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軍配者と神変について

2022年09月14日 19:17

383 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/09/13(火) 20:05:30.38 ID:c5IXSckZ
甲州に小笠原源與斎という軍配者がいた。彼は様々な奇特を表し、風呂に入って戸を押さえさせたのに、
人々に気づかれずに外に出、或いは夜、各々が会合した時、座席の向かいに山が見れれば、
「向かいの山に火をいくつか立てよう。各々見よ」
と言って、人の好むように火を立てるほどの者であった。
おおよそ軍配をよく伝授すれば、その軍配の余精を以て、様々な奇特を致す。

また永禄四年に川中島合戦の時討ち死にした山本勘介は、信玄公旗本において足軽大将の中の
五人に優れた名人と呼ばれ、これも軍配鍛錬の者であった。
この山本勘介入道道鬼の軍配は、宮、商、角、微、羽の五つより分けて見る、雲気、烟気、その他
ゑぎ、さご、すだ、来たり様、行き様、これらの外も口伝が有るが、勘介流は一段短かった。
但し小笠原源與斎のような奇特は無かった。

しかしながら、源與斎も云っていたが、奇特は軍配の神変であるという威光までのもので、
勝負の利には成らぬものである。
その謂れは、人に望まれて山に松明を立てるくらいなら、自分が暗き道で火に事欠いている時、
松明を立てて道を見て行けるのならば然るべきであるが、そのようには中々成らず、
ただ人に望まれてよそに火を立てるばかり。これは術である。
術は座興であり、まことに道に至って弓矢の計略、計策などの用に立たない。
然れば、敵味方対陣の時節は、勘介も源與斎も同前である。

馬場美濃守(信春)は、「神変は尤もなものだが、それは人によっての事。
武士が弓矢のために軍配を習って、神変致した場合、武道のためとはいいながら、
『かの奇特する人よ』とあだ名を呼ばれ、禰宜や山伏のように申されてしまう。
そのうえ正法に奇特無しと聞こえており、であれば神変は更に要らざるものである。」
と申していた。

甲陽軍鑑

軍配者と神変について



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コメント

  1. 774@本舗 | URL | -

    抜け道を用意しておいたり、火付け役を配置して定刻に火を上げさせたりするのは軍配の応用だけど、
    それだけで戦に勝てるわけでもないというお話かと

  2. 人間七七四年 | URL | -

    信長「俺の子孫が並外れた運動神経に恵まれながらも『かの大泣きする人』とあだ名を呼ばれてる気がする…!」

  3. 人間七七四年 | URL | -

    軍配者は軍事専門家じゃなくて吉凶占いや戦作法の専門家だからしゃーない

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