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目出度く来年の御祝言、相調いました

2022年12月26日 19:29

516 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2022/12/26(月) 17:37:30.57 ID:hS9JgHQL
>>665の続き

浅井家の重臣である磯伯耆守(磯野員昌)は内々の分別に、
「天下を、この織田三郎信長が一度は取るという異見がある。また彼には妹が有るという。
備前守(浅井長政)には内儀が無く、方々より縁組について申して来ているが、どうにか分別して頂き、
信長殿の御兄弟に致したいと思っているのだが、信長への通路が敵に塞がれており、分別が成り立たない。
ところで私の煩いが東国へも聞こえたのは確かである。そこで国々へ使者を立て、手引してみよう。」

そう考え、道々の城々へ道を乞うてこのように申した
「私は当春、不慮に煩い存命も定かではない状況でしたが、両親がこれを悲しみ、神々へ命乞いをしてくれた為か、
不慮に助かることが出来ました。この時親は、東は伊豆箱根三島の明神、富士の御山へ立願をかけました。
そして神慮がこのように成ったため、そこまでの道の口を通行することを御赦免して頂きたいのです。
私は今年の六月を心懸、これらへの社参を遂げたいのです。」

そのように使者を立てて申し出た所、小田原までの間の城主は尽くこれに同意し
「御煩いの様子は承っております。さては神々への命乞いでしょうか。神慮に対し仕り通過を許可しましょう。」と、
小田原から江州までの道の口を請う事ができた。
さればとて、その夏に伯耆守は美々しい様子にて社参と称して東国へと下った。道々の城からは残る所無く馳走された。

清須まで到着した時、そこにおいて「霍乱(日射病、熱病)になってしまいました。信長公に御医者を頼みたく
存じます」と申し上げた。すると「御道中であり、安き事である。ここに暫く逗留して養生されるように。」と
御馳走を残る所無く仰せ付けられ。五、三日の間、養生として逗留した。

その夜、伯耆守は佐久間右衛門(信盛)殿をにわかに呼び寄せた。
「談合したい仔細があります。承った所に寄ると、信長公には御妹が居られるそうです。
我が浅井備前も未だ内儀がありません。そこで、御妹を申し請けたいのです。」

このように右衛門殿へ申し渡し、これは信長公の御耳に入ったが、信長公からは
「浅井との間には敵が多い。妹を送る道をどのように仕るべきか。その分別さえ確かに有るのなら
妹を遣わそう。そういう事なので直談したい。」との御返事であった。

ならばとて、伯耆守はすぐに御対面し申し上げた
「この事についての仔細ですが、今回、私はこのあと、東へと通過します。北条殿、義元、その他へこのように申します。

『道の口を通過する御赦免を頂いたおかげで、遂に社参が出来ました。この上、また御詫び言を申し上げたいの
ですが、今度は女たちを召し連れ、夫婦共に社参仕るべしとの立願を成したく、来年は夫婦ともにこちらへ
下りたいのです。』

そのように東の大名衆に御詫び言を申し上げます。夫婦連ねてという事であれば、なお以て別状は無いと、
道の口通過を免除していただけるでしょう。その同意をとりつけた上での帰りに、また御談合いたしましょう。」

翌日、伯耆守は東へと向かい、四ヶ所の宮々への社参を遂げ、北条殿、義元などへ先の御礼を申し上げ、
「来年は夫婦連ねて通行することをお許しください。」と断り申した所、案の定「安き事である。
神慮に対し仕る上は、御心安く来年、夫婦揃って御社参されるように。」との約束を堅く仕った。


そして清須に戻ると、再び霍乱気となったと申し出た。その上で
「東国ではこのように、来年妻たちを召し連れ下ることについてしっかりと申し極めました。
しかし私の妻を召し連れはしません。乗り物七丁、下女はした者に至るまで、三十四、五騎を召し連れ、
これを夫婦揃ってと称して下ります。そしてこの女共を入れ替えて、御妹を申し請けに罷り上がります。
これであれば、少しも問題はありません。」

信長はこれを聞き届け、「ならば妹を御目にかけよう。」と、伯耆守一人を召し連れて奥へ入り、伯耆守は御妹の姿を見奉った。

「目出度く来年の御祝言、相調いました」
そう直談仕り、帰国したという。

川角太閤記

続き
その日に目出度く御祝言を上げた


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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    そう上手く行くものかなぁ?
    輿入れ行列が襲われた逸話って聞かないけど

  2. 人間七七四年 | URL | -

    某独眼竜のおじいちゃんは輿入れ行列を襲って強奪した上に子供をたくさん拵えたそうな
    普通は家同士の問題に発展するからそんなリスクは負わないし、平時以外に敵領地を越して婚姻するってケースも危ないからやらないんじゃないの

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