます』と乞うと、一瞬のうちに煎り豆となったところを取って口に入れ、ポリポリとかみ砕き、『これで一安心だ』と喜んだということでございます」と語った。
秀吉大いに感心して、「さてさて、汝は愛い奴じゃ。余が近頃廻国を思い立ったことを聞いて諫めたのだな。お前の言うこともっともである。余は天下を有しているといえども、天下人の位にあってその職を守ればこそ安んじていられるが、身一つでいては思いもよらぬ目に会わぬとも限らぬ」と思い止まられたということです。
この話の虚実はともかく、甚だ美談であると、水戸黄門の儒官のなにがしの著わした曽呂利の伝記に載せてあります、近いうちにお目にかけましょうと夕翁が申し上げた。



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